うつ病で退職する際のデメリット、および辞める際の注意点について解説します。
なお、デメリットとは書いたものの鬱(うつ)になる職場なら辞めた方が良いと言えます。本記事を通じてうつで辞めた後も思っているほどナーバスになる必要が無く、その後に繋げることができる、とわかっていただくきっかけになればば幸いです。
うつ病で退職する際のデメリットは?
1.退職後の再就職が手間
うつに限らずですが退職後の再就職(転職活動)は手間です。
中でもうつ病で退職したとなると、再就職までに心と体を休める期間が必要になるのでただの転職・就職活動よりも時間がかかります。
うつ病で退職したという事実は再就職に影響するのか?
まったく影響がない、とは言えませんが影響は少ないとも言えます。
何故なら昨今はうつ病に対する理解は広まってきており、中にはうつ病での休職・退職をされた方を採用する企業や、支援する機関・制度も増えてきているので過去と比べると環境は良くなってきていると言えるからです。
最近ではメンタルヘルスと就労に関する支援マニュアルも用意されていますので、うつ病で再復帰を目指す際はご参考になさってください。
【補足】退職理由で必ずしもうつを伝える必要は無い
うつと言っても程度は人それぞれ。また、転職活動時に必ずうつの経験を伝えなければいけないという義務もありません。そのため、業務に影響しない様なら無理に伝える必要はありません。(うつを伝えるのは定期的に通院が必要であり、契約に沿った業務が出来ない可能性が明らかな場合にのみ、とお考えください。)
うつの経験を転職活動時に伝えなければ相手が知る機会もありませんので実質的には転職活動時に影響はありません。
2.労災保険の申請が手間
うつになった原因が職場にある場合、業務災害として労災保険の給付を受けられる可能性があります。労災保険が認められれば療養について全額支給を受けることが出来ます。
ただし、労災認定は時間がかかるので労災の申請を手間と感じることはあるでしょう。
また、実際に認定されるのは3割強とも言われていますので、「労災認定は可能なら利用する」ぐらいの気持ちで申請していただき、他の収入確保対策も併せて行っておくと良いでしょう。詳しくは後述する「うつ病で退職後に押さえておくべきお金の対策」もご参考になさってください。
3.すぐに辞めるなら合意退職が必要になる
うつになったからと言って即座に即日退職が成立するわけではありません。うつで勤務が難しい旨を会社に理解してもらい退職を合意してもらう必要があります。
やむを得ない事由による雇用の解除)
民法第628条
第六百二十八条 当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。
民法第628条より、やむを得ない事由が発生した場合は会社と労働者、双方の合意に基づき即日退職が成立します。
やむを得ない事由としては怪我・病気、家族の介護、出産などによりどうしても勤務が出来ない場合が該当しますが、うつ病は病気であり勤務に影響が出ることは明白。加えて、うつ病状態であれば早々に職場から離れたい、という気持ちが強い状況かと思います。
そのため、会社側に事情を伝えて双方の合意の下での即日退職となるよう相談してください。
診断書を用意して正当性を証明する
合意退職に際してうつ病などの精神的な理由は相手に理解されにくい面があります。
そのため、会社側の担当が理解が難しそうな相手である場合は心療内科で診断書を用意してもらってから相談してください。ドクターストップの裏付けがあれば正当な主張となります。
退職の際に診断書を用意することのデメリットは少ない
なお、診断書を用意したことを周囲に伝えなければバレることはありません。
そのため、転職活動の際も自分から言わなければバレることはないので転職活動中に影響することもありません。
うつ病で退職する際、円滑に退職処理を進めたい時は以下の記事も併せてご参考になさってください。
参考記事:うつ病で即日退職する手順と辞めさせてもらえない時の対処法
職場環境が合う・合わないは大事
厚生労働省「令和3年雇用動向調査結果の概要」の「転職入職者が前職を辞めた理由」によると、前職を辞めた理由として「職場の人間関係が好ましくなかった」「仕事の内容に興味を持てなかった」「労働時間・休日等の労働条件が悪かった」という理由が一定の割合を示しています。
つまり、職場環境(人間関係や労働環境)が合わなければ辞めたくなるほどの強いストレスがかかる、ということであり、そんな状態が続けばうつ病や適応障害など精神疾患になるのもおかしな話ではないということです。
職場環境や人間関係が影響して気持ちが持たなくなりそうなときは以下の記事もご参考になさってください。
【事実】うつ病で仕事を辞める人は少なくない
うつ病で退職し、2月から国民保険に加入しました。保険料減免の対象期間は3月分までしか適用されないのでしょうか。(年度末まで)
Yahoo!知恵袋
このように、鬱によって退職する人は少なくありません。
うつ病での退職は迷惑ではない
いまの職場に居続けるのが難しいという状態にも拘わらず我慢して働き続けることは、うつ病になるほどの強いストレスが慢性的にかかり続ける状態であると言えます。
うつになると業務に影響が出るだけではなくご自身の人生そのものにも影響します。
うつによる退職を迷惑だなんて心配する必要はありません。仕事よりもご自身の生活や人生を最優先で考えるのは当然のことです。
【結論】うつなら仕事を辞めるべき
うつや適応障害などの精神疾患にかかると勤務が出来なくなるだけでなく、病気そのものの回復に時間がかかりプライベートや社会復帰に影響します。ですが、ご自身のプライベートを会社が守ってくれることはありません。
そのため、うつや適応障害になる可能性があるなら我慢していまの職場に留まることなく、退職を最優先に動いてください。
社会的なダメージを負うリスクを背負ってまで今の会社で我慢する必要はありません。一番大事なことはご自身の身の安全です。
うつになる前に退職したことが良い理由について詳しくは以下の記事もご参考になさってください。
うつ病で退職する際の注意点
1.バックレは避けた方が良い
バックレによる退職は認められていません。そのため、バックレによる即日退職を行うと「違法行為」となり労働者に対して損害賠償請求や懲戒解雇を与えられる危険があります。
中でも懲戒解雇になると転職活動時に相手先に伝えなければ経歴詐称になるので必ず伝える必要があります。つまり、懲戒解雇になるとその事実が必ず転職先にはバレますので転職活動においてご自身の印象が悪くなり不利益しかありません。
他にも嫌がらせや呼び戻しなどの可能性もあり、バックレは退職行為に対するリターンとリスクを加味した際にリスクが大きすぎて帳尻が合わない行為と言えます。
そのため、法に基づかない即日退職行為だけは控えた方が良いです。辞めるなら法に則って確実に・安全に辞めましょう。
2.休職は復帰が前提なので注意
退職とは別に「休職」という選択肢もありますが、休職は職場復帰が前提となります。その為、復帰後に問題が解決されていないと症状が再発するだけです。
選択肢の一つとして用意しておくのは良いですが、うつなった職場での根本的な問題が解決しないのであれば退職した方が良いでしょう。
3.有給の消化を利用する
第三十九条 使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。
労働基準法第三十九条|e-Gov法令検索
有給は労働者の権利として認められており会社はその権利を拒否することはできません。また、有給の権利は退職すると消滅してします。そのため、有給が残っている場合は必ず退職前に有給を消化してしまいましょう。
4.引き継ぎは必須ではない
引き継ぎは法律で定められた規則や義務ではなく、お世話になった会社に対する気持ちとして行う業務です。
よって、引き継ぎを拒否することもできますし引き継ぎをしないことで罰則が発生することもありません。
円満退社や一般的なマナーとしては引き継ぎは行った方が良いですが、うつなどの事情があってどうしても対応が難しい時は引き継ぎ未対応でも退職は成立します。
5.療養の時間はしっかり取ろう
うつ病は仕事だけでなくプライベートにも影響がでる症状です。その為、社会復帰できる状態に回復させることが最優先と言えます。
退職する際は焦ることなく回復の時間をしっかりと設けてください。
会社に行かなくとも良い、ということは落ち着いて将来を考える時間を取れるとも言えます。
これまで仕事に忙殺されてきた中で、ゆっくり時間をかけて今後の人生設計を再度検討してみましょう。
同じ問題を繰り返さないためにも、
- 自分がうつになりやすい環境
- うつになりにくい環境
- 今後はどういう人生を歩みたいのか?
などを検討する時間として退職した後の時間を活用してください。
6.辞めにくい職場であれば退職代行に相談する
- 退職を自分で切り出すのは難しい
- 退職相談をしたのに辞めさせてくれない
- でも、どうしても辞めたい
という方であれば労働組合が運営する退職代行サービスに相談して辞めてしまいましょう。
確実に退職が成立します。
退職代行はお手持ちのスマホから電話やLINE(メールでも可)か相談が可能。希望があれば相談したその日から代行業者が動き出してくれます。
代行業者が動き出した瞬間からあなたは職場に行くことも連絡する必要も無くなるので、早ければ相談した即日から会社に行かなくても良い状態になれます。
具体的には、
- 確実に退職が成立する
- 法律に則って退職処理するので法的なトラブルがない
- 自分で対応する必要が無いので退職にまつわるストレスが無い
等があり、希望者には有給消化や未払いの交渉もしてくれますので退職代行費を支払う以上の利用メリットがあります。
そのため、あなたが
- 退職を自分で切り出すのは難しい
- 退職相談をしたのに辞めさせてくれない
- でも、どうしても辞めたい
という状況であれば労働組合が運営する退職代行サービスに相談して辞めてしまいましょう。
うつ病で退職後に押さえておくべきお金の対策
うつ病で退職したら失業保険を申請する
失業手当は退職後に受け取れる制度の1つ。今後の生活費の助けになるのでしっかりと申請したいところですが、会社都合で辞めてしまうと給付までに2ヶ月の給付制限がかかります。
そこで「特定理由離職者」の資格をもらいましょう。なぜなら、特定理由離職者となればすぐに失業保険をもらことが可能になるからです。
特定理由離職者の資格をもらう
うつ病で退職した場合は会社都合退職でなくても給付制限期間を適用されない可能性があり、「特定理由離職者」として扱われる可能性がありますが、特定理由離職者の資格をもらう条件は以下になります。
- 被保険者期間が離職以前に6か月以上
- 正当な理由のある自己都合退職
- 現在は働ける
- 就労可否証明書の入手
うつ病で失業保険がもらえないことはある?
なお、失業保険は「現在は働ける」ことを証明する必要があり、働けない状態だと失業手当を受け取れない可能性が生じます。そのため、現在は働けることを証明するために主治医に相談して就労可能証明書を用意してください。それが難しい場合は給付制限がかかります。
給付金を申請する
失業手当とは別に失業中の方の支援を目的とした「給付金(社会保険給付金サポート)」という国の制度があるので申請しておきましょう。
失業手当は通常3ヶ月しか受け取ることが出来ませんが、給付金なら最大28ヶ月に渡って給付してもらえる可能性があります。
以下の条件に該当する方は給付金対象となるので申請してしまいましょう。
【条件】
- 社会保険に1年以上加入している
- 退職日が本日から『14日以上、90日未満』
- 年齢が20歳~54歳
- 現時点で次の転職先が決まっていない
一般的には給付金制度はまだ知られていないことが多いので不明な点もあるかもしれませんが、少しでも該当しそうと思えたら「自分が該当するのか?」と一度問合せてみてください。それが一番確実です。(すでに退職してしまっている人でも対象になります。)
退職後の生活費に対する不安を少しでも無くすためにも退職時は必ず申請しておくことをおすすめします。
高額療養費
一ヶ月にかかった保険適用医療費の自己負担額が自己負担額の限度額を超えたときに保険協会に申請すれば払い戻しを受けることが出来ます。
限度額は世帯年収で決められていますが、一般的な会社員であれば8万円ほどが限度額の目安となり、それを越えた分が戻ってきます。
自立支援医療
うつ病や統合失調症など精神障害により、通院による治療を続ける必要がある方が受けられる制度になります。
まとめ
うつ病での退職は必ずしもデメリットとは言えません。むしろ、ご自身が通常の状態に回復することを第一と考えるなら適切な判断であり中長期的な目線で考えるとメリットとも言えるでしょう。
うつになるぐらいの苦しい環境であれば無理に勤務をし続ける必要はありません。
我慢しても遠くない将来に体調を崩してしまうだけですので、本記事でもお伝えしてきたように、どうしてもの際は辞めて体を休めることを第一に考えてください。また、どうしても自分から切り出せない時は退職代行を使い辞めてしまいましょう。
おすすめは労働組合が運営する退職代行であるトリケシです。あなたに変わって全ての退職処理をお願い出来ますし、確実に即日退職もできます。
嫌な職場で我慢し続ける必要はありません。
どうしても自分では退職を切り出せない、という時は労働組合が無料で相談を受け付けていますので、まずは無料相談をしてみてください。