「派遣の勤務先を即日で辞めたい」でも「契約があるからすぐに辞めることはできるのだろうか?」と懸念される方に向けてに即日で辞めるための方法と退職時の注意点を解説しています。
直接話す以外にもメールで伝えるコツや即日退職を成立させるための条件など解説していますので、トラブル無くすぐにでも派遣社員を辞めたい、という方はご参考になさってください。
派遣を即日で辞める方法
先に教科書的なお話をしておくと、原則として派遣を即日辞める方法はありません。
なぜなら、派遣社員はそのほとんどが有期雇用派遣(期間の定めがある契約内容、登録型派遣とも呼ばれる)として契約していますが、有期雇用派遣は働く期間が定められていることから期間外での退職は認められにくくなっており、それが即日退職を成立させにくくしているためです。
事前に退職を伝えて契約更新のタイミングで辞めることは可能ですが、事前の連絡なく、更新タイミングでもない状況で即日で辞めることは契約不履行となるので派遣会社から認めてもらうことが出来ず退職はできません。
ただし、繰り返しますがこれはあくまで教科書的なお話であり、条件によっては契約途中で辞めることもできるのが事実です。
例えば、うつ病になり即日退職を希望する場合はやむを得ない事情と判断されて即日退職が成立することもあります。
そのため、
- 派遣に入ったばかりだけど辞めたい
- 明日には派遣を辞めたい
と感じるどうしようもないケースがあった際は、以下で解説する例外的な条件に該当するか?を確認し、退職処理を進めていきましょう。
1.派遣を即日辞めるならメールでも可能(例文付き)
辞める=直接話す、というイメージはありますが、実際はメールで伝えることも可能です。
そのため、派遣会社の担当と直接話す機会がない・少ない、話すのが苦手、といった事情がある方はメールで派遣元に退職の旨を伝えましょう。
派遣を辞めるメールの例文
【例文】
株式会社○○(派遣会社名)
◯◯様(担当者の名前、担当者名が不明の場合は「ご担当者様」とする)
お世話になっております。
〇〇(自分の名字)と申します。
次回○月からの契約更新の件ですが、
今回は更新せずに契約満了とさせていただきたく存じます。
誠に身勝手ではございますが、
何卒ご了承いただけますようお願いいたします。
○○(自分の名字)
2.勤務期間が1年以上経過している
第百三十七条 期間の定めのある労働契約(一定の事業の完了に必要な期間を定めるものを除き、その期間が一年を超えるものに限る。)を締結した労働者(第十四条第一項各号に規定する労働者を除く。)は、労働基準法の一部を改正する法律(平成十五年法律第百四号)附則第三条に規定する措置が講じられるまでの間、民法第六百二十八条の規定にかかわらず、当該労働契約の期間の初日から一年を経過した日以後においては、その使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができる。
労働基準法137条
派遣会社と有期雇用派遣として契約をしている状況であっても、労働基準法137条より勤務期間が1年以上経過している場合に限り労働者側の希望するタイミングでいつでも退職ができるため即時解約(即日退職)が可能です。つまり、1年を経過していれば「派遣を今日で辞めます」と伝えても法律上は成立します。
ただし、あくまでもこの規定は契約期間が1年を越える場合を想定したものであり、3ヶ月、半年という1年未満の契約を繰り返して累計1年という場合は適用外である点にご注意ください。
3.うつ病や適応障害なら即日退職は派遣でも可能
(やむを得ない事由による雇用の解除)
民法第六百二十八条
第六百二十八条 当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。
働く期間の定めがある有期雇用派遣であっても、民法628条より「やむを得ない事由」がある場合は雇用期間中であっても直ちに契約の解除が可能になります。つまり、即日で辞めることが可能です。
やむを得ない事由とは例えば、うつ病や適応障害、パワハラ被害やケガ・病気で勤務の継続が難しくなった、などが該当します。
体調不良を理由に派遣を即日で辞めることも可能
他にも、体調不良により業務を行うのが難しくなった場合なども該当します。体調不良というと軽めの症状に聞こえますが、勤務の継続が難しくなる状況であればやむを得ない事由として十分に該当します。
なお、一般的には体調不良で辞める際は証明として診断書を用意することが多いです。ただし、派遣の場合は正社員よりも緩く見られることがあるので、無くてもそのまま退職になることも多いです。どうしても必要と言われない限りは無理に用意しなくても良いでしょう。
他にも、以下の症状・状況であればやむを得ない事由とお考えください。
【やむを得ない事由の例】
- 契約外の仕事をさせられる
- 使用者が労働者の生命・身体に危険を及ぼす労働を命じた
- 派遣先の上司からパワハラやモラハラを受けている
- 賃金不払いなどの重要な債務不履行が発生した
- 労働者自身が負傷・疾病・心身の障害などにより就業不能に陥った
- 親や家族の介護が必要になった
- 家族の転勤などにより急な引っ越しが決まった
- 業務内容が法令に違反している
- 両親や子供の病気、または介護など
やむを得ない事由が派遣会社に認められることで、本人と派遣会社で双方の合意に至れば即日退職が可能になります。
【事実】適応障害やうつ病により派遣をすぐに辞めたいという方も多い
先月、職場のストレスで朝起きたら仕事に行けなくなり、病院に行ったところ「適応障害」と診断されました。
適応障害について | ガールズちゃんねる – Girls Channel –
派遣社員なのですが医師からはもう職場には行かないようにとのアドバイスがあり、そのまま辞めることとなりました。
出産育児ブランクを経て今年の1月から週5日実働6時間の派遣の事務職に就きました。
高齢出産だった事もあり、産後から疲れやすさ等を感じていたのですが、仕事を始めてからそれが急激に増し、最近は仕事以外の時間は抜け殻のような状態で家事育児に支障が出ています。
この状況はまずいと思い先日心療内科を受診したところ、適応障害と診断され今は朝晩抗不安薬を飲みながら仕事をしています。
3カ月更新の長期派遣で今の契約は8月末までですが、その後の更新を悩んでいます。
適応障害と仕事(派遣社員) | 心や体の悩み | 発言小町
契約があるからと我慢して派遣先の企業に従事している方は多く、その影響でうつ病や適応障害になってしまう人もいます。中にはうつ病の影響が仕事自体ができなくなり退職せざるを得ない状況に追い込まれてしまうケースもあります。
派遣を即日退職することについて詳しくは以下の記事も併せてご参考になさってください。
4.無期雇用派遣の場合、民法第627条を元に辞める
雇用の定めがない無期雇用派遣として派遣会社と契約を結んでいる場合、働く期間が定められている有期雇用派遣とは退職の条件が異なり民法第627条が適用されます。
第六百二十七条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
民法第627条
この場合、正社員と同じ条件となるので派遣社員側からいつでも退職の申し入れをすることが可能になります。
ただし、民法第627条では退職まで最短でも2週間が必要となります。そのため、派遣を即日で辞める時は退職届を提出した後に有給消化や欠勤扱いで会社に行かない状況にし、そのまま2週間を経過させることで実質的な即日退職を成立させます。
派遣社員も有給の権利はある
労働基準法第三十九条より、派遣社員であっても条件を満たせば有給を取得する権利があり有給消化は可能です。そのため、2週間という期間を有給消化で処理してそのまま辞めることも可能です。
【補足】派遣を即日辞めさせてくれない場合は在職強要に該当
(強制労働の禁止)
労働基準法 第5条
第五条 使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によつて、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。
派遣社員が「やむを得ない理由」や「契約更新のタイミング」などで契約終了や退職を望んでいるにも拘らず無理やり契約を更新させたり、引き止めようとしたりする行為は会社側の違法行為になります。
(契約途中の退職が認められる「やむを得ない理由」について詳しくは上述した「1.派遣元に連絡し、双方合意の上で辞める」をご参考になさってください。)
この場合、労働基準法第5条にある強制労働の禁止に対する違反行為となるため(在職強要とも呼ばれます。)引き止めの要請に従う必要はありません。
なお、強制労働の禁止に違反すると1年以上10年以下の懲役または20万円以上300万円以下の罰金が科されます。(労働基準法の中では最も重い罰則に該当します。)
退職の引き留めが酷い会社への対策について詳しくは以下の記事もご参考になさってください。
派遣を初日ですぐに辞めたいと感じる人は多い
派遣先の職場とは相性があります。そのため、仮に条件が良くても相性が悪ければすぐにでも辞めたいと感じる人は少なくありません。
派遣を明日にでも辞めたいと感じ始めたら我慢しないこと
こんにちは。
私は正社員をしているアラフォー女性です。私のいるグループの派遣さんが続かなくて、次の方はどんな人をオーダーしたらいいのか分からなくなっています。
派遣さんが続きません | キャリア・職場 | 発言小町
どうしても派遣社員が続かない派遣先は一定の割合で存在します。
そのため、ご自身の身の安全のためにも派遣先の職場に合わない・辞めたいと強いストレスを感じるようになってきたら我慢せず、派遣先や派遣元である派遣会社を辞めることを最優先に検討してください。
派遣先は今の職場だけではありません、他の派遣先もあります。また、派遣会社と合わなければ他の派遣会社に登録して活躍の場所を広げることもできます。
派遣に入ったばかりで辞めたいと感じるのも仕方がない理由
厚生労働省「令和3年雇用動向調査結果の概要」の「転職入職者が前職を辞めた理由」によると、前職を辞めた理由として「職場の人間関係が好ましくなかった」「仕事の内容に興味を持てなかった」「労働時間・休日等の労働条件が悪かった」という理由が一定の割合を示しています。
人間関係や労働環境が合わなければ強いストレスがかかるので、その影響で辞めたくなるのは自然なこと。これは正社員・派遣・パートなど問わずすべての労働者の共通の問題と言えます。
派遣社員を当日に即日退職して辞める際の注意点
A.場合によっては今の派遣元から次の仕事の紹介は来ないと覚悟を決める
即日退職、もしくは契約途中での退職は理由がどうであれ派遣会社ならびに派遣先企業へ迷惑を書けてしまうことになります。そのため、場合によっては派遣会社からは二度とお仕事の紹介は受けられない可能性があることは覚悟しておきましょう。
なお、バックレや無断欠勤ではなく、やむを得ない事情であればある程度は考慮されますので今までどおり求人紹介されるでしょう。なお、どうしても仕事が受けられないとなれば他社へ登録すれば良いだけなので問題はありません。
B.派遣のバックレはデメリットが多いので控える
派遣先が嫌だからと感じてもバックレだけはしない方が良いです。
バックレによる退職は法的に認められていないため、辞めた後で万が一にも損害賠償請求や呼び戻しなどのリスクが残ります。
また、仮にこうしたリスクを避けられたとしても派遣会社から次の仕事を用意してもらえなくなる危険性も残ります。そのため、派遣契約途中であれ「辞めたい」と思ったらまずは派遣会社へ電話して連絡し、バックレることなく事前に退職を伝えてから辞めましょう。
なお、派遣社員に正社員の退職届のような形式的な退職書類は存在しないのでメールや電話で伝達することが退職の合図となります。
早期に辞めたい時は電話で
「1.派遣を即日辞めるならメールでも可能(例文付き)」でメールでの退職も可能とお伝えしましたが、電話の方がスピーディーな対応になります。より早く辞めたいときは電話で「派遣は今日で辞めます」と派遣先の職場を退職したい旨を伝えてください。
C.派遣を初日で辞める際は派遣会社に伝達する
派遣の場合、雇用主は派遣先企業ではなく派遣会社になるので、ご自身で派遣先企業の担当者に退職希望を伝える必要は無く雇用主である派遣会社に退職を伝達することになります。
そのため、派遣会社が退職を認めてくれれば初日で辞めることも可能です。
なお「派遣を即日で辞めることは原則として難しい理由」でもお伝えしたように原則として急な退職は認められないことが多いので、「例外的に可能な派遣を即日辞める方法と条件」を参考に退職できる条件を探っていきましょう。
D.備品は返却する
派遣先の会社で備品(社員証、スマホ、PC、制服など)を受け取っている場合、派遣先もしくは派遣会社に備品を返却しましょう。備品の返却が出来ていないとスムーズに辞めにくくなります。
また、派遣先に私物を残している場合、誤って処分されてトラブルになる可能性がありますので、退職日までにまだ出勤する日があるなら先に私物を持ち帰っておいて後で出社の必要がない状態にしておきましょう。
なお、どうしても私物を回収する時間がない場合、退職後に着払いで送ってもらうように伝達しましょう。中には派遣先に私物を置き忘れた場合は後日派遣会社の営業担当が回収し、後日派遣社員宅に郵送してくれることもありますが、できる限りご自身で回収しておいてください。
E.社会保険料の差額に注意
初日から社会保険に加入している場合、契約途中で辞めると健康保険・厚生年金などの社会保険料は日割り計算ではなく1ヶ月分が徴収されます。
そのため、あまりにも働いた期間が短いと給与がマイナスになることもありますので予めご注意ください。
F.派遣を一日で辞めるとしても損害賠償の可能性は低い
(賠償予定の禁止)
労働基準法第16条
第十六条 使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。
損害賠償ありきの労働契約を結ぶことは法律で禁止されています。そのため、原則として退職することで損害賠償にすることは出来ないので、辞める際にバックレ等なく予め相談して退職を進めていれば損害賠償になる可能性を心配する必要はありません。
また、仮に責任問題になったとしても責任は派遣社員ではなく派遣元の派遣会社側にありますので派遣社員自身が損害賠償による影響を受けることは考えにくいです。
どうしてもの際は退職代行に相談して辞める
- 派遣会社に相談しても辞めさせてもらえない
- 自分から退職を切り出すのが難しい
- でも、今の職場環境には耐えられない
- すぐにでも辞めたい
という状況であれば、労働組合が運営する退職代行サービスに相談して即日で辞めてしまいましょう。
こうした派遣に対する辞めにくさを感じていたとしても退職代行に相談すれば確実に退職が成立します。
退職代行はお手持ちのスマホから電話やLINE(メールでも可)で申込み相談が可能、希望があれば即日から代行業者が動き出してくれます。
代行業者が動き出した瞬間から職場に行くことも連絡する必要も無くなるので、早ければ相談した即日から会社に行かなくても良い状態になれます。(=実質的な即日退職)
具体的には、
- 派遣社員でも確実に辞めることができる
- 派遣会社や派遣先に自分から連絡する必要は無い
- 派遣会社側から退職を拒否されることも無い
などが成立しますので、あなたが代行サービスに支払う代金以上の利用メリットがあります。
そのため、あなたが
- 今の派遣先や派遣会社は合わないので続けられない
- すぐにでも辞めたいのに辞めさせてもらえない
- でも、どうしても辞めたい
という状況であれば労働組合が運営する退職代行サービスの活用をおすすめします。
明日から行きたくない!とまで悩み苦しんでいるなら、もう我慢しないでください。
派遣を明日から行かない状態にできる方法は理解しておこう/まとめ
派遣社員であっても条件を満たせば即日退職は成立できます。その事実を知っておくだけでもいざという時の気持ちの持ちようは変わります。
どうしても派遣先が合わない場合、我慢し続けると気持ちが消耗して追い込まれてしまいます。そうならないためにも、いざという時は派遣をすぐ辞めるという選択肢も見当に入れておきましょう。