LINEで退職を切り出す際の切り出し方と注意点、およびLINEでの退職が拒否された時の代替案について解説しています。
ライン(LINE)を使った退職の切り出し方
面と向かって伝えにくい、直接伝えられない事情がある(入院中など)等の場合はLINEでの伝達が重宝します。
伝え方(例文)
お疲れ様です。
○○部の△△です。
突然の連絡、失礼いたします。
LINEでの連絡が失礼なことは承知の上ですが、一身上の都合により退職の意志をお伝えします。
つきましては本日付で退職の意思表示とさせていただきます。
退職日を○月○日をとし、最終出社日は■月■日、最終出社日から退職日までの期間は有給消化させていただければと思います。
今まで至らぬ自分を育てていただき、本当にありがとうございました。
普段でのラインのやりとりは短いものが多いですが、退職の意思表示を伝える際はある程度長い文章になってしまうものとお考えください。
- 退職の意思を伝達する
- 最終出社日と退職日を伝達する
などは必ず記載して相手にLINEをしましょう。
キャプチャーで証拠を残す
送ったLINEの画面はは必ずキャプチャーして残してしておきましょう。退職の意思表示を伝えた証拠になります。
なお、キャプチャーの際は以下も注意しましょう。
【履歴を残す際の注意点】
- 送った相手のラインアカウントもわかるようにする
- ラインを送った日時がわかるようにする
- キャプチャーが複数枚に分かれる時は1枚ずつ内容を多少被るようにキャプチャーをし、やりとりが繋がっていることがわかるようにする
絵文字などは使わない
絵文字や「!」などは使わないようにしてください。価値観の問題ですが相手によっては真剣度合いが伝わらないことも少なくありません。
ラインを使っているとは言え、使い方の用途が普段使いとは異なります。退職はフランクに伝えるものではなく、多少硬すぎるぐらいの面白みがない表現で伝えた方が真剣度合いが伝わりやすいです。
業務用のLINEから送る
プラベートでLINEを知っていたとしても退職の連絡ではプライベートアカウントは使用せず、退職の連絡ではあくまで業務用のLINEから連絡してください。
業務用のLINEを使う理由として、ブロックされている可能性(=届かない)、軽く見られる可能性、などがあり、相手に退職相談が伝わらないリスクを避けるためです。
【事例】LINEで退職を伝える人は少なくない
LINEが一般普及したことでLINEで退職を伝える方も増えてきています。
昭和気質の年代からするとなかなか理解されにくい面はまだあるとはいえ、辞める際の手段として一般化しつつあるのは事実です。
直接伝える義務は無い
退職を伝える場合、民法第627条が法的な原則となります。
第六百二十七条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
民法第627条
労働者には退職の自由が定められており、民法第627条を見ていただくとわかるように解約方法(退職の申し出方)について「直接会わないとNG」といった記載はありません。そのため、LINEで退職を伝えることは有効です。
一般マナーとして直接伝えることが浸透しているため「LINEでは辞めさせない」「LINEは認めない」などと言われることはありますが、あくまでマナー・感情論の類なので要請に従う必要はありません。また、退職の自由が認められている以上、LINEでの退職を認めない場合は逆に会社側の違法にも該当します。
場合によっては労働基準法 第5条である強制労働に該当することもあるでしょう。
(強制労働の禁止)
労働基準法 第5条
第五条 使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によつて、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。
メールでの伝え方に相当する
LINEで退職の連絡を伝えることは、メールで伝えることと役割としては同じようなものに相当します。
メールでの退職の伝達について詳しくは以下の記事もご参考になさってください。
【Q&A】LINE活用での注意点
退職のアポをLINEで伝えるのもアリ
LINEで退職を伝えることを前提にお伝えしてきましたが、伝えるのは直接で、そのための段取り・アポ取得のためにLINEを使うのももちろんアリです。
この場合も通常の伝え方と同様にプライベートのLINEではなく、業務用のLINEを活用しましょう。また、アポを取得するときは本題に触れることなく「大事なお話があります」とだけ伝えてください。具体的な辞める相談については会った時に伝えましょう。
LINEを使った方が良い場合もある
- 直接伝えるとハラスメント被害に遭う可能性がある
- 事情があって直接会うことが出来ない(病気など)
という場合は、むしろLINEを使って退職を伝えてください。
ハラスメント対策として身の安全を守ることが第一ですし、事情があって伝えられないまま時間だけが過ぎてしまっても一向に退職が出来なくなるだけです。
LINEに法的な効力はあるのか?
LINEで伝えて会社にラインの履歴が残るようになれば法的には退職の証拠として有効になります。
そのため、「退職届を受け取ってもらえない」といった状況であれば解約の申し出(退職の申し出)の証拠を残す手段の1つとしてLINEで退職を申し出るのはアリです。
LINE活用でのデメリット・リスクも理解する
- LINEの履歴が消えてしまう(=退職の意思表示をした証拠が無くなる)
- 会社や上司からの反発(=辞めるまでにいやがらせやストレスが増える可能性)
- 舐められる(=ラインからの連絡だから大したことないと思われないがしろに扱われる)
などがLINEを使った際のデメリットやリスクとして挙げられます。
特にLINEの履歴が消えると退職の意思を伝えた証拠が無くなるので退職を申し出たのに法的に成立しないため辞めることが出来ない事態にもなります。
退職を成立させる「確実性」という意味では幾分かのリスクが残ってしまうのもまた事実です。
損害賠償請求は気にする必要は無い
LINEで退職を伝えることに反対して「LINEで伝えるなら損害賠償だ!」などと言われても気にする必要はありません。
(賠償予定の禁止)
労働基準法第16条
第十六条 使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。
原則として損害賠償ありきの労働契約を結ぶことは法律で禁止されています。そのため、退職したことに対して損害賠償を義務付けることは出来ません。よって、LINEで退職を伝えることに対しても損害賠償請求を求めることはできません。
損害賠償は第三者が見ても辞めることで会社に多大な悪影響を残したときに検討されます。
例えば退職時に多くの同僚を一緒に引き抜いて辞めた、退職時に会社のインサイダー情報を公開した、などが該当しますが、ただ退職するだけであれば会社に多大な悪影響を残したとは認められにくいので原則として退職時の損害賠償は気にする必要はありません。
どうしてもLINEでは辞められない時の対処法
【注意】バックレによる即日退職は違法なので控える
民法第627条があるため、一部の条件を除き原則として即日退職は認められていません。そのため、LINEでのやりとりが難しいからといって感情的にバックレによる即日退職を行うと「違法行為」となり、労働者に対して損害賠償請求や懲戒解雇を与えられる危険があります。
中でも懲戒解雇になると以下の問題が起こります。
- 本来貰えるはずだった退職金の一部または全部不支給
- 転職時にマイナスな印象を与えることになる
また、懲戒解雇になると転職活動時に相手先に伝えなければ経歴詐称になるので必ず伝える必要があります。つまり、懲戒解雇になるとその事実が必ず転職先にはバレますので転職活動においてご自身の印象が悪くなり不利益しかありません。
以上のことからバックレは退職行為に対するリターンとリスクを加味した際にリスクが大きすぎて帳尻が合わない行為と言えます。そのため、法に基づかない即日退職行為だけは控えた方が良いです。辞めるなら法に則って確実に・安全に辞めましょう。
法に則って辞める
民法第627条があるように、退職の自由は法で定められた労働者の権利であり最短で退職の2週間前から辞める旨を申告しておけば退職が成立します。また、会社側には労働者の退職を拒否する権限はありません。
雇用先によっては特殊な雇用契約書を結んでいる・特殊な就業規則になっている、などの可能性もありますが就業規則よりも法律が優先されますので退職の意思を伝えれば必ず退職が成立します。
- LINEでは伝えるのが難しい
- 簡単に辞めさせてもらえない
- でも、どうしても辞めたい
というご状況であれば法に則って「退職届を提出する」という具体的な退職の意思を示して辞めてしまいましょう。
退職届を直接渡す以外の形で辞める意思表示をする場合
- 配達記録付き内容証明郵便で退職届を郵送する
- 退職の旨を記載したメールを送る
- 電話で録音しながら口頭で伝える
等の手段でも退職の意思(解約の申入れ)を伝えたことになりますので、上述した民法に従い、解約の申入れの日から2週間経過すると退職が成立します。
なお、会社側が退職拒否をしてきた場合「在職強要」となり違法行為に該当しますので会社の要請を受諾する必要はありません。詳しくは以下の記事もご参考になさってください。
違法性を指摘して辞める
会社が違法な対応をしている場合、違法性を指摘して会社から即座に離れてしまいましょう。
労働条件に相違がある場合
(労働条件の明示)
労働基準法第15条
第十五条 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。
② 前項の規定によつて明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。
③ 前項の場合、就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から十四日以内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければならない。
労働基準法第15条より、労働条件の相違は即時に契約解除(即日退職)が認められています。
入社時に会社からもらった労働条件通知書と異なる労働条件・仕事内容であればその旨を会社に伝えて即日退職してしまいましょう。
労働条件の相違と退職について詳しくは以下の記事もご参考になさってください。
ハラスメント被害を受けている場合
第五条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
労働契約法 | e-Gov法令検索
ハラスメントは労働者の心と体の安全に影響がある行為であり、ハラスメントが起こる職場ということは労働契約法5条で定められた使用者である会社側が労働者の生命、身体などの安全を確保しつつ労働することができる環境を用意できていない職場、となります。つまり、労働契約法5条に反している状況(違法な状況)ということです。
加えて、ハラスメントはハラスメント防止法(正式名称:改正労働施策総合推進法)違反にも該当します。
いずれの場合でも法律に反した状況であることに違いは無いので、会社側には「身の安全が保障されないため」と伝えてご自身の退職処理を進めましょう。
ハラスメント被害による退職について詳しくは以下の記事もご参考になさってください。
どうしてもの際は退職代行に相談する
- LINEで伝えるのは難しい
- 直接退職を切り出すことも難しい
- 切り出したとしても辞めさせてもらえない
- でも、どうしても辞めたい
という方であれば労働組合が運営する退職代行サービスに相談して辞めてしまいましょう。
確実に退職が成立します。
退職代行はお手持ちのスマホから電話やLINE(メールでも可)か相談が可能。希望があれば相談したその日から代行業者が動き出してくれます。
代行業者が動き出した瞬間からあなたは職場に行くことも連絡する必要も無くなるので、早ければ相談した即日から会社に行かなくても良い状態になれます。
具体的には、
- 確実に退職が成立する
- 法律に則って退職処理するので法的なトラブルがない
- 自分で対応する必要が無いので退職にまつわるストレスが無い
等があり、有給消化や未払いの交渉もしてくれますので退職代行費を支払う以上の利用メリットがあります。
そのため、あなたが
- LINEで伝えるのは難しい
- 直接退職を切り出すことも難しい
- 切り出したとしても辞めさせてもらえない
- でも、どうしても辞めたい
という状況であれば労働組合が運営する退職代行サービスに相談して辞めてしまいましょう。
まとめ
LINEは便利ですし法的にLINEがNGということもありません。ですが、「世代間による価値観の壁」があることも事実です。
そのため、少しでも誤解をされないよう、LINEによる退職を伝える際はお堅めな文章で必要事項を記載して伝えてください。
もしそれでも相手が受け入れてくれない時は「どうしてもLINEでは辞められない時の対処法」でお伝えした内容を参考に法に基づいて粛々と退職処理を進めてください。