体調不良であるならば派遣の契約途中であっても退職が出来る理由、および辞め方・注意点について解説します。
体調不良を理由に派遣を契約途中で辞めることは可能
やむを得ない事由に該当する
(やむを得ない事由による雇用の解除)
民法第628条
第六百二十八条 当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。
体調不良により派遣就業の継続が難しくなった場合、その旨を派遣元に伝えて事情を了承してもらえれば民法第628条の「やむを得ない事由による雇用の解除」に該当しますので、契約途中であっても退職が認められます。
可能であれば診断書も用意する
診断書の提出は必ずしも義務化されているわけではありませんが、就業が出来なくなったことの証明として診断書を用意した方が説得力があります。
特に派遣会社側の立場からすると派遣先の企業は大事な営業先。
今の状況を客観的に見ると、営業先に対して契約途中での自分達の不備により解約を申し出る立場になります。派遣元の立場を配慮するなら診断書を用意して「ドクターストップがかかったのでどうしようもない」という見せ方にした方が派遣先にも申し立てやすいでしょう。
体調不良による退職の経験者も少なくない
派遣を体調不良の為、契約期間の途中に辞めることになりました。この場合、体調が戻ったら派遣先に挨拶に行った方が良いですよね?
なかなか体調が戻らず(コロナではないと言われましたが37度付近の微熱が続く)このまま欠勤を続ける訳にもいかないので派遣担当者と話し合って辞めることになりました。荷物も少しですが職場に残ってます。まぁ処分されても構わないものですが、、、
派遣を体調不良の為、契約期間の途中に辞めることになりました。こ… – Yahoo!知恵袋
皆さんだったら最後に挨拶にいきますか?
体調不良で急遽派遣の仕事を辞める場合
体調不良で急遽派遣の仕事を辞める場合派遣会社(担当の営業所)に連絡するのか派遣… – Yahoo!知恵袋
派遣会社(担当の営業所)に連絡するのか
派遣先の会社に連絡するのか 解らないのですが、
へたなやめ方をすると残りの給料がもらえないのでは と心配
です、
タイムカードや手書きのタイムシートは
派遣先の会社にありますし
それを処分されたらおしまいですし
そういうことをされそうな会社のような気がして、
その派遣会社はその派遣先会社専属なので。
宜しくお願いします。
体調不良で休みだしてそのまま退職する人もいる
中には体調不良を理由に休み始め、そのまま退職や音信不通になる方もいます。ですが、致し方のない理由で辞めることはあっても、無断での退職は派遣元だけでなく派遣先にも迷惑がかかりますので、こうした辞め方だけは避けましょう。
辞める際は必ず派遣元に事前の連絡をした上で辞めてください。
退職を申し出る手順
派遣元に相談する
退職の相談は就業先ではなく「派遣元」に相談してください。
勤務している職場(派遣先)にはあなたの雇用に関する権限はありません。あなたの雇用主は派遣元になりますので、退職相談は必ず派遣元に行ってください。
原則として契約書に則って辞める
就業時に契約途中出の解約(退職)が記載された規定を伝えられている(書面、または口頭)かと思いますので、可能な限り規定に沿って辞めるようにしましょう。
契約途中での解約である以上、派遣元・派遣先の双方に迷惑をかけてしまっている状況です。少しでも影響が出ないように退職処理を進めるのがマナーです。
体調不良で辞める旨をメールで伝達しても良い
事情があり、電話や直接会って派遣元に体調不良で辞めることを伝えることが出来ない場合はメールで連絡しても構いません。
【例文】
【件名】
○○での勤務を終了したい件について
【本文】
○○会社(派遣元の会社名)
○○様
お世話になっております、
派遣スタッフの○○です。
表題の件につきましてご相談があります。
現在、体調不良により就業を続けるのが困難な状況にあります。
契約途中でのご相談隣申し訳ございませんが
これ以上周囲へのご迷惑がかからない内に
現在の就業を辞めさせていただきたいと考えております。
以上、お手数をおかけしますが
ご検討いただけますよう何卒宜しくお願い致します。
なお、メールを送る際は自分で完結させるメールにはしないでください。例えば「辞めます、ありがとうございました」という具合です。
例文に従って退職を考えている旨・退職を認めてほしい旨、それぞれを派遣元に送りましょう。
派遣を辞める際の注意点
【注意】原則は契約期間満了
派遣社員はそのほとんどが有期雇用派遣(期間の定めがある契約内容)として契約しています。
(契約の解除等)
労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律 第二十七条
第二十七条 労働者派遣の役務の提供を受ける者は、派遣労働者の国籍、信条、性別、社会的身分、派遣労働者が労働組合の正当な行為をしたこと等を理由として、労働者派遣契約を解除してはならない。
体調不良での退職は契約期間途中での解約(退職)になるかと考えられますが、有期雇用派遣は契約期間途中での退職は原則として認められません。
体調不良により勤務が難しいという事情は分かりますが、だからといってすぐに辞めて良い理由にはなりません。そのため、原則は原則として存在していることをあらかじめ理解した上で「申し訳ないのですが、」と事情を切り出して派遣元の担当に相談してください。
a.円満退社を前提に動く
事情があるとはいえ、契約上は契約途中での就業終了となります。
派遣元・派遣先に少なからず迷惑をかけてしまっている立場ではありますので、可能な限り円満退社になるべく謝罪や引継ぎをした上で退職処理を進めてください。
b.バックレや無断欠勤は避ける
遣先が嫌だと感じたとしてもバックレだけは避けてください。
バックレによる退職は法的に認められていないため、辞めた後で万が一にも損害賠償請求や呼び戻しなどのリスクが残ります。また、登録先の派遣会社から次の仕事を用意してもらえなくなる危険性もあります。
辞める際はバックレることなく、事前に派遣元に退職を伝えてから辞めましょう。
c.契約途中で辞める時は次の仕事への影響も覚悟する
事情がどうあれ途中で辞めてしまう人間をお客様先に派遣するのは派遣元からすれば不安になります。
- 万が一にも、途中解約になるのでは?
- 途中解約になったことでお客様との関係に影響が出るのでは?
など、心配は尽きません。
そのため、契約途中で辞める際はいまの派遣元から再度の仕事の依頼が届くことに多少なりとも影響が出る可能性があることはあらかじめ覚悟しておいた方が良いでしょう。
もちろん事情を理解してもらえれば無下に扱われることは無いと思いますが、可能性として0ではないということです。
d.給与は支払われる
契約途中の退職となっても勤務実態は認められますので勤務した分の給与は認められます。
(賃金の支払)
労働基準法第24条
第二十四条 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。
② 賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。ただし、臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるもので厚生労働省令で定める賃金(第八十九条において「臨時の賃金等」という。)については、この限りでない。
労働基準法第24条では、賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない、と規定されています。従って、働いた分はその全額が支給されなければなりませんので会社は派遣社員に賃金を支払う義務があります。
契約途中での退職といえども働いた分の給与を派遣元に請求することに何も問題ありません。
e.損害賠償請求は原則として気にする必要は無い
(賠償予定の禁止)
労働基準法第16条
第十六条 使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。
原則として損害賠償ありきの労働契約を結ぶことは法律で禁止されています。そのため、仮に契約途中で退職したとしても退職に対して損害賠償を義務付けることは出来ません。
加えて、仮に責任がかかるとするなら派遣社員ではなく派遣社員を出向させた「派遣元」に責任がかかります。そのため、派遣社員自身が賠償責任を負う必要は原則としてはありません。
f.派遣元にクレームを言われる場合
契約途中で辞めたことで派遣先から派遣元に対してクレームが届き、その矛先が派遣スタッフに向けられる(愚痴やクレームを言われる)ことも0ではありません。
ですが、事情があっての契約途中解約であるなら不可抗力。また、辞める際に派遣元や派遣先にもお詫びを入れているのであれば派遣スタッフとしてはそれ以上出来ることはありません。
クレームを言われたとしても派遣スタッフ側としては対応すべきは対応している状況ですので割り切ってください。むしろそこまで対応してアレコレ言われるような派遣元であるなら登録を打ち切って別の派遣会社に登録してしまいましょう。
g.備品は返却する
派遣先の会社で備品(社員証、スマホ、PC、制服など)を受け取っている場合、派遣先もしくは派遣会社に備品を返却しましょう。
h.私物をあらかじめ回収しておく
派遣先に私物を残している場合、誤って処分されてトラブルになる可能性があります。そのため、退職日までに私物を持ち帰っておきましょう。
場合によっては派遣先に私物を置き忘れた場合は後日派遣会社の営業担当が回収し、後日派遣社員宅に郵送してくれることもありますが確実ではありません。
そのため、派遣元に事情を伝えたのち派遣社員が回収してくれるのか?それが難しい時は退職後に着払いで送ってもらうように伝えてください。
体調不良でも派遣を辞めさせてくれない時の対処法
1.診断書を提出する
体調不良を証明した診断書を用意して派遣元に提出しましょう。
強制労働の禁止
(強制労働の禁止)
労働基準法 第5条
第五条 使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によつて、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。
ドクターストップがかかった上で無理に勤務させることは強制労働に該当するので認められていません。そのため、体調不良により派遣先での就業の継続が難しくなった旨を診断書に記載してもらうことで勤務が出来ないことを証明できます。
精神的な問題であれば心療内科へ
直接的なけがや病気という身体的な問題とは別に、職場環境、ハラスメント被害などで精神的なトラブルが影響し、その結果として体を壊す・体調不良になった場合は「心療内科」に診てもらった上で体調不良の因果関係を証明するために診断書を用意してください。
診断書は必ず自分から要請する
なお、診断書は自分から要請しなければ用意してもらえませんので、病院で診てもらう際は先生に診断書を書いてもらうようご自身で忘れずに伝えてください。
体調不良による派遣の退職について詳しくは以下の記事もご参考になさってください。
2.勤務期間が1年以上経過している
第百三十七条 期間の定めのある労働契約(一定の事業の完了に必要な期間を定めるものを除き、その期間が一年を超えるものに限る。)を締結した労働者(第十四条第一項各号に規定する労働者を除く。)は、労働基準法の一部を改正する法律(平成十五年法律第百四号)附則第三条に規定する措置が講じられるまでの間、民法第六百二十八条の規定にかかわらず、当該労働契約の期間の初日から一年を経過した日以後においては、その使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができる。
労働基準法137条
派遣会社と有期雇用派遣として契約をしている状況であっても、労働基準法137条より勤務期間が1年以上経過している場合に限り労働者側の希望するタイミングでいつでも退職ができるため即時解約(即日退職)が成立します。
つまり、1年を経過していれば体調不良とは関係なく「派遣を今日で辞めます」と契約途中で中途解除を申し出ても法律上は成立します。
体調不良での退職が仮に認められなくとも、勤務実績が1年以上ある場合は労働基準法137条を理由に即時解約(退職)を進めてください。
3.違法性を指摘して辞める
勤務先が違法行為を行っている場合は退職の理由となります。
ハラスメントがある場合
第五条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
労働契約法 | e-Gov法令検索
ハラスメントは労働者の心と体の安全に影響がある行為であり、労働契約法5条に基づき使用者である会社側が労働者の生命、身体などの安全を確保しつつ労働することができる環境を用意できていない、となります。つまり、ハラスメントが発生している職場環境は違法行為として考えられます。
加えて、ハラスメントはハラスメント防止法(正式名称:改正労働施策総合推進法)違反にも該当します。
いずれの場合でも法律に反した状況であることに違いは無いので、派遣元に事情を伝えて退職処理を進めましょう。
ハラスメント被害による退職について詳しくは以下の記事もご参考になさってください。
労働条件に相違がある場合
(労働条件の明示)
労働基準法第15条
第十五条 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。
② 前項の規定によつて明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。
③ 前項の場合、就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から十四日以内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければならない。
労働基準法第十五条より、労働条件の相違は即時に契約解除(即日退職)が認められています。
事前に会社と取り決めた雇用契約書と実際の現場での仕事内容や労働条件がが異なるのであれば、その旨を会社に伝えて労働環境や業務内容を是正してもらいましょう。そして、聞き入れてもらえない場合は即日退職しても構いません。
労働条件の相違と退職について詳しくは以下の記事もご参考になさってください。
4.どうしても辞めさせてくれない時は退職代行に相談する
- 派遣会社に相談しても辞めさせてもらえない
- 派遣を辞めると伝えたのに連絡がこない
- 自分から退職を切り出すのが難しい
- 今の職場環境には耐えられない
- でも、すぐにでも辞めたい
という状況であれば、労働組合が運営する退職代行サービスに相談して即日で辞めてしまいましょう。
派遣に対する辞めにくさを感じていたとしても退職代行に相談すれば確実に退職が成立します。
退職代行はお手持ちのスマホから電話やLINE(メールでも可)で申込み相談が可能、希望があれば即日から代行業者が動き出してくれます。
代行業者が動き出した瞬間から職場に行くことも連絡する必要も無くなるので、早ければ相談した即日から会社に行かなくても良い状態になれます。(=実質的な即日退職)
具体的には、
- 派遣社員でも確実に辞めることができる
- 派遣会社や派遣先に自分から連絡する必要は無い
- 派遣会社側から退職を拒否されることも無い
などが成立しますので、あなたが代行サービスに支払う代金以上の利用メリットがあります。
そのため、あなたが
- 今の派遣先や派遣会社は合わないので続けられない
- すぐにでも辞めたいのに辞めさせてもらえない
- でも、どうしても辞めたい
という状況であれば労働組合が運営する退職代行サービスの活用をおすすめします。
明日から行きたくない!とまで悩み苦しんでいるなら、もう我慢しないでください。
まとめ
原則として契約途中での解約(退職)が難しいのが派遣契約というものですが、体調不良により業務を行うのが難しい状況であるなら話は別です。
バックレや無断欠席などはせず、まずは正直に今の状況を派遣元の担当に伝えてください。
事情を理解してもらった上で現在の就業先にも出来る限り影響が出ないよう、退職処理を進めていきましょう。