派遣契約途中に内定をもらった際の職場の辞め方と注意点について解説します。
派遣契約途中に内定が出た際の注意点
(契約の解除等)
労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律 第二十七条
第二十七条 労働者派遣の役務の提供を受ける者は、派遣労働者の国籍、信条、性別、社会的身分、派遣労働者が労働組合の正当な行為をしたこと等を理由として、労働者派遣契約を解除してはならない。
労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律の第27条、より原則として派遣契約の中途解約は認められていません。
ただし、一部例外条件があります。
改正労働者派遣法による例外条件はある
(労働者派遣契約の解除に当たつて講ずべき措置)
労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律 第二十九条
第二十九条の二 労働者派遣の役務の提供を受ける者は、その者の都合による労働者派遣契約の解除に当たつては、当該労働者派遣に係る派遣労働者の新たな就業の機会の確保、労働者派遣をする事業主による当該派遣労働者に対する休業手当等の支払に要する費用を確保するための当該費用の負担その他の当該派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置を講じなければならない。
労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律の29条より、原則は認められていない契約途中の退職であっても一定の条件下においては例外的に中途解約を認めています。
バックレはしない
一部の例外条件があることも踏まえて、派遣契約途中で絶対に避けたいのがバックレです。
「内定が決まったからどうしても辞めたい」と焦る気持ちも理解できますが、
一部の条件を除き原則として即日退職は認められていません。そのため、バックレによる即日退職を行うと「違法行為」となり労働者に対して損害賠償請求や懲戒解雇を与えられる危険があります。
中でも懲戒解雇になると転職活動時に相手先に伝えなければ経歴詐称になるので必ず伝える必要があります。つまり、懲戒解雇になるとその事実が必ず転職先にはバレますので、せっかくの転職活動で採用に至ったにも拘わらず自身の印象が悪くなり不利益しかありません。
バックレは退職行為に対するリターンとリスクを加味した際にリスクが大きすぎて帳尻が合わない行為と言えます。そのため、法に基づかない即日退職行為だけは控えた方が良いです。辞めるなら法に則って確実に・安全に辞めましょう。
派遣元に相談する
あなたの雇用主は就業先ではなく派遣元となるのでまずは派遣元に事情を相談してください。
仮に契約期間が満了するタイミングであれば問題無く退職が成立しますが、そうで無ければどのタイミングで辞めるべきか?を協議しましょう。
派遣の契約途中で解約する条件について詳しくは以下の記事もご参考になさってください。
派遣契約途中での退職が成立する条件
やむを得ない事由
(やむを得ない事由による雇用の解除)
民法第628条
第六百二十八条 当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。
民法第628条より、やむを得ない事由が発生した場合は会社と労働者、双方の合意があれば即日退職が成立します。
派遣社員という期間の定めのある雇用形態であっても、民法628条より「やむを得ない事由」がある場合は雇用解除が可能になります。
【やむを得ない事由の例】
- 契約外の仕事をさせられる
- 使用者が労働者の生命・身体に危険を及ぼす労働を命じた
- 派遣先の上司からパワハラやモラハラを受けている
- 賃金不払いなどの重要な債務不履行が発生した
- 労働者自身が負傷・疾病・心身の障害などにより就業不能に陥った
- 親や家族の介護が必要になった
- 家族の転勤などにより急な引っ越しが決まった
- 業務内容が法令に違反している
- 両親や子供の病気、または介護
など
派遣をしながら次の仕事が決まったから、という理由だけでは弱い
次の転職先として正社員での雇用が決まったから、というだけでは労働者都合でしかなく退職の条件としえては弱いです。
そのため、まずは転職先に事情を伝えて入社タイミングを相談した上で現在の職場と出来る限り円満退社ができる退職タイミングを調整しましょう。
派遣を辞める方法については以下の以下の記事もご参考になさってください。
勤務期間が1年以上経過している
第百三十七条 期間の定めのある労働契約(一定の事業の完了に必要な期間を定めるものを除き、その期間が一年を超えるものに限る。)を締結した労働者(第十四条第一項各号に規定する労働者を除く。)は、労働基準法の一部を改正する法律(平成十五年法律第百四号)附則第三条に規定する措置が講じられるまでの間、民法第六百二十八条の規定にかかわらず、当該労働契約の期間の初日から一年を経過した日以後においては、その使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができる。
労働基準法137条
派遣会社と有期雇用派遣として契約をしている状況であっても、労働基準法137条より勤務期間が1年以上経過している場合に限り労働者側の希望するタイミングでいつでも退職ができるため即時解約(即日退職)が成立します。つまり、1年を経過していれば「派遣を今日で辞めます」と契約途中で中途解除を申し出ても法律上は成立します。
ただし、あくまでもこの規定は契約期間が1年を越える場合を想定したものであり、3ヶ月、半年という1年未満の契約を繰り返して累計1年という場合は適用外である点にご注意ください。
違法行為に該当する場合
勤務先に違法性がある場合は退職が成立します。
労働条件に相違がある場合
(労働条件の明示)
労働基準法第15条
第十五条 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。
② 前項の規定によつて明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。
③ 前項の場合、就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から十四日以内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければならない。
労働基準法第十五条より、労働条件の相違は即時に契約解除(即日退職)が認められています。
入社時に会社から受け取った雇用契約書と実際の現場での労働条件・仕事内容が異なる場合は即日退職が可能ですので派遣契約の中途解除が成立します。
労働条件の相違と退職について詳しくは以下の記事もご参考になさってください。
ハラスメント
第五条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
労働契約法 | e-Gov法令検索
ハラスメントは労働者の心と体の安全に影響がある行為であり、労働契約法5条に基づき使用者である会社側が労働者の生命、身体などの安全を確保しつつ労働することができる環境を用意できていない、となります。
加えて、ハラスメントはハラスメント防止法(正式名称:改正労働施策総合推進法)違反にも該当します。
いずれの場合でも法律に反した状況であることに違いは無いので、会社側には「身の安全が保障されないため」と伝えてご自身の退職処理を進めましょう。
ハラスメント被害による退職について詳しくは以下の記事もご参考になさってください。
どうしても際は退職代行に相談する
- 退職を自分で切り出すのは難しい
- でも、どうしても辞めたい
という状況であれば労働組合が運営する退職代行サービスに相談して辞めてしまいましょう。
確実に退職が成立します。
退職代行はお手持ちのスマホから電話やLINE(メールでも可)か相談が可能。希望があれば相談したその日から代行業者が動き出してくれます。
代行業者が動き出した瞬間からあなたは職場に行くことも連絡する必要も無くなるので、早ければ相談した即日から会社に行かなくても良い状態になれます。
具体的には、
- 確実に退職が成立する
- 法律に則って退職処理するので法的なトラブルがない
- 自分で対応する必要が無いので退職にまつわるストレスが無い
等があります。
そのため、あなたが
- 自分から退職を切り出すのが難しい
- でも、どうしても辞めたい
という状況であれば労働組合が運営する退職代行サービスに相談して辞めてしまいましょう。
まとめ
派遣は基本的に期限の定めがある雇用契約ですから契約期間満了が辞め方の原則となります。
契約途中という原則とは異なる辞め方をする場合、周囲への影響は少なからず起こりますから、少しでも迷惑がかからないよう派遣元や勤務先と相談して辞めるように努めてください。