パワハラに対して即日退職が成立する理由、手順を解説します。
- パワハラに対してもう我慢が出来ない
- トラブル無くすぐにでも今の職場から離れるにはどうすればいいのか?
と悩んでいる方のご参考にしていただければ幸いです。
パワハラを受けていなら即日退職が成立する理由
パワハラを受けている場合、問題無く即日退職が成立します。
パワハラはハラスメント防止法、および労働契約法5条に違反した違法行為となりますが、違法行為を始めとして会社側に「非」が認められる場合は即日退職が成立します。
第五条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
労働契約法 | e-Gov法令検索
パワハラが起こる職場環境は労働者の生命、身体等の安全を確保出来ていないと判断出来るため労働契約法5条違反に該当します。身の安全が確保されていなければ出勤することはできない、と伝えて退職してください。
第六百二十七条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
民法第627条
なお、退職の原則は民法第627条に基づき退職の申し出をしてから最短で2週間となるので「パワハラでも即日は難しいのでは?」と懸念される方もいらっしゃるかもしれませんが、ハラスメント等会社側に「非」があるときは即日退職が認められます。
明日からすぐにでも仕事に行かなくても良くなる方法について詳しくは以下の記事もご参考になさってください。
職場いじめや嫌がらせも同様に即日退職が成立する理由
職場のいじめもパワハラと同様に労働者の生命、身体等の安全を確保出来ていないと判断出来るため労働契約法5条違反となります。
労働者の身の安全を確保できていない会社側に非があるため即日退職してしまいましょう。
いじめの環境が変わることは難しい
いじめはいじめていた人が職場から居なくならない限り環境が改善することはありません。部署異動をして離れるか、それが難しい時は退職をして物理的にその場を離れないことにはいじめは続いてしまいます。
厚生労働省「令和3年雇用動向調査結果の概要」によると、前職を辞めた理由として「職場の人間関係が好ましくなかった」という理由が一定の割合を示していますが、いじめを始めとした職場の人間関係トラブルは多く存在します。
我慢しても改善する可能性は少ないので、異動や退職を願い出て物理的に環境を変えることでご自身の身の安全を守ってください。
なお、客観的に見ていじめがあなたの安全を害するものだと立証させて労働契約法5条に違反した正当性を証明するためにも、いじめの証拠を残しておきましょう。
(立証の例)
- 身体的なトラブルの証拠(殴られた痕、など)
- 精神的なトラブルの証拠(心療内科から診断書を用意してもらう、など)
我慢してもうつ病や適応障害のリスクが増えるだけ
職場環境によるストレスが続くとうつ病や適応障害などの精神疾患にかかるリスクが増えるだけ。仕事のみならず、ご自身のプライベートやその後の人生にも影響が出てしまいます。
会社はあなたの人生まで責任を持ってくれるわけではありません。そのため、ご自身の身を守るためにも職場いじめや嫌がらせがある環境であれば我慢せず退職することを検討してみてください。
うつ病による退職に関して詳しくは以下の記事もご参考になさってください。
トラブル無く即日退職を成立させる手順
退職届を用意する
民法第627条より退職時は解約の申入れが必要になります。
口頭で伝えることもできますが、中には「言った・言わない」とうやむやにされる可能性もあるため、証拠として残した方が確実。そのため、退職届という形にして退職する旨を会社側に伝えましょう。
もしも、
- 退職届を受け取ってもらえない
- 辞めると伝えても認めてくれない
ということがあれば
- 退職届を内容証明郵便で会社に送る
- メールで退職を伝えて履歴を保存しておく
- 録音しながら電話で伝える
などで伝えてください。
相手側にこちらの退職の意思を伝えた証拠を残すことが重要であり、これらの行為を行っていただければ退職の意思を伝えたことが証明出来ます。
正社員が即日退職する場合
正社員と呼ばれる期間が決められていない雇用契約を結んでいる場合は以下の方法で即日退職が成立します。
有給もしくは欠勤を活用する
第三十九条 使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。
労働基準法第三十九条|e-Gov法令検索
民法第627条で退職までに最短でも2週間が必要とされていますが、その期間は必ず勤務していなくてはいけないとは決められていません。
そのため、退職の意思を伝えてからその後の2週間は有給で過ごすことで実質的な即日退職と同じ状況を作ることが出来ます。
なお、有給は労働者の権利として認められており会社はその権利を拒否することはできません。
有給は正社員だけの権利ではなく正社員、派遣、パート問わず条件を満たせば有給という権利が皆一様に発生します。
業種、業態にかかわらず、また、正社員、パートタイム労働者などの区分なく、
有給休暇の付与日数|厚生労働省
一定の要件を満たした全ての労働者に対して、年次有給休暇を与えなければな
りません(労働基準法第39条)。
なお、2週間未満の有給しかない、もしくは有給の権利がまだ無い場合は退職を成立させるまでに休暇の日数が不足してしまうことになります。その際の不足分は「欠勤扱い」にしていただき代用してください。
有給を利用して即日退職することについて詳しくは以下の記事もご参考になさってください。
有給が無い(不足している)場合での辞め方について詳しくは以下の記事もご参考になさってください。
やむを得ない事由による双方の合意
(やむを得ない事由による雇用の解除)
民法第628条
第六百二十八条 当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。
民法第628条より、やむを得ない事由が発生した場合は会社と労働者、双方の合意に基づき即日退職が成立します。
【やむを得ない事由の例】
- 契約外の仕事をさせられる
- 使用者が労働者の生命・身体に危険を及ぼす労働を命じた
- 派遣先の上司からパワハラやモラハラを受けている
- 賃金不払いなどの重要な債務不履行が発生した
- 労働者自身が負傷・疾病・心身の障害などにより就業不能に陥った
- 親や家族の介護が必要になった
- 家族の転勤などにより急な引っ越しが決まった
- 業務内容が法令に違反している
- 両親や子供の病気、または介護など
パワハラによって精神的にまいってしまい勤務が出来ない状況にあるならば、やむを得ない事由に該当しますので、会社に伝えて即日退職まで進めましょう。
労働条件の相違
(労働条件の明示)
労働基準法第15条
第十五条 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。
② 前項の規定によつて明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。
③ 前項の場合、就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から十四日以内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければならない。
労働基準法第十五条より、労働条件の相違は即時に契約解除(即日退職)が認められています。
入社時に会社からもらった雇用契約書と異なる労働条件・仕事内容であれば、その理由を盾にして即日退職してしまいましょう。
労働条件の相違と退職について詳しくは以下の記事もご参考になさってください。
派遣社員が即日退職する場合
派遣社員や契約社員と呼ばれる期間が決められていなる雇用契約を結んでいる場合は以下の方法で即日退職が成立します。
派遣元に連絡して辞める
派遣契約途中であれ「辞めたい」と思ったらまずは派遣会社へ電話して連絡してください。メールでも構いませんが電話の方がスピーディーな対応になります。
派遣社員に正社員の退職届のような形式的な退職書類は存在しないので、辞めたいときは電話で「派遣は今日で辞めます」と派遣先の職場を退職したい旨を伝えてください。
事情を伝え、理解してもらえれば派遣会社が派遣の打ち切りを進めてくれることもあります。
双方の合意と契約内容の相違
働く期間の定めがある有期雇用派遣であっても、民法628条より「やむを得ない事由」がある場合、もしくは労働基準法第15条にある「労働条件の相違」に該当すれば即日の退職が可能になります。
派遣を即日退職することについて詳しくは以下の記事も併せてご参考になさってください。
勤務期間が1年以上経過している
第百三十七条 期間の定めのある労働契約(一定の事業の完了に必要な期間を定めるものを除き、その期間が一年を超えるものに限る。)を締結した労働者(第十四条第一項各号に規定する労働者を除く。)は、労働基準法の一部を改正する法律(平成十五年法律第百四号)附則第三条に規定する措置が講じられるまでの間、民法第六百二十八条の規定にかかわらず、当該労働契約の期間の初日から一年を経過した日以後においては、その使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができる。
労働基準法137条
派遣会社と有期雇用派遣として契約をしている状況であっても、労働基準法137条より勤務期間が1年以上経過している場合に限り労働者側の希望するタイミングでいつでも退職ができるため即時解約(即日退職)が成立します。つまり、1年を経過していれば「派遣を今日で辞めます」と伝えても法律上は成立します。
ただし、あくまでもこの規定は契約期間が1年を越える場合を想定したものであり、3ヶ月、半年という1年未満の契約を繰り返して累計1年という場合は適用外である点にご注意ください。
パート・バイトがパワハラで即日退職する場合
パワハラでをバイト辞めたいと思っている人は少なくない
パワハラの酷いバイト先を辞めたいです。
パワハラの酷いバイト先を辞めたいです。 – パワハラがより一… – Yahoo!知恵袋
パワハラがより一層ひどくなったのでバイトを辞めたいです。パワハラの内容は、物を投げつけて怒鳴る、店長の自己責任であるのに全てわたしのせいにされたり、怒りの吐け口が全てわたしに向くといったことです。
パートやバイトの方は即日退職する際は雇用形態、具体的には「雇用期間の有無」によって即日退職の仕方が異なります。
- 雇用期間が決められている場合:契約社員と同じ方法
- 雇用期間が決められていない場合:正社員と同じ方法
そのため、退職する前に雇用主にご自身の雇用期間について問い合わせるか、雇用される時に受け取った契約書から雇用期間に関する記述について確認してください。
パートやバイトの方は退職を相談する場所が少なく解決策を見つけ出しにくいことがありますが、ハラスメント被害を受けている場合は勤務先に非があるので泣き寝入りして我慢する必要はありません。
具体的にパートの方が退職を検討される際は以下の記事もご参考になさってください。
他にも雇用形態ごとの辞め方について詳しくは以下の記事もご参考になさってください
退職時の注意点
バックレは避ける
正社員の場合。民法第627条があるため一部の条件を除き原則として即日退職は認められていません。また派遣や契約社員も雇用期間が最初から定められているので指定の期間までは原則として勤め上げることが定められています。そのため、バックレによる即日退職を行うと「違法行為」となり労働者に対して損害賠償請求や懲戒解雇を与えられる危険があります。
中でも懲戒解雇になると以下の問題が起こります。
本来貰えるはずだった退職金の一部または全部不支給
転職時にマイナスな印象を与えることになる
また、懲戒解雇になると転職活動時に相手先に伝えなければ経歴詐称になるので必ず伝える必要があります。つまり、懲戒解雇になるとその事実が必ず転職先にはバレますので転職活動においてご自身の印象が悪くなり不利益しかありません。
以上のことからバックレは退職行為に対するリターンとリスクを加味した際にリスクが大きすぎて帳尻が合わない行為と言えます。そのため、法に基づかない即日退職行為だけは控えた方が良いです。辞めるなら法に則って確実に・安全に辞めましょう。
パワハラやいじめの証拠を残す
ハラスメントの証拠を残しておくことで、万が一会社側から反論されたときでも対抗ができます。
- 発言の録音データ
- 現場の写真・動画
- メール、LINE、SMS、SNSでのやり取り
- 職場の同僚の証言
- 被害者が作成した業務日誌、日記
などは証拠となります。
なお、ハラスメントかどうか?の定義としては以下をご参考になさってください。
職場におけるパワーハラスメントは、職場において行われる
ハラスメントパンフレット|厚生労働省
① 優越的な関係を背景とした言動であって、
② 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
③ 労働者の就業環境が害されるもの
であり、①から③までの3つの要素を全て満たすものをいいます。
原則としてはハラスメントにより即日退職は成立させることが出来ますが、ハラスメントの立証が難しい場合は以下の方法で退職を成立させてください。
うつ病であれば我慢せず退職を優先する
うつ病や適応障害であれば辞めることを優先してください。我慢すれば何とかなる問題ではありません。
また、精神的な問題は周囲から理解されにくいので心療内科を受診して診断書を用意してもらい、病気であることを証明しましょう。
診断書を理由に退職や休職を通すことが可能です。
心療内科で診断書を用意してもらうと即日退職が成立しやすくなる
ハラスメントの影響で精神疾患を抱えた場合、心療内科で診断書を用意してもらうとハラスメント証明をしやすくなります。
また、診断書を用意してもらうことで客観的に勤務が出来ないことを証明できるため民法第628条によるやむを得ない事由に該当して即日退職を認めてもらいやすくなります。
なお、診断書は心療内科で用意してもらえますが自分から要請する必要があります。そのため、心療内科で診てもらう際は先生に診断書を書いてもらうよう直接伝えてください。
また、本件に関しては正社員のみならず派遣やパート、バイトなどどの契約形態であっても同様に扱われます。
強制労働は法で禁止されている
(強制労働の禁止)
労働基準法 第5条
第五条 使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によつて、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。
労働基準法第5条より、使用者(会社側)は労働者の意思に反した労働を強制してはいけないと定められています。
そのため、退職を伝えたにもかかわらず認めないことは労働基準法第5条違反に該当するので無効。会社側には強制的に働かせる権利はありません。
更に民法第627条による退職の権利もあるため、退職手続きを申請したにもかかわらず引き止め(在職強要)をされたとしても会社側の要請に従う必要はありません。
辞めさせてくれないトラブルについて詳しくは以下の記事もご参考になさってください。
損害賠償請求は原則、気にする必要は無い
(賠償予定の禁止)
労働基準法第16条
第十六条 使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。
原則として損害賠償ありきの労働契約を結ぶことは法律で禁止されています。そのため、退職したことに対して損害賠償を義務付けることは出来ません。
損害賠償は第三者が見ても辞めることで会社に多大な悪影響を残したときに検討されます。
例えば退職時に多くの同僚を一緒に引き抜いて辞めた、退職時に会社のインサイダー情報を公開した、などが該当しますが、ただ退職するだけであれば会社に多大な悪影響を残したとは認められにくいので即日退職により損害賠償になる可能性は極めて低いと言えます。そのため、原則として退職時の損害賠償は気にする必要はありません。
損害賠償請求をしたい場合は弁護士に相談を
もしパワハラに対してどうしても許せない状況にある場合、依頼料がかかりますが弁護士に相談して損害賠償請求をしましょう。証拠を揃えて弁護士を介して相手(会社側)に対して訴えることになります。
昨今、レピュテーションリスク(企業やブランドに対するネガティブな評判が広まるリスクのこと)の重要性が広がり始めているため企業側も下手な動きをとることが出来ません。
こちらに非が無く、相手側(会社側)に明らかな非がある場合は訴訟での勝算が見えてくるので弁護士と相談の元、対処を検討してみてください。
引き継ぎは義務ではない
引き継ぎは法律で定められた規則や義務ではなく、お世話になった会社に対する気持ちとして行う業務です。
よって、引き継ぎを拒否することもできますし引き継ぎをしないことで罰則が発生することもありません。
引き継ぎができる状況なら対応して構いませんが、ハラスメントで追い詰められているような状況であれば義理や義務感を感じて対応する必要はありません。
備品を返却する
スマホ、PC、制服など会社から借りている備品はかならず返却してください。返却しないとあとでアレコレ言われる可能性があるので綺麗に辞めにくくなります。
直接渡しにいくか、それが難しい時は備品をまとめて会社に郵送すれば問題ありません。
私物は持ち帰っておく
辞める前に会社に残した私物は持ち帰った方が無難です。
残っていると会社側が誤って破棄してしまう可能性がありますので、事前に私物だけは確保しておきましょう。
自分だけの文具、マグカップ、社内で使うブランケットやカーディガン類、スリッパ、リップクリームなど小物類、この辺りは会社で利用される私物で多いものといえます。
どうしてもの時は退職代行に相談して辞める
- 自分で退職を切り出すのが難しい
- でも、どうしても辞めたい
という場合は労働組合が運営する退職代行サポートに相談して辞めてしまいましょう。
正社員・契約社員・バイト・パートなど、雇用形態を問わず確実に退職が成立します。
退職代行はお手持ちのスマホからLINEで申込み相談が可能、希望があれば即日から代行業者が動き出してくれます。
代行業者が動き出した瞬間から職場に行くことも連絡する必要も無くなるので、早ければ相談した即日から会社に行かなくても良い状態になれます。
退職代行の具体的なメリットとしては、
- 確実に退職が成立する
- 法律に則って退職処理するので法的な問題やトラブルがない
- 自分で対応する必要が無いので退職にまつわるストレスが無い
などがあります。
そのため、もしあなたが
- 辞めたいけど言い出しにくい
- でも、どうしても辞めたい
等の場合は迷わず労働組合が運営する退職代行サービスを利用することをおすすめします。
まとめ
パワハラやいじめは会社の「非」にであり、法に反した行為に該当するので我慢して泣き寝入りする必要はありません。
ご自身の身の安全が最優先です。
ご自身で退職処理ができる方はご自身で、それが難しい方は労働組合が運営する退職代行に相談して退職処理を進めてくださいね。