試用期間でいじめに遭ったらすぐに退職手続きをした方が良い理由、および早期に退職する際の手順と注意点について解説します。
試用期間でいじめに遭ったら退職を検討した方が良い理由
そもそも違法な職場と断言できる
第五条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
労働契約法 | e-Gov法令検索
労働契約法5条により、職場環境というものは労働者の生命や身体の安全を確保しつつ労働することができることが義務づけられています。
いじめは被害者の心身に影響を及ぼす行為であることから、いじめが起こる職場は労働者の生命や身体の安全を確保できない環境と言えますので「違法な職場」と判断できます。
わざわざ違法な職場に勤務する義務も義理もありません。
職場の人間関係のもつ影響力は軽視できない
厚生労働省「令和3年雇用動向調査結果の概要」の「転職入職者が前職を辞めた理由」によると、前職を辞めた理由として「職場の人間関係が好ましくなかった」という理由が一定の割合を示しています。
人間関係や労働環境が合わなければ辞めたくなるほどの強いストレスがかかる、ということです。
職場環境や人間関係が影響して気持ちが持たなくなりそうなときは以下の記事もご参考になさってください。
我慢するといじめにより体調が崩れてしまう
いまの職場に居続けるのが難しいという状態にも拘わらず我慢して働き続けると強いストレスがかかり続け、その状況が続くとうつ病や適応障害など精神疾患にかかるリスクがあります。
会社は責任をとってくれない
うつや適応障害などの精神疾患にかかると仕事だけではなくその後のご自身の人生やプライベートに影響します。
病気の回復には時間がかかり、勤務が出来なくなるだけでなく、就職活動や社会復帰にも影響します。ですが、ご自身のプライベートを会社が守ってくれることはありません。
そのため、うつや適応障害になる可能性があるなら我慢していまの職場に留まることなく、退職を最優先に動いてください。社会的なダメージを負うリスクを背負ってまで今の会社で我慢する必要はありません。
一番大事なことはご自身の身の安全です。
うつになる前に退職したことが良い理由について詳しくは以下の記事もご参考になさってください。
我慢するより早期退職の方がメリットが大きい
嫌な職場は勤務し続けても基本的にはデメリットしかありません。そのため、早期退職をした方が労働者側にとってメリットが大きいと言えます。
時間が経つほど辞めにくい
そもそも試用期間は会社と労働者、お互いの相性を確認する期間でもあります。そのため、試用期間中の退職であれば会社側もある程度割り切って判断できます。
逆に試用期間を過ぎてしまうと「本腰入れて長く勤務する人だな」という目で見られるので、その状態で辞めようとする方が労働者側としては辞めにくくなります。
早く辞めた方が転職に有利
転職には年齢制限がありますので、退職するなら早い方が条件としては有利になります。
嫌な環境に我慢して居続け、その後のご自身のキャリアをも潰してしまうことが無いよう、本当に我慢できない環境なら早々に辞めた方が良いでしょう。
試用期間中に嫌がらせを受けて退職する際の手順と注意点について詳しくは以下の記事もご参考になさってください。
【体験例】試用期間で辞める人はいる
転職初日でいじめに遭うケース
転職初日から職場いじめ、乗り切る方法を教えてください。
経済的事情で、すぐ転職や、やめるという選択肢はありません。
会社自体は大手だし、それなりに情報をくれる人もいるので、気にせず仕事を進めています。
しかし、承認がいるところではなかなか、ぎゃんぎゃんいわれて進みません。そもそも仕事自体が、やったことのない評価の見えにくい仕事なのですが####・。
Yahoo!知恵袋
試用期間にパワハラやモラハラで退職する方も
特に私の直接の上司(お局)は顕著で戸惑う私を見ては毎日怒鳴っています。モラハラな言動が多くそれが原因で過去に何人もの同じポストの人が辞めていることを知りました。(面接時に確認を取りましたが嘘をつかれていました。)他の方にも相談しましたが、皆直接お局上司と関わる仕事はしない為承知しているが放置している現状です。
Yahoo!知恵袋
現在、試用期間ですが本採用になってもずっとこの環境に耐えられるか?続けるべきか辞退し辞めるべきか悩んでいます。
試用期間にパワハラを受けました。
また誹謗中傷も含まれており、悪質だと感じております
メールで証拠は残っております。
退職は希望すれば叶いそうなのですが、パワハラが原因で退職するので、会社都合であると考えおります。その場合雇用保険も半年経っておらず、申請ができず、
Yahoo!知恵袋
再就職先を探さなければいけないのですが、会社か保険など
補助は出ないのでしょうか?
パワハラ慰謝料等も難しいのでしょうか?
【結論】試用期間での嫌がらせ問題は少なくない
ここでの事例だけでなく「試用期間 いじめ」「試用期間 退職」などで検索してもすぐにわかりますが、残念なことではあれど試用期間中の嫌がらせ問題は少なくありません。
その為、仕事とは関係の無いことで仕事に影響が出てしまい、せっかく入社したにもかかわらず早期退職をする方も多くいます。
人間関係ですのでどうしても相性があります。合わない人は我慢しても合いませんので、いざいじめに直面した際は「残念だけどたまたま悪い会社に遭ってしまった。事故のようなもの」と割り切って新しい環境を探した方が良いでしょう。
試用期間で無理と感じて退職する際の注意点
【重要】試用期間での退職は成立する
試用期間だからといって特別な退職条件があるわけではなく、試用期間中であっても退職の条件は正社員と変わりありません。
その為、就業規則に従って退職手続きをする、もしくは民法第627条に従って退職処理をすることになりますが、いずれの場合であっても試用期間中での退職は成立します。
【参考】民法第627条
第六百二十七条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
民法第627条
民法第627条により退職の自由は労働者の権利として定められています。
仮に会社から引き止められたとしても会社には強制力はないので、退職が出来ないということはありません。
雇用先によっては特殊な雇用契約書を結んでいる・特殊な就業規則になっている、などの可能性もありますが就業規則よりも法律が優先されますので退職の意思を伝えれば必ず退職が成立します。
バックレは避けた方が良い理由
試用期間だからといってバックレによる退職は認められていません。
バックレによる退職を行うと「違法行為」となり労働者に対して損害賠償請求や懲戒解雇を与えられる危険があります。
中でも懲戒解雇になると転職活動時に相手先に伝えなければ経歴詐称になるので必ず伝える必要があります。
つまり、懲戒解雇になるとその事実が必ず転職先にはバレますので転職活動においてご自身の印象が悪くなり不利益しかありません。
辞めるなら法に則って確実に・安全に辞めましょう。法に基づかない即日退職行為だけは控えた方が良いです。
必要以上に反応しない
いじめの加害者側はほぼ感情論で対応していることが多いですから真面目に対応しても成立しません。むしろ相手の気持ちを逆なでしてしまいます。
必要以上に被害を受けないためにも基本的には無視して退職日までやり過ごした方が良いです。
相手側の解雇要求には屈する必要はない
第二十一条 前条の規定は、左の各号の一に該当する労働者については適用しない。但し、第一号に該当する者が一箇月を超えて引き続き使用されるに至つた場合、第二号若しくは第三号に該当する者が所定の期間を超えて引き続き使用されるに至つた場合又は第四号に該当する者が十四日を超えて引き続き使用されるに至つた場合においては、この限りでない。
労働基準法第21条
一 日日雇い入れられる者
二 二箇月以内の期間を定めて使用される者
三 季節的業務に四箇月以内の期間を定めて使用される者
四 試の使用期間中の者
いじめの延長で退職勧奨や解雇要求をしてくる職場もあります。
確かに労働基準法第21条により特例として試用期間開始から14日以内であれば会社側は労働者側を解雇することが可能ですが、会社側による感情的な解雇は認められません。
(解雇)
労働契約法第16条
第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
解雇は労働契約法第16条に基づいて「客観的に合理的な理由」「社会通念上相当であると認められる理由」が無ければ認められませんので、感情的にいじめや嫌がらせの一環として解雇要求をしてきたとしても正当性が無いので無効。
相手の要求に従う必要はありません。
退職理由は一身上の都合で良い
原則として退職理由を用意する必要は法律では定められていません。そのため、退職理由を言わなくとも退職はできますし、言う場合は必ずしも本音で退職理由を伝える必要もありません。極論ですが退職理由が嘘であっても問題はありません。
どうしても退職理由を伝える必要がある場合、且つ伝え方が難しいと感じた時は「一身上の都合」と伝えるだけで問題はありません。
退職届は用意した方が良い
退職時は口頭で伝えることもできますが、中には「言った・言わない」とうやむやにされる可能性もあるため、証拠として残した方が確実。そのため、退職届という形にして退職する旨を会社側に伝えましょう。
退職届を受け取ってもらえない場合
事情があり退職届を直接渡すことが出来ない、もしくは相談したのに受け取ってもらえない場合は配達記録付き内容証明郵便で退職届を郵送してください。
会社側に退職届が届けられたことが証明できるため退職の意思を伝えた証拠になります。
また他にも
- 退職の旨を記載したメールを送る
- 録音しながら口頭で伝える
等の手段を用いて退職の意思(解約の申入れ)を伝えるのも有効です。
口頭で伝えることもできますが、中には「言った・言わない」とうやむやにされる可能性もあるため、退職届をはじめとして何かしらの証拠を残して伝えた方が確実です。
なお、会社側が退職拒否をしてきた場合「在職強要」となり違法行為に該当しますので会社の要請を受諾する必要はありません。詳しくは以下の記事もご参考になさってください。
給与は請求できる
(賃金の支払)
労働基準法第24条
第二十四条 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。
② 賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。ただし、臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるもので厚生労働省令で定める賃金(第八十九条において「臨時の賃金等」という。)については、この限りでない。
労働基準法第24条では、賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない、と規定されています。 従って、働いた分はその全額が支給されなければなりません。
よって、試用期間中での退職とはいえ会社が未払いをして良いことにはならず、仮に支払が無いときは給与を会社側に請求していただいても何も問題ありません。
備品は返却する
スマホ、PC、制服、社章など会社から借りている備品はかならず返却してください。返却しないとあとでアレコレ言われる可能性があるので綺麗に辞めにくくなります。
直接渡しにいくか、それが難しい時は備品をまとめて会社に郵送すれば問題ありません。
私物は回収しておく
私物が残っていると会社側が誤って破棄してしまう可能性がありますので、辞める前に私物は持ち帰っておきましょう。
どうしても残ってしまう場合は着払いの郵送で送ってもらうよう会社側に伝えてください。
【注意】労働基準監督署は指導まで
労働問題に対しては労働基準監督署に相談という手段もあり、相談内容をもとに労働基準法違反と認められた場合、会社へ指導や是正勧告をしてもらうことが出来ます。
ただし、労働基準監督署はその立場からあくまで指導や是正勧告となり、個人のトラブル解決をかならず保証してくれるわけではありません。また、相談するにも用意する資料が多岐に渡ります。
そのため、
- 指導を受けたが一向に是正されない
- 指導を受けたとしても環境が変わるとは思えない・期待できない
- 労働基準監督署に用意する資料を集めるのが大変
という方は退職を検討した方が良いでしょう。
確実に早期で辞める方法
会社側からの解雇は別として、労働者側による判断で使用期間中に意図的に即日退職をしたい場合は以下の例外条件のいずれかであれば成立します。
1.やむを得ない理由による合意退職
(やむを得ない事由による雇用の解除)
民法第628条
第六百二十八条 当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。
民法第628条より、やむを得ない事由が発生した場合は会社と労働者、双方の合意に基づき即日退職が成立します。
やむを得ない事由の例としては怪我・病気、家族の介護、出産などによりどうしても勤務が出来ない場合が該当します。
会社の規定に則って辞めない方が良い
会社の規定は「辞める3ヶ月前に申告して~、」といった類の内容が多いですが、いじめを受けているのであればそんな長期間を我慢し続けるのは危険なだけ。
- いじめにより勤務が難しい
- 体調不良で勤務の継続が出来ない
など、今の職場で働き続けることが出来ない旨を伝えて、会社との合意を得られればすぐに辞めてしまいましょう。
2.ハラスメント被害を受けた場合
第五条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
労働契約法 | e-Gov法令検索
ハラスメントは労働者の心と体の安全に影響がある行為であり、ハラスメントが起こる職場ということは労働契約法5条で定められた使用者である会社側が労働者の生命、身体などの安全を確保しつつ労働することができる環境を用意できていない職場、となります。
つまり、労働契約法5条に反している状況(違法な状況)ということです。
加えて、ハラスメントはハラスメント防止法(正式名称:改正労働施策総合推進法)違反にも該当します。
いずれの場合でも法律に反した状況であることに違いは無いので労働者側が我慢して会社に居続ける理由はありません。会社側に対して「身の安全が保障されないため」と伝えてご自身の退職処理を進めましょう。
ハラスメントに対する退職について詳しくは以下の記事もご参考になさってください。
3.どうしてもの際は退職代行に相談する
- 自分で退職を切り出すのが難しい
- 退職相談をしたのに辞めさせてくれない
- でも、どうしても辞めたい
などのご状況であれば労働組合が運営する退職代行サービスに相談して辞めてしまいましょう。
確実に退職が成立します。
退職代行はお手持ちのスマホから電話やLINE(メールでも可)か相談が可能。希望があれば相談したその日から代行業者が動き出してくれます。
代行業者が動き出した瞬間からあなたは職場に行くことも連絡する必要も無くなるので、早ければ相談した即日から会社に行かなくても良い状態になれます。
具体的には、
- 確実に退職が成立する
- 法律に則って退職処理するので法的なトラブルがない
- 自分で対応する必要が無いので退職にまつわるストレスが無い
等があります。
そのため、あなたが
- 自分で退職を切り出すのが難しい
- 退職相談をしたのに辞めさせてくれない
- でも、どうしても辞めたい
という状況であれば労働組合が運営する退職代行サービスに相談して辞めてしまいましょう。
まとめ
入社早々いじめや嫌がらせを受けたら、それはその会社の社風です。
社風がいきなり変わることはありません。そのため、試用期間中にいじめに遭った場合、仮に我慢して勤務し続けてもいじめや嫌がらせといった状況は続きますし、その後に劇的に改善される可能性は現実的とは言えません。
「合わない社風の会社に運悪く入ってしまった」と割り切っていただき、新しい職場・新しいキャリア形成に切り替えていった方が良いでしょう。