「会社に勝手に退職日を決められた」
「納得いかない」
という際に知って欲しい、退職日を決定する際の考え方と会社への対策について解説します。
退職日を会社が決めるのは違法でも合法でもない
退職日の決定を労働者側と使用者側(会社側)のどちらがするのか?という法律上の定めは存在しません。
そもそも労使関係(労働者側と会社側の関係)は対等であることが前提にあり、どちらかが偉い・凄い・強い権利を有する、といったことはありません。
退職日を会社が勝手に決める法律は存在しない
退職日を会社が決める法律は存在しない以上、使用者(会社)が一方的に決めた事柄に対して労働者側が無条件に従う義務はありません。
退職日は誰が決めるのではなく双方の協議の上で判断するもの
退職日は労働者と使用者が双方の協議の上で決定するものになります。
退職を希望する労働者の意見、引き継ぎや勤務継続を希望する使用者側の意見、それぞれを出し合って最終的な退職日が決定します。
仮に退職日を会社が決めるなら会社都合退職となる
仮に会社が退職日を勝手に決めるのであれば解雇扱いになるので会社都合退職となります。
会社都合退職の場合、雇用関連助成金を受給できませんので会社側にとってのメリットはほぼありません。むしろ会社都合退職によって労働者側の方がメリットは大きく、失業保険を早く、長期間に渡って受給できます。
仮に会社都合退職である旨を会社側が認めないとしても、ハローワークで事情を伝えて会社都合退職にすることも可能です。
事前に証拠を押さえておく
ハローワークは主張を確認する証拠として、労働契約書・就業規則・タイムカード・賃金台帳などから真偽を判断します。退職する前に必要な書類をハローワーク側に確認し、且つ社内の証拠を押さえておきましょう。
自己都合で退職日を定める際の決定権も協議が必要
自己都合退職で辞める際も、原則として退職日は必ずしも労働者側が一方的に決定するものではありません。
第六百二十七条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
民法第627条
民法第627条により退職の自由は労働者の権利として定められています。そのため、半ば強制的に14日後に退職することは可能ではありますが、一般的には退職日の決定は会社と協議した上で決定づけられます。
【結論】協議の上で双方の着地点を決める
冒頭でのお話しに戻りますが、退職日は労働者と使用者が双方の協議の上で決定しましょう。
仮に会社側から一方的な退職日の通達があったとしてもすぐに認めてはいけません。承諾書や申し出に対して一度でも同意してしまうと取り返しが難しくなります。
そのため、会社側の申し出に納得が行かない時はすぐに同意せず「突然の申し出ですが認めることはできません」「改めて相談させてください」と伝えて交渉をしましょう。
会社と退職トラブルが起きそうな場合
バックレはしない
会社との関係に難があり対応が嫌になったとしてもバックレだけは避けてください。
バックレによる退職を行うと「違法行為」となり労働者に対して損害賠償請求や懲戒解雇を与えられる危険があります。
中でも懲戒解雇になると以下の問題が起こります。
- 本来貰えるはずだった退職金の一部または全部不支給
- 転職時にマイナスな印象を与えることになる
また、懲戒解雇になると転職活動時に相手先に伝えなければ経歴詐称になるので必ず伝える必要があります。つまり、懲戒解雇になるとその事実が必ず転職先にはバレますので今後の転職活動においてもご自身にとって不利益しかありません。
バックレは労働者にとってデメリットが大き過ぎるので、辞める時はご自身に悪影響が出ないよう法に則り確実・安全に辞めましょう。
損害賠償を気にする必要はない
(賠償予定の禁止)
労働基準法第16条
第十六条 使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。
原則として損害賠償ありきの労働契約を結ぶことは法律で禁止されています。そのため、退職することに対して損害賠償やそれに類する費用的な負担などを義務付けることは出来ません。
損害賠償は第三者が見ても辞めることで会社に多大な悪影響を残した際、もしくはバックレなどの違法の対応をした際に検討されますが、法に基づいて退職をするだけであれば会社に多大な悪影響を残したとは認められません。
以上のことから通常の退職処理を進めているのであれば退職時の損害賠償は気にする必要はありません。
可能な限り引き継ぎをする
会社が退職日を強制してくる場合、どこまで対応できるか?が難しいのですが、可能な限り引き継ぎはしてください。
モラルの問題というよりも、労働者側のマイナスを少しでも0にしたいためです。
労働者側は法に基づいてやれることをやっている、という状態にしておけば会社からあれこれ言われることはありませんし、仮に何か言われたとしても非ないので堂々と対応できます。
引き継ぎマニュアルの用意
なお、引継ぎが難しい時は引き継ぎ資料(引き継ぎマニュアル)を用意しておきましょう。
- 業務の社内での位置付け
- 業務の流れ(フローチャートなど)
- 業務に関わる社内外の関係者
- 過去に起こったトラブルやその対処法のノウハウ
- 顧客情報など必要なデータ
見ていただくとわかるように、業務や作業の繋がり・業務・作業に関わる関係者をそれぞれ明確化しておく資料になります。また、引き継ぎ資料は自分だけしかわからない言葉でまとめることなく、誰が見ても理解できる言葉でまとめてください。
全面的に戦う場合は弁護士に相談
退職だけでなく、退職にまつわる不当な賠償請求、精神的な被害などがあり全面的に戦いたい時は弁護士に相談しましょう。
個人で戦うと感情論になり、会社側が悪いとしても証明ができずに逆に個人である労働者側が負けてしまう、もしくは泣き寝入りすることもあります。
以上のことから、全面的に戦う場合は弁護士に相談してください。
弁護士に依頼をしたことがありますが、正直なところ金額的な負担は大きいです。ですが、どうしてもという時は金額を支払って依頼するだけの価値は十分にありました。
労働基準監督署に相談する場合
不当解雇に対して労働基準監督署に相談することも可能です。
会社側から早期退職を決められた際の対応として「解雇予告手当」を要求するように、などとアドバイスをいただけることもあるでしょう。また、悪質な会社に対しては指導をすることもあります。
解決を保証してはくれない
ただし、労働基準監督署はその立場からあくまで指導や是正勧告までが対応の範囲であり、個人のトラブル解決をかならず保証してくれるわけではありません。また、相談するにも事前に用意する資料(証拠)が多岐に渡ります。
そのため、労働基準監督署に相談する際は確実な解決が保障されているわけでは無いことを予め理解しておきましょう。
辞めさせてもらえない時は退職代行で対処する
- 退職日の希望を出しているのに認められない
- 退職相談をしたのに一向に対応してもらえない
- でも、どうしても辞めたい
という方であれば労働組合が運営する退職代行サービスに相談して辞めてしまいましょう。
確実に退職が成立します。
退職日の希望が通らないで悩む必要が無くなる
退職代行はお手持ちのスマホから電話やLINE(メールでも可)か相談が可能。希望があれば相談したその日から代行業者が動き出してくれます。
代行業者が動き出した瞬間からあなたは職場に行くことも連絡する必要も無くなるので、早ければ相談した即日から会社に行かなくても良い状態になれます。
具体的には、
- 確実に退職が成立する
- 法律に則って退職処理するので法的なトラブルがない
- 自分で対応する必要が無いので退職にまつわるストレスが無い
等があり、希望者には有給消化や未払いの交渉もしてくれます。
そのため、あなたが
- 退職を自分で切り出すのは難しい
- 退職相談をしたのに辞めさせてくれない
- でも、どうしても辞めたい
という状況であれば労働組合が運営する退職代行サービスに相談して辞めてしまいましょう。
まとめ
退職日の決定は会社が一方的に決めて良いものではありません。
会社側からの一方的な通達には同意する必要はありませんので、ご自身の退職希望日を会社に伝えて退職日の交渉を進めてください。
もし、ご自身での対応が難しいとなったときは本記事でお伝えしたように弁護士や労働組合による運営する退職代行サービスに相談し、ご自身が不利になることなく退職処理を進めてみてください。