雇用契約書を出す前に辞めることは可能だが労働条件次第で辞め方が異なる

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雇用契約書を出す前に職場を辞めることが可能な理由、及び辞める際の考え方・注意点について解説します。

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雇用契約書を出す前に辞めることは可能

雇用契約書の作成義務に関して言及している法律は無いので雇用契約書の用意は必須では無く、無いことで違法には該当しません。

(労働契約の成立)
第六条 労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。

労働契約法第6条

労働契約法第6条では「労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて労働者及び使用者が合意することによって成立する」と定められています。

その為、雇用契約書がなく口約束や口頭での伝達であっても会社側と労働者側の双方が合意していれば雇用契約は成立します。

以上のことから、人によっては「雇用契約書を出す前」という雇用契約書が会社と労働者の間に介在していない状態になることがあります。

労働条件通知書を確認する

なお、雇用時には雇用契約書とは別に労働条件通知書があり、労働条件通知書の用意は必須とされています。その為、雇用契約書を出す前段階であっても勤務条件は労働条件通知書に記されていることになります。

雇用契約書がなくとも労働条件通知書があれば労働条件通知書の内容を元に退職の条件を定義できます。そのため、雇用契約書を出す前に辞めることは可能です。

【補足】

労働条件通知書を交付していない、もしくは必要事項を伝達していない場合、従業員側から訴えられる可能性もあります。なお、労働条件通知書の交付は雇用形態にかかわらず行わう必要があります。

雇用契約書の提出前の退職は労働条件通知書の内容を踏まえて決める

労働条件通知書は事業主が労働者と雇用契約を結ぶ際に交付する書類になりますが、以下の項目が網羅されています。

  • 労働契約の期間
  • 就業場所
  • 業務内容
  • 始業/終業時刻
  • 休憩時間
  • 休日/休暇
  • 賃金の計算方法/締日支払日
  • 解雇を含む退職に関する事項

「労働契約の期間」や「解雇を含む退職に関する事項」によって辞め方が異なります。

一般的に正社員として雇用される場合は労働契約が期間の定めがない雇用となりますが、この場合は辞め方が以下になります。

  • 退職を伝えてから2週間後に正式に退職が成立(民法627条、その間は有給や欠勤で会社に行かない状態でも可)
  • やむを得ない事由を会社に伝えて退職(病気や怪我、家族の問題などで働くことが出来ないなどの場合)
  • 労働条件の相違による即日退職(労働基準法第15条)
  • ハラスメント被害による退職(労働契約法5条、パワハラ防止対策義務化)

一方、派遣や契約社員という期間の定めのある雇用(有期雇用契約)の場合、辞め方が以下になります。

  • 勤務期間が1年以上経過していれば労働者側の希望で即日退職が可能(労働基準法137条)
  • やむを得ない事由を会社に伝えて退職(病気や怪我、家族の問題などで働くことが出来ないなどの場合)
  • 労働条件の相違による即日退職(労働基準法第15条)
  • ハラスメント被害による退職(労働契約法5条、パワハラ防止対策義務化)

パートやバイトが雇用契約書のサイン前に辞退する場合

パートやバイトの場合は契約内容によります。具体的には契約内容に労働契約が期間の定めがあるか無いか?によります。

期間の定めが無い場合は正社員の辞め方を、期間の定めがある場合は派遣・契約社員の辞め方となりますので、労働条件通知書の内容を踏まえて判断しましょう。

うちやま
うちやま

雇用形態ごとの辞め方について詳しくは以下の記事もご参考になさってください。

退職時の注意点

雇用契約書を出す前に辞める場合でも給料は発生する

雇用契約書を出す前に辞めることは可能」でお伝えしたように、雇用契約書は必須では無いので雇用契約書を出す前に勤務していたとしても勤務実態は認められます。

その為、雇用契約書が無くとも働き始めた時点で雇用契約は成立し、働いた分に対しては会社が賃金を支払う義務が出てきます。

(賃金の支払)
第二十四条 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。
② 賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。ただし、臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるもので厚生労働省令で定める賃金(第八十九条において「臨時の賃金等」という。)については、この限りでない。

労働基準法第24条

労働基準法第24条では、賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない、と規定されています。 従って、働いた分はその全額が支給されなければなりません。

よって、雇用契約書を出す前に辞めたとしても給与を会社側に請求することは何も問題ありません。

損害賠償は原則として気にする必要は無い

(賠償予定の禁止)
第十六条 使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。

労働基準法第16条

原則として損害賠償ありきの労働契約を結ぶことは法律で禁止されています。そのため、退職したことに対して損害賠償を義務付けることは出来ません。

契約書関係がうやむやな状態だと判断し辛い面もありますが、それに乗じて仮に「辞めたら賠償金!」などと言われても従う必要はありません。

契約書を書いていないとはいえバックレは避ける

雇用契約書がないとはいえバックレだけは避けてください。

バイトやパートの場合

(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

民法709条

バックレを行うと不当行為(民法709条)に該当するので会社側から損害賠償請求をすることが可能になります。また、制服やスマホなど会社からの貸与物を返却しないと実費請求されたり、業務上横領罪を問われる可能性もあります。

正社員の場合

民法第627条があるため、一部の条件を除き原則として即日退職は認められていません。そのため、バックレによる即日退職を行うと「違法行為」となり労働者に対して損害賠償請求や懲戒解雇を与えられる危険があります。

中でも懲戒解雇になると以下の問題が起こります。

  • 本来貰えるはずだった退職金の一部または全部不支給
  • 転職時にマイナスな印象を与えることになる

また、懲戒解雇になると転職活動時に相手先に伝えなければ経歴詐称になるので必ず伝える必要があります。つまり、懲戒解雇になるとその事実が必ず転職先にはバレますので転職活動においてご自身の印象が悪くなり不利益しかありません。

他にも嫌がらせや呼び戻しなどの可能性もあり、バックレは退職行為に対するリターンとリスクを加味した際にリスクが大きすぎて帳尻が合わない行為と言えます。そのため、法に基づかない即日退職行為だけは控えた方が良いです。辞めるなら法に則って確実に・安全に辞めましょう。

辞めさせてくれない時は退職代行に相談する

前提として退職は労働者の権利なので辞めること自体は可能です。辞められないということはあり得ません。

ですが、雇用契約書が無いことで会社側と労働者側のそれぞれにとって雇用条件の定義が不明確な状況になってしまうと状況が難しくなります。

契約書が無いことで退職条件のやりとりも正確性が無く感情的になることがあり、お互いの言い分がかみ合わずに収集がつかなくなることがあります。

その為、退職を申し出ても素直に辞めさせてくれない時は退職の専門家である労働組合が運営する退職代行サービスに相談して代わりに退職処理を進めてもらいましょう。

代行してもらえれば確実に退職が成立します。

退職代行はお手持ちのスマホから電話やLINE(メールでも可)か相談が可能。希望があれば相談したその日から代行業者が動き出してくれます。

代行業者が動き出した瞬間からあなたは職場に行くことも連絡する必要も無くなるので、早ければ相談した即日から会社に行かなくても良い状態になれます。

具体的には、

  • 確実に退職が成立する
  • 法律に則って退職処理するので法的なトラブルがない
  • 自分で対応する必要が無いので退職にまつわるストレスが無い

等があり、有給消化や未払いの交渉もしてくれますので退職代行費を支払う以上の利用メリットがあります。

そのため、あなたが

  • 切り出したけれども辞めさせてもらえない
  • そもそも自分から退職を切り出すのが難しい
  • でも、どうしても辞めたい

という状況であれば労働組合が運営する退職代行サービスに相談して辞めてしまいましょう。

※自分で退職を切り出すのが難しいという方だけが相談してください
労働組合が相談を受け付け!追加料金もありません



まとめ

法律上は雇用契約書が無くとも契約は成立しますが、雇用契約書が無いといざ辞める・辞めないという話になったときに判断が難しくなります。

原則としては辞めることができますので、ご自身の契約条件を元に退職処理を進めてください。

一方、どうしても自分では会社側を相手に辞める手続きや処理を進めることが難しいと感じたら退職代行に相談してトラブル無く辞めてしまいましょう。

※自分で辞めることができる方は相談する必要はありません
労働組合が相談を受け付け!追加料金もありません




この機体の開発者
スミ入れがんばる
うちやま(内山智明)

新卒で入社したブラック企業で月の残業168時間、気合努力根性の精神論だけで詰められ、簡単に辞めさせてくれない毎日を過ごして退職するまでに苦労した経験がある。現在は株式会社BuildingBlockの代表となり、自身の経験を元に、会社を辞めたいのに辞められない・辞めると言い出しにくい人向けに退職や辞め方に関する情報発信を行う

うちやま(内山智明)をフォローする
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