試用期間でついていけないと感じた時にどうすべきか?について解説します。
試用期間でついていけないと感じた時にどうすべきか?
試用期間中に「ついていけない」と感じた場合、すぐに辞めたくなる人も少なくありません。
ですが、「ついていけない」の意味合いによって、対応の仕方や考え方は変わります。
能力不足で辞めたい場合
能力不足を感じる場合、能力が不足しているというよりも「慣れ」の問題であることが多いです。
例えば中途採用の場合、十分な能力があったとしても新しい職場であればそれまでと取り組み方が異なります。そのため、就業してすぐはスムーズに対処ができないことがあってもおかしな話ではありません。また、新卒の場合はそもそ初めての社会人ですから不慣れな状態が当たり前です。
この場合、続けた方が良いです。
今の時点ではついていけないことに強い負い目を感じる必要はありませんので、時間と共に慣れていきましょう。
精神的に辛い場合
精神的な辛さを抱えて我慢し続けると自律神経系(交感神経・副交感神経)た、脳の神経伝達物質(意欲や不安の感じ方に関係する物質)の乱れを生み、うつ病や適応障害をはじめ、頭痛・腹痛・めまいなど心身を壊してしまう恐れがあります。
この場合、仕事を続けられなくなるどころか、周囲にも迷惑をかけてしまう危険があるので精神的に辛い場合は我慢し続けない方が良いです。そのため、退職を検討した方が良いです。
精神的に辛くて辞めたい時の注意点について詳しくは以下の記事もご参考になさってください。
ハラスメントを受けている場合
第五条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
労働契約法 | e-Gov法令検索
ハラスメントは労働者の心と体の安全に影響がある行為であり、は労働契約法5条に基づき使用者である会社側が労働者の生命、身体などの安全を確保しつつ労働することができる環境を用意できていない、と言えます。
加えて、ハラスメントはハラスメント防止法(正式名称:改正労働施策総合推進法)違反にも該当します。
いずれの場合でも法律に反した状況であることに違いは無いので退職処理を進めましょう。
ハラスメント被害による退職について詳しくは以下の記事もご参考になさってください。
労働条件に相違がある場合
(労働条件の明示)
労働基準法第15条
第十五条 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。
② 前項の規定によつて明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。
③ 前項の場合、就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から十四日以内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければならない。
労働基準法第十五条より、労働条件の相違は即時に契約解除(即日退職)が認められています。
入社時に会社から受け取った雇用契約書と実際の現場での労働条件・仕事内容が異なる場合、その旨を会社に伝えて労働環境や業務内容を是正してもらいましょう。もし聞き入れてもらえない様であれば即日退職して問題はありません。
労働条件の相違と退職について詳しくは以下の記事もご参考になさってください。
試用期間で退職した体験談
試用期間で退職する経験者は少なくありません。
- 考え方が異なる
- 元々想定していたものと違う
- 体調不良で難しい
など理由は様々ですが、本採用前に辞めた方が会社にも大きな迷惑をかけにくいことを考えると綺麗な辞め方と言えます。
退職理由が「合わない」という人は少なくない
いわゆる「社風」の問題です。
- ブラックすぎる
- 考え方が違う
など、「おそらく本採用されても長く続けられないだろう」と採用期間中に感じる方は少なくありません。
「精神的に辛い場合」でも触れたように合わない環境で我慢し続けてもご自身にとって辛いだけです。よって、この場合は試用期間中に辞めた方が好ましいです。
合わない環境での辞め方について詳しくは以下の記事もご参考になさってください。
そもそも試用期間の意味とは?
試用期間中は会社と労働者、お互いがマッチするかどうか?の期間。そのため、試用期間中に辞めたいと思ったなら退職を検討すること自体は問題ありません。
ただし、試用期間とはいえ労働契約を結んでいる期間であることには違いありません。
試用期間だから普通の社員と比べて緩い・自由がある、ということではありませんので急な無断欠勤・バックレなどは避けてください。退職する際は通常の労働者と同じなので会社の規定に従って辞めましょう。
試用期間中にどうしても合わないので辞めたい、となった際は以下の記事もご参考になさってください。
試用期間で辞める手順と注意点
バックレ禁止
第六百二十七条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
民法第627条
民法第627条により退職の自由は労働者の権利として定められていますが、最短でも辞めるまでに2週間が必要になります。
一部の条件を除き原則として即日退職は認められていませんので、バックレによる即日退職を行うと「違法行為」となり労働者に対して損害賠償請求や懲戒解雇を与えられる危険があります。
中でも懲戒解雇になると以下の問題が起こります。
- 本来貰えるはずだった退職金の一部または全部不支給
- 転職時にマイナスな印象を与えることになる
また、懲戒解雇になると転職活動時に相手先に伝えなければ経歴詐称になるので必ず伝える必要があります。つまり、懲戒解雇になるとその事実が必ず転職先にはバレますので転職活動においてご自身の印象が悪くなり不利益しかありません。
バックレは退職行為に対するご自身へのリスクが大きすぎて帳尻が合わない行為と言えます。そのため、法に基づかない即日退職行為だけは控えた方が良いです。辞めるなら法に則って確実に・安全に辞めましょう。
失業保険は適応されない
失業保険が適応されるには原則として以下のルールに該当する必要があります。
- 離職前2年間に被保険者期間が12か月以上必要
会社を辞める前の2年間で雇用保険に加入していた期間が12ヶ月以上あることが必要とされています。
試用期間中の退職になると条件に該当しないので、失業保険の受給が出来ないことはあらかじめ覚悟しておきましょう。
円満退職を第一に考える
辞めてしまうとしてもそれまでに短期間でもお世話になったことには違いありません。また、短期間で辞めてしまうことで会社側にある程度の負担をしいてしまったことも事実です。
「辞めるからどうでもいい」ではなく、「短期間での退職となり申し訳ございません。」「短い間ではありましたがありがとうございました。」など謝罪と感謝の意を伝えて円満退社を心がけてください。
退職の申し出
民法第627条より退職時は解約の申入れが必要になります。
口頭で伝えることもできますが、中には「言った・言わない」とうやむやにされる可能性もあるため、証拠として残した方が確実。そのため、退職届という形にして退職する旨を会社側に伝えましょう。
【補足】退職願と退職届の違いを理解しておこう
退職願は辞表の意思表明をあらわすもので、雇用者側の受理・承諾を求めます。雇用者との合意が必要となるのでこれを雇用者に受理・承諾してもらわなければ退職の効果は生じません。
退職届は労働契約の一方的な解約の意思、辞職の意思表示を表すもので、出してしまうと取り下げはできません。退職届の場合、雇用者に伝えたら雇用者の受理・承諾がなくとも、2週間の経過により、退職の効果が生じます。
退職願はそれ自身に法的な効力が生じないので退職願いが受理されないこと自体には違法性がありません。よって、退職を成立させたいときは「退職届」を会社側に提出してください。退職届であれば退職の意思を示したことになるので退職が成立します。
どうしてもの際は退職代行に相談する
- 自分から退職を切り出すのが難しい
- でも、どうしても辞めたい
という方であれば労働組合が運営する退職代行サービスに相談して辞めてしまいましょう。
確実に退職が成立します。
退職代行はお手持ちのスマホから電話やLINE(メールでも可)か相談が可能。希望があれば相談したその日から代行業者が動き出してくれます。
代行業者が動き出した瞬間からあなたは職場に行くことも連絡する必要も無くなるので、早ければ相談した即日から会社に行かなくても良い状態になれます。
具体的には、
- 確実に退職が成立する
- 法律に則って退職処理するので法的なトラブルがない
- 自分で対応する必要が無いので退職にまつわるストレスが無い
等があります。
そのため、あなたが
- 自分から退職を切り出すのが難しい
- 切り出したとしても辞めさせてもらえない
- でも、どうしても辞めたい
という状況であれば労働組合が運営する退職代行サービスに相談して辞めてしまいましょう。
まとめ
多くの場合、業務に不慣れなことが「ついていけない」の原因になりやすいので少しずつ慣れていけるように職場に馴染んでいけば問題ありませんが、『どうしても』という状況であれば試用期間中の退職も選択肢になります。
「ついていけない」と感じた時は感情的になる前に『何を持ってついていけない』と感じているのか?をご自身で理解して続ける・辞めるを判断していきましょう。