人手不足は退職できない理由にはならない根拠、及び人手不足を理由に仕事を辞めさせてくれない職場から確実に辞める方法と辞める際の注意点について解説します。
仕事を辞めさせてくれない理由が「人手不足」なら強制力はない
仕事を辞めさせてくれない理由が人手不足であれば法的な強制力は生まれないので従う必要はなく退職しても問題ありません。
「在職強要への解決策は3つ、引き止めがあっても確実に辞める方法」の記事でも書きましたが、仕事を辞めさせてくれないことは在職強要によるパワハラに該当します。
(強制労働の禁止)
労働基準法 第5条
第五条 使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によつて、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。
また、日本国憲法第22条第1項における「職業選択の自由」にも反した行為にも該当します。
日本国憲法(昭和21年憲法)第22条第1項においては、「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択 の自由を有する。」 と規定されており、これは、職業選択の自由を保障しているものである。
憲法22条に規定する職業選択の自由について|厚生労働省
以上のことからどうしてもの場合は我慢する必要も泣き寝入りする必要もありません。
違法行為に従う必要はありませんので退職しましょう。
辞めさせてくれない問題については以下の記事もご参考になさってください。
人手不足は会社の責任、辞められない理由にはならない
人手不足は人手が足りないことを見越した採用活動を怠った会社の責任となります。労働者側には一切責任はありません。
「辞めたら周りのみんなに迷惑がかかるから」などと考える人もいます。人情的にはわからくもないですが、責任のあり方としては間違っています。
繰り返しますが人手不足の責任を労働者側が被る必要は一切ありません。
詳しくは以下の記事も併せてご参考になさってください。
退職は労働者の権利、人手不足で辞められないことは無い
第六百二十七条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
民法第627条
民法第627条により労働者には退職の権利が定められており、会社には労働者の退職を拒否する強制力はありません。
そのため、「理由の如何を問わず」「社内規定がどうであろうとも」退職の意思を伝えてから2週間以上経過すれば労働者は退職ができるので『辞められないのでは?』などと誤解しないでください。
【補足】引き継ぎしないことで訴えられることは無い
法的な観点で言えば引き継ぎは必須義務がありません。そのため、引継ぎが無いからと言って訴えられることもありません。
引き継ぎは「これまで会社に勤務させてもらったことへの恩義」の一環です。恩を感じる職場環境ならまだしも、自分が追い詰められるほどの職場に対してはその限りではありません。
引き継ぎに関して詳しくは以下の記事もご参考になさってください。
人手不足だからと仕事を辞められないことで起こるリスク
転職時の年齢制限に引っかかる可能性
辞められない時期が長引く続くほどご自身も年齢を重ねることになります。
転職を希望している場合、少しでも若い年齢の人を採用したいと考える企業の選考基準(年齢制限)の対象から外れてしまうため、辞められない時間が長引くほどご自身の次の転職が難しくなります。
ご自身の人生設計のためにも、辞めたいと思ったら割り切ってすぐに辞めるべきです。
人手不足で仕事がキャパオーバーになるとうつに繋がる
人手不足の職場は残った人にしわ寄せがいくのでキャパオーバーになりご自身が疲弊します。また、疲弊の影響でさらに仕事を辞めたい人が増えるのでさらにご自身への負担が増します。
真面目な人ほど辞めたいとは言えない
特に真面目な人ほど「辞めたい」と言い出しにくく、無理が続くと「うつ病」や「適応障害」などになることもあります。
ご自身の為にも、消耗し過ぎて体を壊してしまう前に今の職場を離れた方が良いです。
気持ちが追い込まれてしまったときは解決策として以下の記事もご参考になさってください。
人手不足で退職できないのでは?と追い詰められた時の注意点
1.バックレだけは止めた方が良い
辞めさせてくれないからと言って強引に突然バックレるのだけは止めましょう。
法的による退職の定めが最短で2週間と定められている以上、突然のバックレによる退職は法的に認められていない行為になります。
バックレると万が一にも
- 損害賠償請求
- 戻ってくるように命じられる
など会社側から求められるリスクが残ります。
ご自身の身の安全のためにもバックレだけは控えてください。
2.労働基準監督署に依存し過ぎない
労働基準監督署に退職トラブルを相談することが出来ます。
ただし、労働基準監督署は管轄する区域内の企業が労働基準法を守って適切に影響しているか?を監督する機関になるだけであり強制力があるわけでは無いため相談したからと言って必ずしも退職問題が解決できるわけではありません。
また、労働基準監督署は明確な証拠が無ければ動き出すことが出来ません。
そのため、辞めさせてくれない証拠(メールのやり取りやボイスレコーダーでの録音など)を用意出来なければ対応しようがないのです。
あくまで明確な物的証拠があり、明確な労働基準違反が起っていたときに“頼りになる存在”と理解しておきましょう。
労働基準監督署に相談する際の注意点について詳しくは以下の記事もご参考になさってください。
3.損害賠償請求による脅しには屈しない
「会社を辞めるなら損害賠償だ」などと脅しを掛けられることがありますが、ほぼ事実無根の脅しに過ぎず実際の効力はありません。
損害賠償は労働者が会社を退職したことで数字として明確に損害を証明できる、もしくは損害賠償を被ったことを客観的に証明できる場合に限ります。
- 退職時に多くの部下を引き抜いて辞めた
- 長期にわたる無断欠勤を続けてからのバックレ
などであれば損害賠償として成立する可能性がでてきますが、そうでなければ損害賠償の証明としては弱いため損害賠償を訴えるのが難しいです。
少額にはなりますが脅しした会社に対して逆に労働者側から訴えることもできる程です。
明らかな会社への損害やバックレ・無断欠勤などなく、通常業務を行っている範疇であれば退職することによって損害賠償になることはありませんので脅しに屈しないでください。「相手にしないこと」が一番効果的な対応になります。
退職と損害賠償請求について詳しくは以下の記事もご参考になさってください。
人手不足で仕事を辞めたいと言えない時でも退職が成立する方法
1.法に則って辞める
「退職は労働者の権利、人手不足で辞められないことは無い」でも触れたように、退職は法で定められた労働者の権利であり最短で退職の2週間前から辞める旨を申告しておけば退職が成立します。また、会社側には労働者の退職を拒否する権限はありません。
雇用先によっては特殊な雇用契約書を結んでいる・特殊な就業規則になっている、などの可能性もありますが就業規則よりも法律が優先されますので退職の意思を伝えれば必ず退職が成立します。
- どうしても今の職場を辞めさせてもらえない
- でも、どうしても辞めたい
というご状況であれば法に則って「退職届を提出する」という具体的な退職の意思を示して辞めてしまいましょう。
退職届を直接渡す以外の形で辞める意思表示をする場合
直接退職を伝えることに抵抗がある場合、
- 配達記録付き内容証明郵便で退職届を郵送する
- 退職の旨を記載したメールを送る
- 録音しながら口頭で伝える
等の手段を用いて退職の意思(解約の申入れ)を明確に伝えましょう。
上述した民法に従い、解約の申入れの日から2週間経過すると退職が成立します。
退職の意思を証拠として残しておくことで法的な証明になります。普通の会社であればここまで徹しなくとも退職願いを出す・退職の旨を口頭で伝える、などで十分なのですが、人手不足を理由に理不尽に退職をさせない会社であれば普通の会社ではないのは確定です。よって、労働者側も退職対策を徹底した方が良いです。
2.やむを得ない事情による双方の合意で辞める
- 自身や家族の病気
- 仕事のストレスによりうつ病や適応障害になってしまった
などのやむを得ない事情がある場合は会社に連絡した上で労働者と雇用主側、それぞれの合意(双方の合意)のもと例外として即日退職も可能です。
3.違法性から即日退職を切り出す
- パワハラ
- 労働条件の相違(事前に聞いていた内容が異なる)
パワハラは労働者の心と体の安全に影響がある行為であり、「労働契約法5条」に基づき使用者である会社側が労働者の生命、身体などの安全を確保しつつ労働することができる環境を用意できていない、となるので明確な違法行為に該当します。
違法行為に対しては即時退職が成立しますので「身の安全が確保されていなければ出勤することはできない」と伝えて退職してください。
また、業務内容が事前に聞いていた内容と異なる場合、労働基準法第15条「労働条件の明示」違反になり労働者は、即時に退職が出来ます。
いずれの場合にせよ会社側に違法性がある場合、労働者は即日退職が成立するため泣き寝入りして追い詰められる必要はありません。
違法行為と即日退職に関して詳しくは以下の記事もご参考になさってください。
4.どうしてもの場合は退職代行に相談する
- 人手不足でどうしても辞めさせてくれない
- 自分で退職を切り出すとトラブルになりそう
- でも、どうしても辞めたい
という場合は労働組合が運営する退職代行サービスに相談して辞めてしまいましょう。
確実に退職が成立します。
弁護士と労働組合の違いは役割と費用と目的
退職代行には弁護士と労働組合がありますが違いは役割と費用と目的にあります。
- お財布に優しく辞めたいなら労働組合
- 退職以上のことを求めるなら弁護士
大きくはこのようにお考えください。
弁護士は退職に限らず多くのトラブルを扱いますが労働組合は退職を専門に対応しています。また、費用は労働組合の方が控えめなので利用しやすいです。
目的については退職をしたいだけなのか?それ以上(訴訟など)の話があるのか?の話になります。退職以上の動きを検討しているなら弁護士を、辞めるだけなら労働組合を、と役割を切り分けて考えると良いでしょう。
中には労働組合の方が経験が足りないから~、などと事実無根の誤った情報を発信する所もありますがそんなことはありません。
本記事では退職することに特化してお伝えしているので労働組合を推奨していますが、どちらを選んでも退職を実現してくれますのでご自身の費用や目的に併せて検討してください。
即日退職が可能
退職代行はお手持ちのスマホからLINEで申込み相談が可能、希望があれば即日から代行業者が動き出してくれます。
代行業者が動き出した瞬間から職場に行くことも連絡する必要も無くなるので、早ければ相談した即日から会社に行かなくても良い状態になれます。
退職代行の具体的なメリットとしては、
- 確実に退職が成立する
- 法律に則って退職処理するので法的なトラブルがない
- 自分で対応する必要が無いので退職にまつわるストレスが無い
などがあります、他にも
- 退職後の転職支援
- 有給消化や残業の未払いなども変わりに交渉が可能
- 労働組合による退職代行なら追加料金もなしで相談を受け付ける
などがあり、退職代行費を支払ってでも利用するメリットがあります。
そのため、もしあなたが
- 退職を切り出してもどうしても辞めさせてくれない
- どうしても辞めたいけど自分で辞めるのが難しい
- トラブル無くすぐにでも辞めたい
等の場合は迷わず労働組合が運営する退職代行サービスを利用することをおすすめします。
まとめ
人手不足の職場はご自身への負担が強いられます。辞められない期間が長引けば長引くほどに無駄な時間を費やし、心と体を消耗させるだけです。
退職は法で認められた労働者の権利。
会社側からの辞めにくくさせるような不当な圧力でご自身を危険な状態にしてしまう前に、いざという時は今の職場環境から離れるための選択肢も用意しておきましょう。