工場が人手不足の状況でもすぐに辞める際の注意点と退職の切り出し方について解説します。
工場を人手不足の状態で辞める際の注意点
退職の意思をハッキリさせる
「辞めようか悩んでます」等と伝えると、相手は強引にでも説得してきます。また、相手から「でもね、」などと反論され、その内容に対してこちら側が明確なNOを示さない場合も時間をかけて退職を説得してきます。
その為、辞める際はハッキリとNOを突きつけ、引き止めても意味が無いことを相手に理解してもらう姿勢を崩してはいけません。
「辞めることにしました」「これまでありがとうございました」「決心は変わりません」などを伝え続け、明確に退職は決定事項である旨を相手に伝えましょう。
人手不足は理由にならない
人手不足を訴えて引き留められることがあります。
- 人手不足だから辞められると困る
- 人手不足だから後任が来るまで待ってほしい
- 人手不足なのに辞めるだなんて、みんなに迷惑だと思わないのか!?
- 後任が居ないから引き継げないので認められない
などと言われることがありますが、人手不足はあなたの責任ではありません。
会社の人事・採用の問題であり、問題を先延ばしにしてきた会社の責任です。
そのため、人手不足があったとしても労働者であるあなたを引き留めて良い理由にはならないので会社の要請には義務や効力があるわけでは無いので応じる必要はありません。
人手不足時の辞め方については以下もご参考になさってください。
過度の引き止めは強制労働に該当する
(強制労働の禁止)
労働基準法 第5条
第五条 使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によつて、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。
労働基準法第5条より、使用者(会社側)は労働者の意思に反した労働を強制してはいけないと定められています。
そのため、退職を伝えたにもかかわらず認めないことは労働基準法第5条違反に該当するので無効。会社側には強制的に働かせる権利はありません。
そのため、退職手続きを申請したにもかかわらず引き止め(在職強要)をされたとしても会社側の要請に従う必要はありません。
退職時の強制労働について詳しくは以下の記事もご参考になさってください。
バックレは辞めた方が良い
バックレや無断欠勤による退職は認められていません。
その為、バックレを行うと「違法行為」となり労働者に対して損害賠償請求や懲戒解雇を与えられる危険があります。
中でも懲戒解雇になると以下の問題が起こります。
- 本来貰えるはずだった退職金の一部または全部不支給
- 転職時にマイナスな印象を与えることになる
また、懲戒解雇になると就職活動時に相手先に伝えなければ経歴詐称になるので必ず伝える必要があります。
つまり、懲戒解雇になるとその事実が必ず転職先にはバレますので就職活動においてご自身の印象が悪くなり不利益しかありません。
その為、辞める際はリスクが大きいバックレではなく、法に則って確実に・安全に辞めましょう。
工場を辞める人は多い
【大事】労働環境は退職に影響する
厚生労働省「令和3年雇用動向調査結果の概要」の「転職入職者が前職を辞めた理由」によると、前職を辞めた理由として「職場の人間関係が好ましくなかった」「仕事の内容に興味を持てなかった」「労働時間・休日等の労働条件が悪かった」という理由が一定の割合を示しています。
人間関係や労働環境がハードだと辞めたくなるのは自然なこと、ということです。
職場環境や人間関係が影響して気持ちが持たなくなりそうなときは以下の記事もご参考になさってください。
退職する際の注意点
直近の上司から伝える
退職を申し出る場合、まずは直属の上司へで伝えるのがマナー。
上司以外の方から伝えると万が一にも別の方から上司にバレてしまうと心証が悪くなり、退職がスムーズに進まなくなる可能性があります。
退職理由は一身上の都合で良い
原則として法的には退職理由を用意する必要はありません。そのため、言わなくとも退職はできますし、言う場合は必ずしも本音で退職理由を伝える必要もありません。極論ですが退職理由が嘘であっても問題はありません。
どうしても退職理由を伝える必要がある場合は「一身上の都合」でも構いません。
退職理由の伝え方例文
○○班長
お疲れ様です。
(自分の名前)です。
お時間とっていただきありがとうございます。
突然のことで大変申し訳ありませんが、退職したいと考えております。
かねてより〇〇に興味があり、将来を考えた時に今挑戦しないと後悔するという思いに至り退職を決意しました。
大変身勝手ではありますが、〇月○日をもって退職させていただけないでしょうか。
退職時の伝え方について詳しくは以下の記事もご参考になさってください。
有給を利用する
第三十九条 使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。
労働基準法第三十九条|e-Gov法令検索
有給は労働者の権利として認められており会社はその権利を拒否することはできません。よって、有給が残っている場合は必ず退職前に有給を消化してしまいましょう。
退職に対して有給消化を適応させれば実質的な即日退職かそれに近いことが可能です。
有給は退職してしまうと効力が消滅してしまうので、そうならないよう有給の権利が残っている際は退職前に消化してしまいましょう。
退職時に有給が使えないトラブルへの対処法について詳しくは以下の記事もご参考になさってください。
私物の回収
私物が残っていると会社側が誤って破棄してしまう可能性がありますので、辞める前に私物は持ち帰っておきましょう。
どうしても残ってしまう場合は着払いの郵送で送ってもらうよう会社側に伝えてください。
備品の返却
スマホ、PC、制服、社章など会社から借りている備品はかならず返却してください。返却しないとあとでアレコレ言われる可能性があるので綺麗に辞めにくくなります。
直接渡しにいくか、それが難しい時は備品をまとめて会社に郵送すれば問題ありません。
退職後の書類の確認
- 雇用保険被保険者証
- 年金手帳
- 源泉徴収票
- 離職票
- 扶養控除等(異動)申告書
- 健康保険被扶養者(異動)届
- 給与振込先届
- 健康診断書
など、退職時に必要な書類を会社から郵送してもらうよう会社側に伝えましょう。退職後の失業手当の申請、次の会社に入社する際の手続きなどで必要になります。
退職者に対しては退職後に会社側から書類を送ってもらうのが一般的なので過度に心配する必要はありませんが、退職代行利用時に代行業者に対して「辞めた後に必要書類を送るように伝えておいてください。」などと合わせて伝達しておくと確実です。
退職の方法
1.社内規定に沿って辞める場合
職場の規定を元に退職の申し出をしてください。辞める2ヶ月前に伝える、3ヶ月前に伝える、など職場の特有の規定があるかと思いますので原則は社内規定に従って退職手続きを進めましょう。
退職届を用意する
なお、退職時は「退職願」ではなく『退職届』を会社側に渡してください。
退職願と退職届の違いを理解しておこう
退職願は辞表の意思表明をあらわすもので、雇用者側の受理・承諾を求めます。雇用者との合意が必要となるのでこれを雇用者に受理・承諾してもらわなければ退職の効果は生じません。
退職届は労働契約の一方的な解約の意思、辞職の意思表示を表すもので、出してしまうと取り下げはできません。退職届の場合、雇用者に伝えたら雇用者の受理・承諾がなくとも、2週間の経過により、退職の効果が生じます。
退職願はそれ自身に法的な効力が生じないので退職願いが受理されないこと自体には違法性がありません。よって、退職を成立させたいときは「退職届」を会社側に提出してください。退職届であれば退職の意思を示したことになるので退職が成立します。
2.民法第627条を元に2週間で辞めることも可能
第六百二十七条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
民法第627条
民法第627条により退職の自由は労働者の権利として定められています。
仮に会社から引き止められたとしても会社には強制力はないので、退職が出来ないということはありません。
雇用先によっては特殊な雇用契約書を結んでいる・特殊な就業規則になっている(辞める半年前に申告する)、などの可能性もありますが就業規則よりも法律が優先されますので退職の意思を伝えれば必ず退職が成立します。
- どうしても今の職場に居続けるのが難しい
というご状況であれば法に則って「退職届を提出する」という具体的な退職の意思を示して民法第627条を元に2週間で辞めてしまいましょう。
退職届を受け取ってもらえない場合
事情があり退職届を直接渡すことが出来ない、もしくは相談したのに受け取ってもらえない場合は配達記録付き内容証明郵便で退職届を郵送してください。
会社側に退職届が届けられたことが証明できるため退職の意思を伝えた証拠になります。
また他にも
- 退職の旨を記載したメールを送る
- 録音しながら口頭で伝える
等の手段を用いて退職の意思(解約の申入れ)を伝えるのも有効です。
口頭で伝えることもできますが、中には「言った・言わない」とうやむやにされる可能性もあるため、退職届をはじめとして何かしらの証拠を残して伝えた方が確実です。
なお、会社側が退職拒否をしてきた場合「在職強要」となり違法行為に該当しますので会社の要請を受諾する必要はありません。詳しくは以下の記事もご参考になさってください。
3.合意退職ならすぐに辞めることが可能
(やむを得ない事由による雇用の解除)
民法第628条
第六百二十八条 当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。
民法第628条より、やむを得ない事由が発生した場合は会社と労働者、双方の合意に基づき即日退職が成立します。
なお、やむを得ない事由としては怪我・病気、家族の介護、出産などによりどうしても勤務が出来ない場合が該当します。
4.ハラスメント被害を受けている場合は即日退職
第五条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
労働契約法 | e-Gov法令検索
ハラスメントは労働者の心と体の安全に影響がある行為であり、ハラスメントが起こる職場ということは労働契約法5条で定められた使用者である会社側が労働者の生命、身体などの安全を確保しつつ労働することができる環境を用意できていない職場、となります。つまり、労働契約法5条に反している状況(違法な状況)ということです。
加えて、ハラスメントはハラスメント防止法(正式名称:改正労働施策総合推進法)違反にも該当します。
いずれの場合でも法律に反した状況であることに違いは無いので、会社側には「身の安全が保障されないため」と伝えてご自身の退職処理を進めましょう。
ハラスメント被害による退職について詳しくは以下の記事もご参考になさってください。
5.どうしてもの際は退職代行に相談する
- 退職を自分で切り出すのは難しい
- 退職相談をしたのに辞めさせてくれない
- でも、どうしても辞めたい
という方であれば労働組合が運営する退職代行サービスに相談して辞めてしまいましょう。
確実に退職が成立します。
退職代行はお手持ちのスマホから電話やLINE(メールでも可)か相談が可能。希望があれば相談したその日から代行業者が動き出してくれます。
代行業者が動き出した瞬間からあなたは職場に行くことも連絡する必要も無くなるので、早ければ相談した即日から会社に行かなくても良い状態になれます。
具体的には、
- 確実に退職が成立する
- 法律に則って退職処理するので法的なトラブルがない
- 自分で対応する必要が無いので退職にまつわるストレスが無い
等があり、希望者には有給消化や未払いの交渉もしてくれますので退職代行費を支払う以上の利用メリットがあります。
そのため、あなたが
- 退職を自分で切り出すのは難しい
- 退職相談をしたのに辞めさせてくれない
- でも、どうしても辞めたい
という状況であれば労働組合が運営する退職代行サービスに相談して辞めてしまいましょう。
まとめ
工場勤務は仕事の内容や人間関係の問題から合う合わないがわかれやすい傾向にあります。
無理に辞める必要はありませんが、「どうしても耐えられない」という状況であれば我慢し続けるとご自身の心身がボロボロになるだけです。
どうしてもの際はご自身の身を守るためにも退職という選択肢を用意しておきましょう。