パワハラの被害を受けて辞める際は「退職届はどのような書き方になるのか?」「退職届を提出する際の注意点はあるのか?」など、パワハラで退職する際の退職届の書き方を例文付きで解説します。
会社からするとパワハラ被害を表沙汰にしたくないために会社都合退職にしないケースも少なくありませんが、そんな状況下においても労働者側が泣き寝入りせずに退職処理を進めるための手順や注意点もあわせて解説していきます。
本記事のまとめ
- 退職届にはパワハラ被害の内容を記載する
- 「一身上の都合」は使わないこと
- 被害内容や診断書など証拠も用意する
- 会社が認めない時はハローワークに相談する
- 対処に悩んだときは労働組合が運営する退職代行への相談がおすすめ
パワハラで退職する際の退職届の例文
【記入例1】
株式会社〇〇
代表取締役〇〇様
令和○年○月○日
(苗字) (名前)
このたび、理由もなく仕事を取り上げられ、働くことができなくなったので退職いたします。
【記入例2】
株式会社〇〇
代表取締役〇〇様
令和○年○月○日
(苗字) (名前)
このたび、周囲の目がある中で必要以上に怒鳴られ続け、耐え難い苦痛を感じたために退職します。
【記入例3】
株式会社〇〇
代表取締役〇〇様
令和○年○月○日
(苗字) (名前)
日頃から理由もなく仕事を取り上げられ言うことが多くなり、その結果働くことができなくなり、会社でも孤立するようになりました。これ以上は上司との良好な関係を築くのが困難だと考え202●年●月●日をもって退職いたします。
【記入例4】
株式会社〇〇
代表取締役〇〇様
令和○年○月○日
(苗字) (名前)
この度、上司のパワハラを原因とした心身不調により勤務の継続が難しいと医師からも診断されました。業務環境の改善もされず、上司との関係構築の復旧、並びに現職場での勤務の継続が難しいと判断しました。そのため、今後の自身のキャリアにも影響すると考えたため、202●年●月●日をもって退職いたします。
このようにパワハラが起こった具体的な事実を記載した上で退職届を用意します。
なお、パワハラを理由に退職する際の退職届の書き方の例としては「抽象的な書き方」と「具体的な書き方」それぞれのパターンがあります。
抽象的に伝える際の書き方の場合
例えば、抽象的な書き方の場合。
- 会社都合によって退職します
- 耐え難い苦痛の為退職します
こうした書き方によってまとめるパターンは多いです。
ただし、抽象的に書く際は後述する「3.診断書を用意する」「4.証拠を残しておく」でもお伝えしているように、パワハラ被害にあった証拠や裏付けを用意しておかなければ客観的にパワハラと証明できないため合わせて用意しておきましょう。
具体的に書く際の書き方の場合
一方で、具体的な書き方の場合は以下になります。
- パワハラが原因で精神疾患を患い、勤務の継続が困難になった
- パワハラを原因とした心身不調により退職いたします
- パワハラにより退職を余儀なくされた
- パワハラにより退職しなければ解雇すると言われたためやめざるを得なかった
- セクハラ被害により精神的に蝕まれた
- セクハラ被害の対応に対して会社が不十分であり勤続が難しくなった
退職届の理由欄に具体的に書く際の例文のポイント
パワハラが原因で自分に被害があったこと、及びその被害を具体的に記述してください。
また、被害の内容を証明できる証拠も併せて用意できる状態にしておきましょう。(被害があった日の詳細を記述したメモや診断書など)
パワハラを言い換えた退職理由の伝え方として
- 退職しなければ給料が○○パーセント減給になると脅された
- 残業が禁止されているのに残業強要されかつ残業代も支給されない
- 理由もなく仕事を取り上げられ、働くことができなくなった
- 必要以上に過度な業務量を割り当てられた(それによって体調壊してしまった)
- 正当な理由もなく会社に残るよう指示され、休日出勤も強要されました
- 上司から言葉の暴力を受けました
- 日常的に私を無視する行為が続き、仕事を続けるのは難しくなりました
- 周囲がいる中で必要以上に大声で怒鳴られ、罵倒され尊厳を傷つけられました
- 物に当たったり、大声で叫ばれたりしたことで勤続が難しくなりました
このように、パワハラやセクハラといった言葉を直接使わず別の言葉に置き換えて伝えることでもパワハラによって辞めたことを伝えることができます。
具体的に受けた被害の内容を言語化することが伝え方のコツとなります。
【コピペOK!】退職届で会社都合にするためのテンプレート
退職届
株式会社〇〇
代表取締役〇〇様
令和○年○月○日
(苗字) (名前)
このたび、・・・・・・ので、退職いたします。
書き方のテンプレートとしてはこのようになります。
こちらのテンプレートに対して上記で挙げた退職理由を記載することで会社都合を主張した退職届の書き方となります。(「・・・・・・」この箇所に具体的な被害理由を記述してください。)
必要な内容を記載した上で会社側に退職届を渡して会社都合退職を要求しつつ退職処理を進めていきましょう。
パワハラで退職する際の伝え方の注意点として
パワハラを理由に退職する際の伝え方と、勤続年数が浅い人と長い人でニュアンスが異なります。
勤続年数が短い場合、ストレートに問題に対して言及して辞める旨を伝えれば問題ありません。一方、勤続年数が長い場合、相手や周囲からすれば「それまで長い間大丈夫だったのに、どうして急にパワハラなんて言うんだ?」となります。
そのため、「上司が徐々に性格が変わり、パワハラをする人になってしまい勤務環境が変わった」と言う旨を伝えましょう。その上で具体的にどういった問題があったのか?を伝えてください。
また、他にも以下のポイントを押さえて伝えてください。
パワハラによる退職は会社都合で進める
第五条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
労働契約法 | e-Gov法令検索
ハラスメントは労働者の心と体の安全に影響がある行為であり、労働契約法五条に基づき使用者である会社側が労働者の生命、身体などの安全を確保しつつ労働することができる環境を用意できていない、となります。
加えて、ハラスメントはハラスメント防止法(正式名称:改正労働施策総合推進法)違反にも該当します。
いずれの場合でも法律に反した状況であることに違いは無いので、退職する際は間違いなく会社側に非があることになります。
そのため、一身上の都合などと記載せず、ハラスメントの具体的な内容を記して会社都合として退職を進めてください。
会社都合にすべき理由として
会社都合にすることでパワハラの責任が会社側にあったことが明確になります。
ご自身の主張が認められるだけでなく、会社都合退職の方が退職後の失業手当の受給が速くなり、且つ受給額も増えます。
特にパワハラや精神的な問題で辞めた場合、立ち上がるまでに時間が必要になることがあるため、早期に直近の生活費を確保できること、ないしは受け取れる金額が増えることは気持ちを立ち直らせるまでの助けになりますので、被害にあった上で辞める際は必ず会社都合退職として進めてください。
一身上の都合にはしないこと
パワハラで辞める際は退職届に「一身上の都合として」とは書かないようにしてください。
パワハラはあくまで会社側が原因になるため退職理由も会社都合となります。ですが、一身上の都合と書いてしまうと自己都合退職扱いになってします。
【注意】後からの理由の変更は難しい
退職届や退職願いに退職理由を記載して提出した際、退職理由を後から変更するのは難しくなります。
一身上の都合と書いてしまえば問題を大きくしたくない会社側はパワハラの事実をなかったことにしようとする可能性があり、そうなると泣き寝入りするだけ。
以上のことから泣き寝入りせずに退職したい場合は一身上の都合とは書かないようにしてください。
パワハラによる退職届を提出する際の注意点
1.退職願ではなく、退職届を提出する
退職届と退職願を混同してしまうかと思いますが、双方全く別の役割となります。
退職を成立させたい場合は退職届を出しましょう。
退職願は辞表の意思表明をあらわすもので、雇用者側の受理・承諾を求めます。雇用者との合意が必要となるのでこれを雇用者に受理・承諾してもらわなければ退職の効果は生じません。
退職届は労働契約の一方的な解約の意思、辞職の意思表示を表すもので、出してしまうと取り下げはできません。退職届の場合、雇用者に伝えたら雇用者の受理・承諾がなくとも、2週間の経過により、退職の効果が生じます。
退職願はそれ自身に法的な効力が生じないので退職願いが受理されないこと自体には違法性がありません。よって、繰り返しになりますが退職を成立させたいときは「退職届」を会社側に提出してください。退職届であれば退職の意思を示したことになるので退職が成立します。
2.直接の手渡しは避けた方が良い可能性がある
パワハラを行うような職場環境であれば、そもそも退職届を提出しても受け取らない可能性があります。
第六百二十七条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
民法第627条
ただし、民法第627条より労働者は解約の申入れをすることで退職が成立します。そのため、退職届を受け取らない事は労働者の権利である退職の権利を無視した行為になるので、違法行為に該当します。
ですが、パワハラを行うようなブラック企業であれば法律を無視して退職を認めないだけでなく、労働者に対して強制労働を敷き続ける可能性があります。また、最悪の場合は退職届を持ってきた相手に対して暴力を振ることも考えられます。
こうしたことから、ご自身の身の安全を第一に考えるためにも、退職届の直接の手渡しは避けた方が良い可能性があります。
普段の職場の温度感から、直接手を出さない方が身の安全の確保できると思われる際は、直接ではなく別の方法で退職届の提出を検討してください。
例えば、具体的には以下のような方法があります。
内容証明郵便で送る
内容証明郵便で送ることで送った証拠が残りますので、退職届が会社側に届けられたことが証明できます。
民法第627条より、労働者は解約の意思を伝えることで、退職が成立しますので、退職届が会社側に届けられたことが証明できれば、解約の意思を伝えたことと、同義になるため退職が成立します。
メールで退職を伝えることも可能
メールの送信履歴も証拠になるため、退職の旨をメール送信して会社ないしは直属の上司に送ることでも退職は成立します。
3.診断書を用意する
職場のパワハラが原因で退職せざるをえなくなった場合、職場のパワハラ原因で、心理的な影響受け、勤務の継続が難しくなった旨を証明する必要があります。
そのため、心療内科に相談して、職場のパワハラが原因でドクターストップがかけられた旨を証明してください。もしくは職場のパワハラ原因で精神的に病んでしまった旨を証明してください。
診断書と言う形で心療内科医によるドクターストップが証明できれば、パワハラの被害を受けた証拠になります。
退職届に精神的苦痛と記述する際は診断書が証拠になる
【書き方の例】
- 精神的苦痛を受け続け勤務の継続が難しいと判断したため退職します
このように、退職届の退職理由欄に精神的苦痛もしくはそれに近しいメンタルトラブルの理由を記述する場合、精神的な問題があったことを書いたとしても客観的に証明するのが難しく会社側も納得しない可能性があります。
そのため、精神的な苦痛を受けた上で勤務の継続が難しくなったことが証明できる心療内科の診断書も併せて持参して会社側に手渡してください。
診断書があれば、精神的な苦痛で勤務の継続が難しくなった胸が証明できます。
4.証拠を残しておく
例えば暴力を受けた際の物的証拠、もしくは罵声を浴びせられた際の内容を録音に残すなどが証拠になります。
他にもご自身がハラスメントを受けた際、いつ?どこで?誰から?どのようなハラスメントを受けたのか?をメモに残しておくことも証拠となることがあります。
いずれにせよ、ハラスメントを訴えてパワハラを認めさせるには、感情論ではなく客観的な証拠が必要になってきます。そのため、本当に訴える覚悟があるなら普段から何かしらの証拠を残しておくように意識しておきましょう。
5.会社から退職届の書き方を強要されても従わない
会社側から退職届の内容の書き方を強制されたとしても従う必要はありません。そもそも退職は労働者の権利であり会社側から強制される言われはありません。
退職勧奨に従う必要もない
パワハラを起こしている職場で退職勧奨を受けた場合、会社側としては問題にしたくないという気持ちから会社にとって都合の良い退職理由を記述するように求められることもあります。
ですが、退職勧奨には強制力は無いので従う義務はありません。そのため、退職勧奨にあったら感情的になることなく、まずは明確に拒否してください。
逆に訴えることも可能
なお、過度な退職勧奨には損害賠償請求を起こすこともできます。他にも、退職勧奨を通じて懲戒解雇の脅しをかけられた際は弁護士に相談して対処することもできます。
いずれの場合においても、退職勧奨を介して不公平な対応を受けた際は泣き寝入りする必要はありませんし従う必要もありません。退職する際は、あくまでもご自身の意思を第一に退職の処理を進めていきましょう。
【補足】会社が会社都合にしたがらない理由
労働者側からだと見えにくい部分ではありますが、会社側からすると会社都合退職にさせたくない理由があります。なぜなら、助成金が受け取れなくなるからです。
参考:平成31年度|雇用・労働分野の助成金のご案内(詳細版)|厚生労働省
こうした助成金は一定の期間内に会社都合退職を行っていないことが支給条件となります。
会社都合理由の退職届を直接手渡されたとしても会社側が受け取らなければ会社都合退職の証拠が残らないため助成金を受け取ることができます。
会社都合退職の退職届けを直接手渡そうとしても拒否される場合、こうした事情も加味しているため頑なに受け取らないことがあります。
退職届を受け取ってもらえない時の対処法として
そのため、会社がどうしても退職願や退職届を受理されないようなパワハラをしてくる際は「2.直接の手渡しは避けた方が良い可能性がある」でもお伝えしたように内容証明郵便を利用してください。
内容証明郵便で退職届を送れば配送した履歴が残るので退職届を提出した証拠になりますので、拒否できずに言い逃れができなくなります。
身の危険を感じる際は退職代行に相談して辞める
パワハラが横行する職場であれば治安が悪い職場環境と考えられます。
そのため、退職を伝えたりパワハラを素直に伝えてしまうと何かしらのトラブルが起こり身の危険を感じる、相談したとしても一向に認めてくれない、といった状況下にいる方でしたら労働組合が運営する退職代行サービスに相談して辞めてしまいましょう。
退職交渉をすべてお願い&即日退職も可能!
退職代行に依頼すると、あなたが直接会社に行くことなく退職代行業者があなたに代わって退職処理を進めてくれ、希望があれば相談したその日に動いていただき即日退職を実現することもできます。
また、労働組合が運営してる退職代行であれば会社との交渉が可能なため、残りの有給の活用や残業代の未払いトラブルへの対応、他にも、会社都合退職にするための段取りや退職金トラブルへの対応、退職後に必要になる離職票などの必要書類へのサポートなどすべて代行してもらえます。
そのため、あなたが
- 退職を自分で切り出すのは難しい
- 退職相談をしたのに辞めさせてくれない
- でも、どうしても辞めたい
という状況であれば労働組合が運営する退職代行サービスに相談することで泣き寝入りせずに退職することができます!
退職後にすべきこと
会社がパワハラを認めない時はハローワークに相談
会社都合退職として退職届を提出したのにもかかわらず会社側が受け取られなかった場合、自己都合退職として泣き寝入りする方もいらっしゃるかもしれません。
ですが、ハローワークに相談することで自己都合退職から会社都合退職に書き換えてもらえる可能性が残っています。
相談する際はパワハラの証拠が必要となりますので、「3.診断書を用意する」「4.証拠を残しておく」でお伝えした内容をもとに証拠を用意してからハローワークに相談してみてください。
退職時に会社から必要な書類を受け取る
- 雇用保険被保険者証
- 年金手帳
- 源泉徴収票
- 離職票
- 扶養控除等(異動)申告書
- 健康保険被扶養者(異動)届
- 給与振込先届
- 健康診断書
など、退職時に必要な書類を会社から郵送してもらうように伝えましょう。
退職後の失業手当の申請、次の会社に入社する際の手続きなどで必要になります。
基本的には退職後にご自宅に郵送されてきますが、しばらく待っても届かない場合は会社に確認の連絡を入れてください。
備品は返却する
スマホ、PC、制服、社章など会社から借りているものは必ず返却しましょう。
まとめて直接返却しても良いですし、それが難しければまとめたものを郵送で会社に送っても問題ありません。
まとめ
パワハラは違法行為であり間違いなく会社側の責任にあたります。そのためパワハラ受けて辞める際は気に入りする必要はなく、被害内容を伝えた上で会社都合退職として退職処理を進めていきましょう。
ただし、 いくらご自身に非がないとはいえ退職を伝えたり、パワハラの訴えることに使いにくさを感じる人もいるかと思います。そんな時は退職代行に依頼すれば、会社と直接やりとりすることなくスムーズに退職処理を進めることができます。
これから離れる会社に対してこれ以上神経をすり減らす必要はありません。退職後の次のステップに進んでいけるよう気持ちを切り替えていきましょう。
パワハラ退職にも相談できる退職代行
退職代行トリケシ → パワハラで泣き寝入りせず退職をしたい人におすすめ
- 労働組合が運営しているから安心
- ご自身が会社側とやりとりする必要は一切なし
- 退職実績3500件以上の安心感
- 全額返金保証あり!
- 職場への連絡不要!
- 有給や退職金のサポートも可能
- めんどくさい手続きはぜんぶお任せ!
- 退職後の対応もサポート!