退職の際、上司に合えない事情があるときは電話で退職を伝えても良い理由、および伝える際の注意点について解説します。
退職の際に上司に会えない時は電話で伝えても良い
辞める際に上司に会えない時は電話で退職を伝えても問題ありません。また、実際に電話で伝える方も少なくありません。
退職の伝え方に法的な規制は無い
第六百二十七条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
民法第627条
労働者の退職は民法第627条が基本的な原則になりますが、退職方法については法的な義務や指定はなく、解約の申入れ(退職を伝える)があれば退職が成立する旨だけが記載されています。
そのため、直接会って伝えないといけない等の伝達方法の規定は定められていないことから電話で伝えても問題は無いことがわかっています。
どうしても事情がある場合は電話でOK
- 体調不良で上司に合うことが出来ない
- 上司からハラスメントを受けており会いたくない
など、直接会って伝えるのが難しい事情があるときはやむを得ない状況ですので電話で伝えても問題はありません。
退職の際に上司に会えない環境にいる場合
- 上司が忙しくて直接会う機会が無い
- 他の店舗に出ずっぱりで会うのが難しい
- 出張中で会う機会が無い
など、物理的に会うことが難しいケースも同様です。やむを得ない状況と言えるでしょう。
メールでも可能
伝達手段は限定されていませんのでメールで伝えることも可能。ただし、直接伝えた方が相手からの心証は良いので、できる限り電話で伝えるようにした方が好ましいです。
【参考】実際に電話で伝えている方の例
電話で退職を伝える方は少なくありません。
電話で退職を伝えることについては以下の記事も併せてご参考になさってください。
【補足】試用期間であっても電話で退職を伝えることは可能
試用期間中であっても退職のルールは正規の社員と変わりありません。
そのため、試用期間中に辞めたいと思い、且つ直接会って伝えるのが難しい時は電話で退職を伝えても問題はありません。
電話の後に退職届も郵送する
民法第627条にもあるように退職で大事なのは伝え方ではなく「退職の意思を伝えた」という事実です。
その為、退職を伝えた事実を証明し、形として残すためにも、退職を電話で伝えた後に改めて退職届けを会社に郵送しましょう。
なお、退職届を届けた証明をするためにも内容証明郵便で送ると更に確実です。
電話で退職を伝える際の言い方や注意点【例文付き】
退職理由は一身上の都合で良い
前提として、退職理由の用意は法で義務付けられてはいません。言わなくとも退職はできますし、言う場合は必ずしも本音で退職理由を伝える必要もありません。極論ですが退職理由が嘘であっても問題はありません。
そのため、どうしても退職理由を伝える必要があるが伝えにくい、という場合は「一身上の都合」という一番無難な言葉で押し通していただいて問題ありません。
他の退職理由を用意する場合
一身上の都合以外での用意が必要な時は会社では解決できない理由を用意してください。
- 家族の介護
- 実家を引き継ぐ
- 結婚を機に家庭を守りたい
- 新しくやりたいことが見つかった
など、会社側でサポートしようが無い理由であれば会社側も引き止めることが出来ないので、認めざるを得ません。
退職理由について詳しくは以下の記事もご参考になさってください。
電話で伝えることの申し訳なさも添える
法的に電話で伝えることは問題無い一方で、令和になった現在においても「退職は直接会って伝える」が一般的なマナーとされています。つまり、事情がどうであれ退職を電話で伝えるの非常識なマナーとして捉えられる可能性が高いです。
そのため、電話で伝える際は「本来であれば直接会って伝えなければならないところ電話でのお伝えとなり申し訳ございません」という一言は必ず加えてください。
マナーが悪ければ心証を損ねることとなり退職がスムーズに進まなくなる可能性があります。そんなリスクを未然に防ぐためにも電話で伝えることへのお詫びの一言だけは必ず忘れずに伝えましょう。
退職することが前提で伝える
「辞めようと思ってまして」といったあやふやな伝え方になると相手も必死に引き留めに入るので簡単に辞めることができません。そのため、「退職を決意しました、つきましては、、、」と退職すること前提に伝えましょう。
引き留めに屈しない
本気で退職を心に決めているなら決して引き留めには応じないこと。
仮に引き留め条件として待遇の改善が約束されていたとしても実行されるかどうかは保障されませんし、無かったことにされることもあります。
また、仮に残ったとしての周囲からは「辞めたがっている人」として見られるので勤務していても心が休まることがありません。
「退職する」と決めたら引き留めに応じることなく、そのまま辞めるのがお互いにとって良いです。
会社の不平不満は避ける
退職の本当の理由が職場に対する不平・不満だとしても、退職理由として会社側への不平不満を伝えるのは可能な限り避けた方が好ましいです。
直接伝えてしまうと心証が悪くなり辞めにくくなるリスクがあるだけでなく、「不満を解消するから会社に残って欲しい」と引き留める口実を相手に与えてしまい、尚更辞めにくくなることもあります。
・退職理由が上司にある場合
上司の普段の対応や上司からのハラスメント被害などがご自身の退職の原因にある場合、張本人である上司に退職理由を正直に打ち明けるのは難しいものです。
また、仮に直接伝えてしまうとほぼ確実に心証が悪くなりますので円満退職も難しくなります。
その為、トラブルを避けるためにも原因である上司には
- 一身上の都合により退職させていただきます
- 自分のやりたい仕事が見つかりましたので○月○日に退職させていただきます
など、別の理由を用意して伝えましょう。
相手との関係性によっては必要に応じて退職理由に嘘を用意することも検討した方が良いです。円滑に辞めることを最優先にしていくべきでしょう。
どうしても上司との関係が悪いなかで辞めていく際の注意点について詳しくは以下の記事もご参考になさってください。
電話であっても即日で退職が成立する条件
民法第627条があるので原則としては即日退職は難しいのですが、例外的に電話で退職を伝えた時でも即日退職が成立する条件も以下より併せてお伝えします。
どうしてもの際は選択肢として用意しておきましょう。
1.双方の合意による即日退職
(やむを得ない事由による雇用の解除)
民法第628条
第六百二十八条 当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。
民法第628条より、やむを得ない事由が発生した場合は会社と労働者、双方の合意に基づき即日退職が成立します。
なお、やむを得ない事由としては怪我・病気、家族の介護、出産などによりどうしても勤務が出来ない場合が該当します。
どうしても勤務を続けるのが難しい理由があり、その理由を会社側が認めてくれれば双方の合意による即時退職が成立します。
2.労働条件の相違
(労働条件の明示)
労働基準法第15条
第十五条 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。
② 前項の規定によつて明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。
③ 前項の場合、就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から十四日以内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければならない。
労働基準法第十五条より、労働条件の相違は即時に契約解除(即日退職)が認められています。
入社時に会社から受け取った雇用契約書と実際の現場での労働条件・仕事内容が異なる場合、その旨を会社に伝えて労働環境や業務内容を是正してもらいましょう。そして、聞き入れてもらえない場合は即日退職してしまいましょう。
労働条件の相違と退職について詳しくは以下の記事もご参考になさってください。
3.ハラスメントの被害に遭っている場合
第五条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
労働契約法 | e-Gov法令検索
ハラスメントは労働者の心と体の安全に影響がある行為であり、労働契約法5条に基づき使用者である会社側が労働者の生命、身体などの安全を確保しつつ労働することができる環境を用意できていない、となります。
加えて、ハラスメントはハラスメント防止法(正式名称:改正労働施策総合推進法)違反にも該当します。
いずれの場合でも法律に反した状況であることに違いは無いので、会社側には「身の安全が保障されないため」と伝えてご自身の退職処理を進めましょう。
ハラスメント被害による退職について詳しくは以下の記事もご参考になさってください。
他にも早期退職について詳しくは以下の記事も併せてご参考になさってください。
電話で退職を切り出すのが怖い時は退職代行に相談する
- 退職を自分で切り出すのは難しい
- 退職相談をしたのに辞めさせてくれない
- 退職処理が一向に進まない
- でも、どうしても辞めたい
という状況であれば労働組合が運営する退職代行サービスを利用して辞めましょう。
確実に退職が成立します。
お手持ちのスマホから電話やLINE(メールでも可)で申込み相談可能、希望すれば即日から代行業者が動き出してくれます。
代行業者が動き出した瞬間からあなたは職場に行くことも連絡する必要も無くなるので、早ければ相談した即日から会社に行かなくても良い状態になれます。
具体的なメリットとして、
- 確実に退職が成立する
- 法律に則って退職処理するので法的なトラブルがない
- 引き止めが発生しないので心理的な負担もない
- 自分で対応する必要が無いので退職にまつわるストレスが無い
等があり、希望者には有給消化や未払いの交渉もしてくれますので退職代行費を支払う以上の利用メリットがあります。
そのため、もしあなたが
- 退職を自分で切り出すのは難しい
- 退職相談をしたのに辞めさせてくれない
- トラブル無くすぐにでも辞めたい
- でも、どうしても辞めたい
という状況であれば労働組合が運営する退職代行サービスに相談して辞めてしまいましょう。
まとめ
直接会って退職を伝えた方が相手の心証が良いことには違いありませんが、やむを得ない事情により会って伝えることが出来ない事情があることも事実です。
電話で伝えることは法に反しているわけではありませんので、どうしても他の選択肢が無いときは気兼ねすることなく電話での退職を伝えてしまいましょう。