「もう無理、どう考えても満了日までもたない」
派遣を退職日まで欠勤する際の注意点、および欠勤してでも辞めた方が良い条件について解説しています。
派遣を退職日まで欠勤することは可能?
【結論】派遣を契約満了まで休むことは可能
事情があるなら派遣を退職日まで欠勤すること自体は可能です。
派遣は契約期間を全うすることが原則なので、契約期間が終了するまでの残りの期間を欠勤扱いとして処理します。
【注意】無断欠席で辞めるのだけは避けた方が良い
なお、欠勤が可能とは言え無断欠勤やバックレだけは避けてください。
雇用形態問わず、無断欠勤・バックレによる退職は認められていません。無断欠勤による退職は違法行為となり、労働者に対して損害賠償請求や懲戒解雇を与えられる危険があります。
退職日まで欠勤する理由は伝えること
そのため、辞めるなら必ず派遣元に事前に相談し、退職日まで欠勤する理由を伝えた上で法に則って退職処理を進めてください。
【補足】派遣でも有給があるなら利用する
第三十九条 使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。
労働基準法第三十九条|e-Gov法令検索
有給は労働者の権利として認められています。(基準法第三十九条)また、条件を満たせば有給の権利は派遣社員にも発生します。
2019年4月1日より働き方改革の一環として労働基準法が改正され、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対して、年5日については付与日から1年以内に使用者が時季を指定して取得させることが義務づけられました。
派遣労働者の場合、使用者は派遣元になります。
派遣にも有給消化の義務がある
年次有給休暇を取得する際には派遣先企業との連携が必要となりますが、派遣も有給の取得義務の範囲に入るので一定の日数は確実に取得する必要があります。
そのため、有給の権利がある場合は欠勤ではなく有給を利用して退職を進めた方が良いでしょう。
退職前に欠勤した方が良い条件
1.体調不良
職場勤務に影響がでるほどの体調不良があった場合、勤続が難しい旨を派遣元に伝えてください。
退職日までに体調が治る見込みが無いときはそのまま退職となります。
派遣を体調不良で辞めることについて詳しくは以下の記事も併せてご参考になさってください。
2.就業先でハラスメント被害
就業先でハラスメント被害に遭われているなら欠勤してでも身を守ることを第一にしていただき、そのまま退職処理を進めてください。
第五条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
労働契約法 | e-Gov法令検索
ハラスメントは労働者の心と体の安全に影響がある行為であり、労働契約法5条に基づき使用者である会社側が労働者の生命、身体などの安全を確保しつつ労働することができる環境を用意できていない、となります。
加えて、ハラスメントはハラスメント防止法(正式名称:改正労働施策総合推進法)違反にも該当します。
いずれの場合でも法律に反した状況であることに違いは無いので、派遣元には「派遣先では自身の身の安全が保障されないため」と事情を伝えて欠勤・退職処理を進めましょう。
【その他】事情があるなら双方の合意による即日退職を
原則として契約期間内での勤務が義務付けられますが、体調不良やハラスメント、その他突発的なトラブルにより勤務の継続が難しくなった場合は事情を派遣元に伝えて合意退職という選択肢もあります。
(やむを得ない事由による雇用の解除)
民法第628条
第六百二十八条 当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。
民法第628条より、やむを得ない事由が発生した場合は会社と労働者、双方の合意に基づき即日退職が成立します。
なお、やむを得ない事由とは例えば以下が該当します。
【やむを得ない事由の例】
- 契約外の仕事をさせられる
- 使用者が労働者の生命・身体に危険を及ぼす労働を命じた
- 派遣先の上司からパワハラやモラハラを受けている
- 賃金不払いなどの重要な債務不履行が発生した
- 労働者自身が負傷・疾病・心身の障害などにより就業不能に陥った
- 親や家族の介護が必要になった
- 家族の転勤などにより急な引っ越しが決まった
- 業務内容が法令に違反している
- 両親や子供の病気、または介護など
など
派遣社員に正社員の退職届のような形式的な退職書類は存在しないので、辞めたいときは電話で「申し訳ないのですが派遣を辞めたいです。理由は○○○○です」と事情を伝えてください。派遣元に事情が理解されたら合意退職が成立します。
派遣を辞める時の注意点
早い段階で派遣元の担当に連絡する
事情があり欠勤による退職を伝える際は決まり次第なるべく早い段階で派遣元に伝えましょう。
契約途中での欠勤となると現場に混乱が起きないよう、早期に次のスタッフを配置する必要があり、その段取りにも一定の時間と工数がかかるので出来る限り早く伝えてもらった方が派遣元や派遣先としては助かるためです。
なお、あなたの雇用主は派遣先ではなく派遣元となるので、相談時は派遣先ではなく派遣元に相談してください。
直接電話して伝えた方が良い
契約途中での欠勤となるので必ずしも軽い話ではありません。そのため、事情を伝える際はメールよりも電話で伝えた方が良いでしょう。
急なトラブルなどから派遣の契約途中で解約する条件について詳しくは以下の記事もご参考になさってください。
勤務期間が1年以上経過しているなら即日退職が可能
第百三十七条 期間の定めのある労働契約(一定の事業の完了に必要な期間を定めるものを除き、その期間が一年を超えるものに限る。)を締結した労働者(第十四条第一項各号に規定する労働者を除く。)は、労働基準法の一部を改正する法律(平成十五年法律第百四号)附則第三条に規定する措置が講じられるまでの間、民法第六百二十八条の規定にかかわらず、当該労働契約の期間の初日から一年を経過した日以後においては、その使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができる。
労働基準法137条
派遣会社と有期雇用派遣として契約をしている状況であっても、労働基準法137条より勤務期間が1年以上経過している場合に限り労働者側の希望するタイミングでいつでも退職ができるため即時解約(即日退職)が成立します。
つまり、1年を経過していれば事情の有無に拘わらず「派遣を今日で辞めます」と契約途中で退職を申し出ても法律上は成立します。
既に1年以上の勤続があるなら労働基準法137条という選択肢も用意しておきましょう。
損害賠償請求は気にする必要は無い
(賠償予定の禁止)
労働基準法第16条
第十六条 使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。
原則として損害賠償ありきの労働契約を結ぶことは法律で禁止されています。そのため、仮に契約途中で欠勤による退職したとしても退職に対して損害賠償を義務付けることは出来ません。
加えて、仮に責任がかかるとするなら派遣社員ではなく派遣社員を出向させた「派遣元」に責任がかかります。そのため、派遣社員自身が賠償責任を負う必要は原則としてはありません。
引き継ぎについて
円満退社や一般的なマナーとしては引き継ぎは行った方が良いで、基本的には引き継ぎを行ってからの退職を。それが難しい時は引き継ぎマニュアルを用意しておきましょう。
事情があってどうしても対応が難しい時は引き継ぎ未対応でも退職は成立します。
【補足】引き継ぎは義務ではないし、拒否もできる
ただし、引き継ぎは法律で定められた規則や義務ではありません。よって、引き継ぎを拒否することもできますし引き継ぎをしないことで罰則が発生することもありません。
円満退社や一般的なマナーとしては引き継ぎは行った方が良いですが、事情があってどうしても対応が難しい時は引き継ぎ未対応でも退職は成立します。
私物の回収
派遣先に私物を残している場合、誤って処分されてトラブルになる可能性があります。そのため、退職日までに私物を持ち帰っておきましょう。
どうしても私物を回収する時間がない場合、退職後に着払いで自宅に送ってもらうように伝えてください。
場合によっては派遣先に私物を置き忘れた場合は後日派遣会社の営業担当が回収し、後日派遣社員宅に郵送してくれることもありますが確実ではありません。そのため、派遣元に事情を伝えたのち派遣社員が回収してくれるのか?自分で着払い相談した方が良いのか?を調整しましょう。
備品の返却
派遣先の会社で備品(社員証、スマホ、PC、制服など)を受け取っている場合、派遣先もしくは派遣会社に備品を返却しましょう。
欠勤退職を認めてくれない時は退職代行で辞める
- 退職を自分で切り出すのは難しい
- 欠勤退職の相談しても辞めさせてもらえない
- でも、どうしても辞めたい
という状況であれば労働組合が運営する退職代行サービスに相談して辞めてしまいましょう。
確実に退職が成立します。
退職代行はお手持ちのスマホから電話やLINE(メールでも可)か相談が可能。希望があれば相談したその日から代行業者が動き出してくれます。
代行業者が動き出した瞬間からあなたは職場に行くことも連絡する必要も無くなるので、早ければ相談した即日から会社に行かなくても良い状態になれます。
具体的には、
- 確実に退職が成立する
- 法律に則って退職処理するので法的なトラブルがない
- 自分で対応する必要が無いので退職にまつわるストレスが無い
等があります。
そのため、あなたが
- 自分から退職を切り出すのが難しい
- 欠勤退職の相談しても辞めさせてもらえない
- でも、どうしても辞めたい
という状況であれば労働組合が運営する退職代行サービスに相談して辞めてしまいましょう。
まとめ
雇用期間の定めがある派遣という勤務形態は、原則として契約期間満了までの勤務にはなります。
ですが、どうしても難しい事情がある際は退職日までの欠勤という選択肢も間違ってはいません。
無断欠勤やバックレなどルールに反した辞め方をせず、事情を伝えた上での欠勤による退職であれば法的な問題も起こりませんので、まずは派遣元に相談して退職の可否を確認しましょう。
もし、相談しても難しいという時は本記事でもお伝えした労働組合が運営する退職代行サービスに相談し、早々に退職処理をすすめていきましょう。