退職時に会社と揉めてしまった際の辞め方や注意点を解説しています。
労働者側のわがままにより会社側に迷惑をかけている状況ではなく、客観的に見て明らかに雇用主側(会社側)が労働者側に不当な扱いをしてきたことで揉めた際にどうするか?という観点からまとめています。
退職で会社と揉める際に徹すべきポイント
1.労働者側の意思で退職は可能という事実
第六百二十七条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
民法第627条
民法第627条により退職は労働者の権利として認められおり、その権利を会社は拒否する力を持ちません。
会社と揉めると辞められないのでは?と不安になるかもしれませんが、会社が何と言ってきても労働者側の意思で退職が成立できることは法律で認められています。
すぐにでも会社を辞めたい!ということであれば以下の記事もご参考になさってください
2.「相手」を誤解しないこと
会社と揉めると形式上は「会社と揉めた」という形にはなりますが、『具体的に誰と揉めているのか?』を明確にしておきましょう。
例えば、
- 社長と揉めているけど、同僚や他のスタッフとは揉めているわけでは無い
となれば同僚や他のスタッフに対しては悪態をつく必要はありませんよね?
必要以上に敵を作る必要はありません。味方は多いに越したことは無いですし、敵は少ないに越したことは無いです。
仲の良い人とは円滑な関係のままの方が良いに決まっていますので、相手が誰なのか?は誤解しないようにしてください。
僕が辞めた当時も社長に対しては「この野郎!」でしたが、他の方とは特に問題はありませんでした。例えば総務の方とは仲良かったぐらいですから、会社自体は辞めましたけど退職に関わる手続きなどでトラブルになることはありませんでした。
3.次の転職先は伝えない
揉めている中で次の転職先を教えると、
- 転職や退職をさせない嫌がらせ
- 転職できたとしても転職後に嫌がらせ
などをされるリスクが0とは言えません。
元の職場からの嫌がらせがあるとご自身はもちろん転職先にも迷惑がかかります。
退職時に次の転職先を伝える義務は無いので、リスクを避けるためにも仮に「次の転職先を教えろ!」と脅されたとしても『嫌です』『回答は控えます』などで秘密のまま押し通してください。
退職時に次の勤務先に言及しないことについて詳しくは以下の記事もご参考になさってください。
4.常に証拠を残しておく
会社側に非がある場合、ご自身でわかる範囲で良いので「具体的に何が問題なのか?(会社側の問題なのか?)」をメモに記述して残しておきましょう。
[例]
- 残業代の未払い
- 有給をつかわせてくれない
- ハラスメント行為
- 身内を脅された
- 次の会社を教えろ!などの脅迫
また、これらの嫌がらせが何月何日にされたのか?も合わせてメモに残しておきましょう。
揉めた原因が会社側にあることが証明出来る状態にしておくことで、いざという時に御自身の正当性を証明することが出来ます。
5.自分の感情を表に出さない
揉めた際は感情的になりやすいものですが、感情的になると自分のボロが出やすく、後になってご自身にとって都合の悪い自体に追い込まれる可能性があります。
そのため、会社側と本気でぶつかろうとするなら感情は抑えて事実と法律を元に淡々と対応するが効果的です。
円満退職は必要ないと割り切った方が良い理由
わざわざ自分からトラブルを引き起こす必要はありませんが、すでに会社と揉めてしまっている状況であれば円満退職は必要ないと割り切って退職処理を進めた方が良いです。
なぜなら、会社と揉めている中で円満退職にこだわろうとすると
- 辞めるまでに時間がかかる
- 時間がかかると次の仕事に影響する
- 時間がかかっている間、必要以上に職場ストレスを受けてしまう
- ストレスは一定量を越えると心身に悪影響を及ぼしてしまう
など、ご自身にとって損失が大き過ぎるからです。
退職後に転職先が決まっている場合、転職先に迷惑がかかります。退職に伴うストレスによるトラブルは会社は保障してくれません。
つまりトラブルが起きてから円満退職にこだわろうとすることはご自身にとってのメリットが一切ありません。
円満退職はあり得ない
円満退職の定義は人それぞれ。
会社側の視点に立つなら、
- 引継ぎを完ぺきに
- 次の人材の確保が確定してから
- 社内外のすべての関係者に挨拶
などが考えられますが、すべてに完ぺきに対応しようとすると必要以上に時間がかかります。
そもそも退職は上司側の評価を損ねる要因になりますので退職に対して前向きに対応してもらいにくいことが大前提。つまり、辞めたいと思っている本人が思っている程スムーズに退職処理は進みません。
- 次が決まっている
- しばらく休みたい
など、辞めた後の予定が決まっている場合、円満退職を心がけようとすればするほどに退職後のスケジュールが崩れてしまいます。
そのため、円満退職にこだわるよりも粛々と退職処理を進めるべきです。
退職時に周囲の態度が変わってきたときの対処の仕方について詳しくは以下の記事もご参考になさってください
退職時に揉めても後の人生に響くことは無い
一般論として「円満退社をしないと転職後の仕事に影響する」「転職後の人脈が無くなる」などと言われることが多いので円満退社にこだわろうとする方も多いですが、実際は退職後に会社と揉めたことでの影響を受けることはありません。
ありもしないことで悩むよりも、すぐに退職処理を進めて職場から離れ、次に切り替えてください。
むしろ円満退職をしない方が良いケースがある
- 賃金不払
- パワハラで苦しんでいる
- 仕事が影響して体調を壊した
- 仕事内容の相違
などの場合は円満退職を気にするよりもすぐに退職することだけを考えてください。
賃金の不払いは労働基準法第24条違反。
(賃金の支払)
労働基準法 第二十四条
第二十四条 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。
② 賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。ただし、臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるもので厚生労働省令で定める賃金(第八十九条において「臨時の賃金等」という。)については、この限りでない。
ハラスメントはハラスメント防止法違反、且つ労働契約法5条違反に該当。
第五条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
労働契約法 | e-Gov法令検索
仕事が影響して体調を壊すことも同様に労働者の安全の確保を出来ていないことに該当するため労働契約法5条違反に該当します。
(労働条件の明示)
第十五条 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。
② 前項の規定によつて明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。
gov法令検索(労働基準法)
入社時、事前に聞いていた業務条件と実際の業務内容に相違がある場合は労働基準法第15条違反に該当します。
これらのように明確な法律違反に該当する状況にある場合、ご自身の身の安全を守るためにも即時辞めることを検討してください。
退職でこじれることが多い理由
1.退職スケジュールの交渉が難航する
人員が辞めるタイミングでの会社側の意向としては下記の考えを持ちます。
- 引き継ぎは漏れなく完了させたい
- 引き継ぎ人員がいない時は求人を出す必要がある
一方、ご自身としては
- すぐにでも辞めたい
- と考えることが多いので双方の意見の相違が発生します。
会社から提示される退職日とご自身の退職希望日との間に大きな乖離があると交渉が難航し、その結果として揉める原因になります。
退職日でもめる時は就業規則や法律を利用する
就業規則を事前に確認し、規則通りに退職を伝えることでスケジュール交渉の難航をある程度までは予防することは出来ますが、それでも完ぺきとは言えません。
いざという時は民法第627条に従って対象するか、後述する労働組合が運営する退職代行サービスなどの第三者機関を間に入れて退職のやり取りをしたほうがスムーズに退職処理が進みます。
どうしても辞めさせてくれない、という時は以下の記事もご参考になさってください。
2.退職交渉が進まずに揉める
- 退職交渉に対応してくれない
- 辞めると伝えたのに聞いていなかったことにされる
など、退職交渉が進まないことで揉めることがあります。
退職交渉のトラブルを避けるなら証拠を残す
退職の意思を伝える際は証拠を残して相手に伝えましょう。メールの送信履歴、退職届を内容証明郵便で会社に送る、電話は録音しておくなど。
民法第627条より退職の意思を伝えれば法的に退職は成立します。退職の意思の証拠を残せば法的に認められるので、交渉が進まなくともそれ以上、相手に付き合う必要が無くなります。
3.嘘の退職理由がバレる
こちらの記事で書いたように嘘の退職理由がばれると嘘の内容によってはトラブルになることがあります。
トラブルを避けるためにもバレにくい嘘(外部からの確認の取りようがない、身内の問題に関する嘘など)を用意するか、「一身上の都合により退職する」に徹してください。
4.競合への転職がバレて揉める
競合他社への転職がバレて揉めることがありますが、労働者には職業選択の自由があるので会社から次の転職先を強制されても従う必要はありません。
ただし、現職に入社時に「退職後〇年は競合他社に行きません」などの誓約書を書いて競業避止義務契約をしている場合は場合は話がこじれます。
この場合、競業避止義務契約に妥当性があるのか?を社労士などの専門家機関を挟んで調査し、辞める際の落としどころを探るしかありません。
5.引き止めがしつこい
退職時に引き止めが入ることで揉めることがあります。
(強制労働の禁止)
労働基準法 第5条
第五条 使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によつて、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。
労働基準法 第5条より労働者の意思に反して強制的に働かせることは認められていませんので在職強要となります。そのため、引き止められた際は従う必要はありません。
引き止めトラブルへの対応について詳しくは以下の記事もご参考になさってください。
6.引き継ぎトラブル
前提として、退職時の引き継ぎは法で定められているわけでは無いので退職時の必須事項ではありません。これまで勤務させてもらった会社に対する感謝に基づく行為になります。
引継ぎはしなくて良いということではなく、引継ぎが無いからといって労働者の退職を妨げる理由にはならない、ということです。
少しでも退職をスムーズに進めるためにも可能な範囲で引き継ぎはしておきましょう。
業務内容や進捗状況をまとめ、マニュアル化しておきます。また、顧客への挨拶なども行いましょう。
後任が決まっておらず引継ぎが出来ない場合は、上司に引き継ぎ内容をマニュアル化して伝えておきましょう。
7.辞める際に有給を消化させてもらえない
有給の権利があるにもかかわらず、退職時に有給を認めてもらえないことは会社側の労働基準法 第三十九条に違反する違法行為になるので従う必要はありません。
使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。
第三十九条⑤|労働基準法 | e-Gov法令検索
また、有給の申請は原則として労働者側の以降が通るので、当日からでも申請して退職日まで有給消化することは可能です。
退職時の有給消化について詳しくは以下の記事もご参考になさってください。
退職で揉めた人でも確実に辞めることができる方法
非対面で退職処理を進める
会社と揉めている場合、直接伝える方が余計にトラブルに拍車をかけてしまうこともあります。そのため、非対面で退職処理を進めた方が無難です。
民法第627条より労働者には退職の権利があり、退職の意思を示せば2週間後に退職が成立します。
- 退職届
- メール
- 電話で伝える
などでも退職の意思を伝えたことになるので、会社の担当と対面することなく退職の意思を伝えましょう。
その際ですが、退職の意思は証拠として証明できる必要があります。
会社側からあとで退職を言った・言わないでトラブルになる可能性がある場合は「2.退職交渉が進まずに揉める」でもお伝えしたように退職届を内容証明郵便で送る、電話は録音しながら伝える、など証拠を残した伝え方に徹してください。
労働基準監督署に相談する
会社が認めてくれない時は最寄りの労働基準監督署に相談して会社側に指導を入れてもらうこともできます。
ただし、労働基準監督署は個人の悩みの解決を保証するわけではありません。
あくまで会社側に指導をするだけであり、会社側がそれを無視した場合はそれ以上の介入が出来ないため、確実な退職の保証になるわけでは無いことは予め念頭に入れておきましょう。
どうしてもの際は退職代行に相談する
- 辞めたいのに辞めさせてくれない
- 自分から退職を切り出すのは難しい
- でも、どうしても辞めたい
という状況であれば労働組合が運営する退職代行サービスに相談して辞めてしまいましょう。
確実に退職が成立します。
退職代行はお手持ちのスマホから電話やLINE(メールでも可)で申込み相談が可能。希望があれば即日から代行業者が動き出してくれます。
代行業者が動き出した瞬間から職場に行くことも連絡する必要も無くなるので、早ければ相談した即日から会社に行かなくても良い状態になれます。
具体的には、
- 確実に退職が成立する
- 法に則って対応するので法的なトラブルが起きない
- 有給消化や未払いの交渉もしてくれる
など、あなたが代行サービスに支払う代金以上の利用メリットがあります。
そのため、もしあなたが
- 辞めたいけど言い出せない
- 上司と顔を合わせずに辞めたい
- すぐにでも職場を離れたい
等の場合は迷わず労働組合が運営する退職代行サービスの利用をおすすめします。
会社と揉める時は割り切ることに徹する
揉めるよりは揉めない方が良いですし、円滑に退職できるならそれが一番であることは間違いありません。
ですが、揉める時は揉めてしまうものです。
どうしても揉め事が避けられない時は綺麗ごとにこだわることなく、あなたが「会社を確実に辞める」という目的を達成することを第一に行動してください。その中で、どうしてもご自身で対処が出来ない時は退職代行に相談して辞めてしまいましょう。