派遣を1週間で辞めたいと感じた時の退職手順と辞める際の注意点について解説します。
派遣を1週間で辞めたい人が退職できる条件
【注意】原則は契約期間満了
派遣社員はそのほとんどが有期雇用派遣(期間の定めがある契約内容、登録型派遣とも呼ばれる)として契約しています。
1週間で辞めたい場合、契約期間途中での解約になるかと考えられますが、有期雇用派遣は働く期間が定められていることから期間外での退職は原則として認められないので「すぐに辞めたい」と思っても難しいのが実情です。
1週間後に契約更新のタイミングが控えており、事前に退職を伝えた上で契約更新のタイミングで契約をせずに派遣終了、ということは可能ですが、更新タイミングでもない状況で辞めることは契約不履行となるので派遣会社から認めてもらいにくいです。
ただし、以上はあくまで教科書的なお話であり契約途中で辞めることもできる条件もあります。
派遣に入ったばかりで辞めたいと思う人は多い
現場に入ったことで
- 派遣に入ったばかりだけど合わないので辞めたい
- 想像と異なり体が持たないので迷惑をかける前に辞めたい
等と感じるケースもあるでしょう。
そのため、契約期間途中で辞めたいと希望する際は以下で解説する例外的な条件に該当するか?を確認し、退職処理を進めていきましょう。
1.派遣元に連絡し、双方合意の上で辞める
派遣契約途中であれ「辞めたい」と思ったらまずは派遣会社へ電話して連絡してください。メールでも構いませんが電話の方がスピーディーな対応になります。
やむを得ない事由を伝える
(やむを得ない事由による雇用の解除)
民法第六百二十八条
第六百二十八条 当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。
働く期間の定めがある有期雇用派遣であっても、民法628条より「やむを得ない事由」がある場合は雇用解除が可能になります。
やむを得ない事由とは例えば以下が該当します。
【やむを得ない事由の例】
- 契約外の仕事をさせられる
- 使用者が労働者の生命・身体に危険を及ぼす労働を命じた
- 派遣先の上司からパワハラやモラハラを受けている
- 賃金不払いなどの重要な債務不履行が発生した
- 労働者自身が負傷・疾病・心身の障害などにより就業不能に陥った
- 親や家族の介護が必要になった
- 家族の転勤などにより急な引っ越しが決まった
- 業務内容が法令に違反している
- 両親や子供の病気、または介護など
など
派遣社員に正社員の退職届のような形式的な退職書類は存在しないので、辞めたいときは電話で「1週間という短期間になり申し訳ないのですが派遣を辞めたいです。理由は○○○○です」と事情を伝えてください。派遣元に事情が理解されたら合意退職が成立します。
2.労働条件の相違
(労働条件の明示)
労働基準法第15条
第十五条 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。
② 前項の規定によつて明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。
③ 前項の場合、就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から十四日以内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければならない。
労働基準法第十五条より、労働条件の相違は即時に契約解除(即日退職)が認められています。
入社時に会社から受け取った雇用契約書と実際の現場での労働条件・仕事内容が異なる場合、その旨を派遣元に伝えて即日退職を成立させてしまえば1週間という短期間勤務であっても退職は成立します。
労働条件の相違と退職について詳しくは以下の記事もご参考になさってください。
3.ハラスメントの被害に遭った場合
第五条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
労働契約法 | e-Gov法令検索
ハラスメントは労働者の心と体の安全に影響がある行為となります。そのため、ハラスメント被害に遭ったということは、労働者の生命、身体などの安全を確保しつつ労働することができる環境を用意できていない、となります。
つまり、会社側の労働契約法5条違反となります。
加えて、ハラスメントはハラスメント防止法(正式名称:改正労働施策総合推進法)違反にも該当します。
いずれの場合でも法律に反した状況であることに違いは無いので、派遣元に「ハラスメント被害に遭い、身の安全が保障されない」と出社できない旨を伝えて退職処理を進めましょう。
ハラスメント被害による退職について詳しくは以下の記事もご参考になさってください。
4.どうしてもの場合は退職代行に相談する
- 派遣会社に相談しても辞めさせてもらえない
- 派遣を辞めると伝えたのに連絡がこない
- 自分から退職を切り出すのが難しい
- 今の職場環境には耐えられない
- でも、すぐにでも辞めたい
という状況であれば、労働組合が運営する退職代行サービスに相談して即日で辞めてしまいましょう。
派遣に対する辞めにくさを感じていたとしても退職代行に相談すれば確実に退職が成立します。
退職代行はお手持ちのスマホから電話やLINE(メールでも可)で申込み相談が可能、希望があれば即日から代行業者が動き出してくれます。
代行業者が動き出した瞬間から職場に行くことも連絡する必要も無くなるので、早ければ相談した即日から会社に行かなくても良い状態になれます。(=実質的な即日退職)
具体的には、
- 派遣社員でも確実に辞めることができる
- 派遣会社や派遣先に自分から連絡する必要は無い
- 派遣会社側から退職を拒否されることも無い
などが成立しますので、あなたが代行サービスに支払う代金以上の利用メリットがあります。
そのため、あなたが
- 今の派遣先や派遣会社は合わないので続けられない
- すぐにでも辞めたいのに辞めさせてもらえない
- でも、どうしても辞めたい
という状況であれば労働組合が運営する退職代行サービスの活用をおすすめします。
明日から行きたくない!とまで悩み苦しんでいるなら、もう我慢しないでください。
我慢し続ける方が状況が悪化するだけ
「契約があるから、、、」と我慢して派遣先の職場に勤務し続けている方もいますが、我慢が重なるとその影響でうつ病や適応障害などの精神疾患になるリスクがあります。
精神疾患にかかると勤務にも影響し周囲に迷惑をかけてしまう可能性もあり、それが更に精神的な追い込みとなるので悪循環にハマってしまいます。最悪の場合、退職せざるを得ない状況に追い込まれてしまうケースもありますので、合わない職場であれば我慢することなく正直に派遣元に伝えた方が良いです。
一週間で辞めても大きな問題にはならない
すいません。短期間の派遣スタッフを一週間で辞めたいです。事前の説明と違って脱水症状を起こすほどハードで周りは外国人労働者ばかりで泣きそうです。一週間で辞めるなどでいいのか自信をなくしています。
すいません。短期間の派遣スタッフを一週間で辞めたいです。事前の説明と違って脱… – Yahoo!知恵袋
ただほんとに他の人も続けられるのかと思う気もします。担当の人に体力的に続けられないという理由は通用するでしょうか?よろしくお願いいたします。
必ずしも短期間で辞めることを推奨しているわけではありませんが、開始から1週間はお試しの要素あるので1週間で派遣を辞めてしまったとしても大事になることは少ないです。
実際に派遣を短期間で辞めた人は少なくない
やむを得ない事情がある場合は別ですが、「合わない」「予想と違った」といった悩みは多いので、実際に勤務して『違う』と感じたらすぐに派遣元に伝えてください。我慢して数か月後に伝達されるよりも早期に決断してもらった方が助かる現場も少なくありません。
派遣先を辞める際の注意点
バックレはしない
派遣先が嫌だと感じたとしてもバックレだけは避けてください。
バックレによる退職は法的に認められていないため、辞めた後で万が一にも損害賠償請求や呼び戻しなどのリスクが残ります。また、登録先の派遣会社から次の仕事を用意してもらえなくなる危険性もあります。
辞める際はバックレることなく、事前に派遣元に退職を伝えてから辞めましょう。
派遣先に相談しない、派遣元に相談する
退職の相談は「派遣元」にしてください。勤務している職場(派遣先)にはあなたの雇用に関する権限はありませんし、派遣元に伝える前に派遣先に伝えても相手を困らせてしまうだけで話が進みません。
損害賠償請求は気にする必要は無い
(賠償予定の禁止)
労働基準法第16条
第十六条 使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。
原則として損害賠償ありきの労働契約を結ぶことは法律で禁止されています。そのため、仮に短期間で退職したとしても退職に対して損害賠償を義務付けることは出来ません。
加えて、仮に責任がかかるとするなら派遣社員ではなく派遣社員を出向させた「派遣元」に責任がかかります。そのため、派遣社員自身が賠償責任を負う必要は原則としてはありません。
勤務分の給料は請求できる
契約期間途中の短期間だとしても勤務実態は認められます。
(賃金の支払)
労働基準法第24条
第二十四条 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。
② 賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。ただし、臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるもので厚生労働省令で定める賃金(第八十九条において「臨時の賃金等」という。)については、この限りでない。
労働基準法第24条では、賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない、と規定されています。従って、働いた分はその全額が支給されなければなりませんので会社は派遣社員に賃金を支払う義務があります。
1週間という短期間勤務だとしても給与を派遣元に請求することに何も問題ありません。
私物の回収
派遣先に私物を残している場合、誤って処分されてトラブルになる可能性があります。そのため、退職日までに私物を持ち帰っておきましょう。
なお、どうしても私物を回収する時間がない場合は、退職後に着払いで送ってもらうように伝えてください。
場合によっては派遣先に私物を置き忘れた場合は後日派遣会社の営業担当が回収し、後日派遣社員宅に郵送してくれることもありますが確実ではありませんので、派遣元に事情を伝えたのち派遣社員が回収してくれるのか?自分で着払い相談した方が良いのか?を調整してください。
備品の返却
派遣先の会社で備品(社員証、スマホ、PC、制服など)を受け取っている場合、派遣先もしくは派遣会社に備品を返却しましょう。
まとめ
実際に勤務してみて「違うかも」「ついていけない」などと感じることは少なくありません。
就業すぐはお試しの意味合いもあるので、どうしても難しいと思ったら我慢せずにすぐに派遣元に相談してください。
早めの決断の方がご自身はもちろん派遣元や就業先としても助かることは多いですから、バックレや無断欠勤など身勝手なことさえしなければ想像しているほど悪い対応もされないはずです。
早期に辞める際は出来る限り周囲に影響が出ないように配慮しながら退職の手続きを進めてください。
例外的に短期間で辞める方法について詳しくは以下の記事もご参考になさってください。