入社一日で退職する際のメールの書き方や伝える際の注意点について解説しています。
入社一日で退職する際のメールの例文
件名:退職のご報告
〇〇課長
お疲れ様です。○○部の△△です。
メールでの連絡にて失礼いたします。
入社早々で申し訳ございませんが、一身上の都合により本日付で退職させてください。
(退職理由を書く際はここに退職理由を記述する)
この度は入ってすぐの退職となりまして誠に申し訳ございませんでした。
自身の直属の上司宛に送りましょう。なお、文章は奇をてらったものではなく無難な内容でお詫びを含めて記述してください。
【参考】試用期間で退職する際のメール例文
【業務内容の相違、の場合】
仕事内容が、入社前に考えていたものと相違があり、このまま続けるのが難しいと判断いたしました。試用期間中でこのようなお話をすることになり大変申し訳ありませんが、会社にご迷惑をおかけする前に退職させていただきたいと考えております。
【雰囲気や社風の相違、の場合】
社風や雰囲気が自分の想像していたものと異なり、勤務してすぐに自分に適していないと感じてしまいました。ストレスを抱えながら勤務するのは難しいと判断させていただきました。試用期間中でこのようなお話をすることになり大変申し訳ありませんが、会社にご迷惑をおかけする前に退職させていただきたいと考えております。
上述した例文をベースにこれらの内容を参考に退職のメールを会社側に送ってください。
退職理由は一身上の都合で良い
原則として法的には退職理由を用意する義務や必要性は設けられていません。
そのため、退職理由を書かなくとも退職はできますし、伝える場合は必ずしも本音で退職理由を伝える必要もありません。極論ですが退職理由が嘘であっても問題はありません。
退職理由を書くのが嫌、でもどうしても退職理由を伝える必要があるという際は「一身上の都合」で構いません。
【補足】入社してすぐ辞める際のメール履歴は残す(保存する)
退職の意思を伝えたことを証拠として残さない限り、後日「言った・言わない」というトラブルが起こる可能性があります。
その為、入社してすぐ辞める方法と伝え方を退職時の注意点と共に解説でもお伝えしてるように、入社してすぐ辞める際のメールは送信したメール履歴、および会社からの返信履歴を残しておきましょう。
【補足】ショートメールでの退職の申告も可能
退職の意思を伝え、証拠として残すことができればショートメールでも成立はします。
念のため退職届を送付する
メールで伝えた後、退職が認められたら念のため後日退職届も会社側に郵送しましょう。内容証明郵便で送れば履歴が残りますので届いたことが証明できます。メールで良いとされているならそのままでも構いませんが、退職届まで届ければ対応としてはより完ぺきと言えます。
1日で辞めた人の実例
会社を1日で辞めてしまったのですが、雇用契約書諸々の書類を提出していないままで辞めました。
Yahoo!知恵袋
そしたら会社から雇用契約書などに印鑑をして提出してから退職の手続きをするので、提出してください。と言われました。
これは提出した方が良いんですかね?
それとも、何か仕掛けようとしているんでしょうか?
このように、事実として入社1日で辞める人は居ます。
【大事】労働環境は退職に影響する
「令和3年雇用動向調査結果の概要」「転職入職者が前職を辞めた理由」によると、前職を辞めた理由として
- 仕事の内容に興味を持てなかった
- 能力・個性・資格を活かせなかった
- 会社の将来が不安だった
- 職場の人間関係が好ましくなかった
など、仕事内容に満足できずに退職してしまう方が一定数いることがわかっています。
加えて、PRTIMESの「【入社後すぐに転職した理由ランキング】経験者383人アンケート調査」でも会社を辞めた理由に
- 人間関係への不満
とあることから、普段仕事を一緒に行う周囲の人間関係の良し悪しも退職を決断する大きな理由の1つになることがわかっています。
自分の身の安全を第一に考えた方が良い
辞めたい理由は個々によって異なりますが、いまの職場に居続けるのが難しいという状態にも拘わらず我慢して働き続けることだけは避けてください。
辞めたいのに辞められない状況は強いストレスがかかり、状況が続くとうつ病や適応障害など精神疾患にかかるリスクがあります。
会社は責任をとってくれない
うつや適応障害などの精神疾患にかかると仕事だけではなくその後のご自身の人生やプライベートに影響します。
病気の回復には時間がかかり、勤務が出来なくなるだけでなく、就職活動や社会復帰にも影響します。ですが、ご自身のプライベートを会社が守ってくれることはありません。
そのため、うつや適応障害になる可能性があるなら我慢していまの職場に留まることなく、退職を最優先に動いてください。社会的なダメージを負うリスクを背負ってまで今の会社で我慢する必要はありません。
一番大事なことはご自身の身の安全です。
退職メールで済ます際の注意点
退職をメールで伝えるのは一般的なマナーではないことを理解する
- 直接会って伝える
- まずは退職相談のアポをとり、その後に退職を伝える
こうした段取りを踏むのが退職の一般的なマナー。仕事を1日で辞める、さらにはメールで退職の旨を伝えることは一般的なマナーとは言えませんので必ずしもスムーズに相手が承認してくれるとは限りません。
例えば入社3日目で退職の電話をするコツを伝えた記事でお伝えしたように切り出し方は重要です。そのため、退職時のトラブルができる限り起こらないよう相手の気持ちを逆なでせず、終始謝罪の意思を伝えて退職処理を進めてください。
損害賠償は原則気にする必要は無い
(賠償予定の禁止)
労働基準法第16条
第十六条 使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。
原則として損害賠償ありきの労働契約を結ぶことは法律で禁止されています。そのため、退職したこと対して損害賠償を義務付けることは出来ません。
損害賠償は第三者が見ても辞めることで会社に多大な悪影響を残したときに検討されます。
【例】
- 退職時に多くの同僚を一緒に引き抜いて辞めた
- 退職時に会社のインサイダー情報を後悔した
など
ただ退職するだけであれば会社に多大な悪影響を残したとは認められにくいので原則として退職時の損害賠償は気にする必要はありません。
即日退職にならない可能性がある
退職の規定は会社の就業規則に則ることが基本原則。一般的には1、2ヶ月前に申し出ることが多いため、その規則に沿って辞めるのが基本的な流れと言えます。
ただし、就業規則には法的な強制力はなく、会社から労働者への「お願い」に該当する規約となります。その為、強制力の観点からすると民法第627条を元に判断することになります。
第六百二十七条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
民法第627条
民法第627条が退職の法的な原則となりますが、会社の就業規則抜きに考えたとしても最短で2週間が必要とされています。その為、退職を申し出たとしても必ずしも1日での退職が確実に成立するとは限りません。
双方の合意が成立した場合のみ
(やむを得ない事由による雇用の解除)
民法第628条
第六百二十八条 当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。
例外的に1日での退職が成立するのは民法第628条に該当した場合のみ。
民法第628条より、やむを得ない事由が発生した場合は会社と労働者、双方の合意に基づき即日退職が成立します。
なお、やむを得ない事由としては怪我・病気、家族の介護、出産などによりどうしても勤務が出来ない場合が該当します。
その為、退職を申し出て会社が認めてくれた場合にのみ例外的に1日での退職が成立することになります。
会社に行けない時の選択肢と考えるべき
- 入社すぐに事故や怪我で動きが取れない状態になった
- 会社と合わないので行きたくない・行くと体調不良になる
- 会社を考えるだけで涙や吐き気がする
など、こうした状況であればメールでの退職は選択肢になります。この場合はむしろ我慢して会社に行こうとする方がご自身の心身を壊す原因になるので急けた方が良いです。
一般的なマナーではないにせよ、どうしてもの際はメールで退職を伝えることも選択肢として用意しておきましょう。
退職後の書類を受け取り忘れないように
- 雇用保険被保険者証
- 年金手帳
- 源泉徴収票
- 離職票
- 扶養控除等(異動)申告書
- 健康保険被扶養者(異動)届
- 給与振込先届
- 健康診断書
など、退職時に必要な書類を会社から郵送してもらうよう会社側に伝えましょう。退職後の失業手当の申請、次の会社に入社する際の手続きなどで必要になります。
退職者に対しては退職後に会社側から書類を送ってもらうのが一般的なので過度に心配する必要はありませんが、どうしても気になる方や辞めた後しばらく会社から連絡が届かない方は退職後に念のため必要書類を送るように伝えておいてください。
確実に即日で辞めたい場合の対策
ハラスメント被害を訴える
第五条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
労働契約法 | e-Gov法令検索
ハラスメントは労働者の心と体の安全に影響がある行為であり、ハラスメントが起こる職場ということは労働契約法5条で定められた使用者である会社側が労働者の生命、身体などの安全を確保しつつ労働することができる環境を用意できていない職場、となります。つまり、労働契約法5条に反している状況(違法な状況)ということです。
加えて、ハラスメントはハラスメント防止法(正式名称:改正労働施策総合推進法)違反にも該当します。
いずれの場合でも法律に反した状況であることに違いは無いので、会社側には「身の安全が保障されないため」と伝えてご自身の退職処理を進めましょう。
労働条件の相違を訴える
(労働条件の明示)
労働基準法第15条
第十五条 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。
② 前項の規定によつて明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。
③ 前項の場合、就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から十四日以内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければならない。
労働基準法第15条より、労働条件の相違は即時に契約解除(即日退職)が認められています。
入社時に会社からもらった労働条件通知書と異なる労働条件・仕事内容であればその旨を会社に伝えて即日退職してしまいましょう。
どうしてもの際は退職代行に相談する
- 退職を自分で切り出すのは難しい
- 退職相談をしたのに辞めさせてくれない
- でも、どうしても辞めたい
という方であれば労働組合が運営する退職代行サービスに相談して辞めてしまいましょう。
確実に退職が成立します。
退職代行はお手持ちのスマホから電話やLINE(メールでも可)か相談が可能。希望があれば相談したその日から代行業者が動き出してくれます。
代行業者が動き出した瞬間からあなたは職場に行くことも連絡する必要も無くなるので、早ければ相談した即日から会社に行かなくても良い状態になれます。
具体的には、
- 確実に退職が成立する
- 法律に則って退職処理するので法的なトラブルがない
- 自分で対応する必要が無いので退職にまつわるストレスが無い
等があります。
そのため、あなたが
- 退職を自分で切り出すのは難しい
- 退職相談をしたのに辞めさせてくれない
- でも、どうしても辞めたい
という状況であれば労働組合が運営する退職代行サービスに相談して辞めてしまいましょう。
まとめ
1日で辞めることをメールで伝えることはイレギュラーな対応にはなりますが、法的に問題がある行為でないことも事実です。
どうしてもの際はメールで退職を伝えるという選択肢も用意し、できる限り相手に謝罪を伝えつつ退職処理を進めてください。
メールでの退職について詳しくは以下の記事もご参考になさってください。
メールを使って入社してすぐ辞める際によくある質問
- Qメールせずにバックレはアリ?
- A
「すぐに辞めたい、でも簡単に辞める頃が難しそう」などと感じたからと言えど、バックレだけは避けてください。
バックレによる退職は認められていません。そのため、バックレによる退職を行うと「違法行為」となり労働者に対して損害賠償請求や懲戒解雇を与えられる危険があります。
懲戒解雇になると転職活動時に相手先に伝えなければ経歴詐称になるので必ず伝える必要があります。つまり、懲戒解雇になるとその事実が必ず転職先にはバレますので転職活動においてご自身の印象が悪くなり不利益しかありません。
他にも嫌がらせや呼び戻しなどの可能性もあり、バックレは退職行為に対するリターンとリスクを加味した際にリスクが大きすぎて帳尻が合わない行為と言えます。そのため、法に基づかない退職行為だけは控えた方が良いです。
辞めるなら法に則って確実に・安全に辞めましょう。
- Q勤務分の金額は受け取れる?
- A
(賃金の支払)
労働基準法第24条
第二十四条 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。
② 賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。ただし、臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるもので厚生労働省令で定める賃金(第八十九条において「臨時の賃金等」という。)については、この限りでない。労働基準法第24条では、賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない、と規定されています。 従って、働いた分はその全額が支給されなければなりません。
よって、勤務期間が1日だとしても1日分の給与を労働者に支払う義務があります。また、労働者側も給与を会社側に請求することは何も問題ありません。
- Q会社に行かないとどういう扱いになる?
- A
民法第628条で認めてもらえない場合、民法第627条を元に2週間での退職を検討することになりますが、2週間という期間も会社に行きたいくない場合、会社に相談して「欠勤扱い」にしてもらいましょう。欠勤に慣れば給与は発生しないですが、その分確実に休むことになり、実質的に1日で退職したことと同じ状況になります。