会社に行けなくなった時の連絡の仕方、及び伝え方の注意点について解説します。
急に会社に行けなくなった原因を理解しよう
風邪や体調不良などで会社に行けない時は事情を会社に連絡すれば良いだけで、社会人なら誰もが理解していることです。
それにもかかわらず会社に行けなくなった時の連絡方法を探している時点で通常の行けなくなる状況とは異なるイレギュラーな事態が起きていると考えられます。
一時的な休みで問題が解決するのか?
厚生労働省「令和3年雇用動向調査結果の概要」によると、前職を辞めた理由として「職場の人間関係が好ましくなかった」という理由が一定の割合を示しています。
以上のことから一般的には職場環境・人間関係トラブルが会社に行きたくなくなる大きな原因の1つであると考えられています。
ほかにも、
- ハラスメント被害を受けている
- プライベートに問題がある
- 疲労による疲れ
など会社に行けなくなる原因は多岐に渡りますが、ご自身が何が原因で気持ちが疲弊しているのか?の理解に務めてください。
その上で、一時的に休んで問題が解決するのか?休んだけでは問題が解決しないのか?(休みとは別の対応をした方が良いのか?)を検討してみてください。
会社に行けなくなった際の連絡先は上司
最初の連絡は必ずご自身の上司の方にしてください。
電話連絡で連絡
会社ごとに連絡の仕方にルールはありますが、原則は「電話」による連絡になります。
始業前に連絡する
朝の始業15分前ほどを目安に電話を入れましょう。
なお、会社に行けない理由が直属の上司本人にあり連絡するのが難しい時は人事部や上司の更に上司の方へ連絡しましょう。
【例】連絡の仕方・伝え方
【電話での伝え方例】
○○課長、お疲れ様です。
○○課の○○(自分の名前)です。ただいまお時間よろしいでしょうか?
急なご連絡となり申し訳ございませんが、(会社に行けない理由)により本日お休みをいただきたいと思います
お手数をお掛けしますが宜しくお願い申し上げます。
電話が難しい時はメールかLINE
- 喉が枯れている
- 電話ができない場所にいる
- 上司に直接話すのは気が引ける事情がある
などがある際はメールかLINEで休む旨を伝えましょう。
【メールで伝える例】
○○課長、お疲れ様です。
○○課の○○(自分の名前)です。ただいまお時間よろしいでしょうか?
急なご連絡となり申し訳ございませんが、(会社に行けない理由)により本日お休みをいただきたいと思います
メールでの連絡となり失礼なことは承知の上ですが、
(会社に行けない理由)、どうしても出社することが困難な状況です。
お手数をお掛けしますが宜しくお願い申し上げます。
特殊な事情で会社に行けない場合の伝え方
会社ことを考えると拒否反応が出て行けない場合
- 動悸がする
- 動けない
- 吐き気がする
などの症状が会社に行こうとするだけで起こるなら会社に対して拒否反応が出ています。
この場合、うつ病や適応障害、もしくは出勤が難しい方がかかる「出勤困難症」という精神的な問題である可能性が高いです。
出勤困難症について詳しくは以下の記事もご参考になさってください。
うつや精神トラブルで会社に行けない時の連絡は「体調不良」とする
厚生労働省の「平成30年 労働安全衛生調査(実態調査)」によるとメンタルヘルス対策に取り組んでいる事務所の割合は平成30年時点で59.2%、国内企業全体の約6割となっています。
言い換えると精神的な問題は身近に発生しやすい問題ということであり、現代病の一つと言っても過言ではありません。
ですが、精神的な問題は相手に理解されにくいため「精神的に~、」などと伝えるよりも「対等不良により休みます」とだけ伝えた方が良いです。
体調不良は意味合いが広く、病気や風邪だけでなく、気分が滅入っている・精神的に疲れてだるさを感じる場合でも理由としては正当なものになります。
念のため心療内科にも診てもらう
休みが取れたら心療内科にも診てもらいましょう。診断結果として会社が原因であることがわかったなら診断書を用意してもらいます。
診断書を用意してもらえれば客観的に会社に対して行けないトラブルを抱えていることがわかるので、その上で後日改めて「会社に行くことに対してドクターストップがかかったのでお休みを取らせてください。」と伝えてください。
ハラスメント被害を受けてもう耐えられない場合
ハラスメント被害を受けて会社に行けない場合は行かなくて良いです。我慢して出勤してもうつ病や適応障害などの心の病にかかってしまうリスクしかありません。
第五条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
労働契約法 | e-Gov法令検索
ハラスメントは労働者の心と体の安全に影響がある行為であり、労働契約法5条に基づき使用者である会社側が労働者の生命、身体などの安全を確保しつつ労働することができる環境を用意できていない、となります。
加えて、ハラスメントはハラスメント防止法(正式名称:改正労働施策総合推進法)違反にも該当します。
いずれの場合でも法律に反した状況であることに違いは無いので、会社側には「ハラスメントにより勤務が難しい」「身の安全が保障されないため出勤できない」と伝えて当面の間出社拒否をする連絡を入れてください。もしくは、そのまま退職処理を進めても問題はありません。
ハラスメント被害による退職について詳しくは以下の記事もご参考になさってください。
家の事情/身内の不幸などのトラブルがあった場合
- 子供の看病で休ませてください
- 身内に不幸があったので休ませていただきます
- 親に○○という事情があり急ですが本日休みをいただければと思います
など、事情を正直に伝えてください。
【例】身内の不幸で休む際の伝え方
小難しい言葉を使う必要はありません。「急で申し訳ありませんが身内の不幸がありまして本日休ませていただきます」とだけ伝えてください。
伝えた後に会社側は亡くなった方とあなたの関係を確認してきますが、正直に答えてください。なぜなら会社側も逝去した人と、あなたの関係により手配する内容が決まっているためです。
事件・事故に巻き込まれた場合
- 移動途中で脱線事故が起こった
- 移動中に事件・事故に巻き込まれて負傷した
- 移動途中で人助けした
など、事件・事故に巻き込まれた場合、連絡がとれる状況であればその旨を伝えましょう。
事件・事故の影響で連絡が取れない場合は普子効力ですので後日改めて連絡が取れる状況になったら事情を伝えてください。
体調不良の場合
風邪や病気などの体調不良で休む際は「本日体調不良によりお休みをいただきます」と伝えてください。
無理に会社に来られても周囲に風邪が広まる可能性もあるので、会社側も理解してくれます。
診断書は原則必要ないが就業規則による
体調不良の証拠として診断書を用意することは労働基準法で定められていないので、原則として用意しなくても問題はありません。
ただし、就業規則に規定されている場合は提出義務が発生するので、その場合は体調不良を理由にするのは避けた方が良いでしょう。
急に会社に行けなくなった際の注意点
嘘はつかない
嘘はバレやすいものです。その為、正直に伝えるか、正直に伝えるのが難しい場合は「体調不良」と伝えていただき、下手に嘘をつくことは避けた方が好ましいです。
仮に嘘をついて休めたとしても、後日バレた際に職場の人間関係・信頼関係に影響が残るだけです。
無断欠勤はしない
無断欠勤は職場に心配をかけるだけでなく、場合によっては損害賠償に繋がる可能性もあります。
どうしてもの場合は出社拒否でも構いませんが、一言連絡だけは入れておきましょう。
どうしてもの際は休暇をとる
会社に行けない理由が今の職場にある場合、物理的に今の職場環境から距離を置くしかありません。そのため、休みや移動によって物理的に今の職場から離れてください。
有給を申請する
第三十九条 使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。
労働基準法第三十九条|e-Gov法令検索
有給は労働者の権利として認められており会社はその権利を拒否することはできません。そのため、有給がある場合は有給を利用して休みを取得してください。
休職を申請する
会社に行けない症状がひどい場合は正規に休職申請をしてください。
我慢するより身の安全のためにも一旦、まとまった休みを設けて回復に努めた方が良いです。
なお、休職は自分だけの時間を確保して休みを取得できるだけでなく、条件にもよりますが休職中に傷病手当金も申請しておけば働いていなくても給与が入ります。(傷病手当金の1日あたりの支給額は、標準報酬日額の2/3です。)その為、休み中の生活費に心配することもありません。
診断書も用意しよう
「会社に行けなくなった時の退職する方法と出勤困難症への対策」でも解説しましたが、休職を成立させやすくするためにも必要とあらば心療内科から診断書を用意してもらいましょう。
休んでも解決しない問題の場合
異動を申請する
部署異動ができる規模の会社であれば退職の前に異動という選択肢もあります。その為、異動することで現在の職場とまったく関りが無くなるようであれば異動も視野に入れてみましょう。
ですが、異動制度が無い、異動しても前の職場と関りが続く、という職場環境であれば状況は変わりにくいと言えるので、異動ではなく退職・転職を検討した方が良いでしょう。
退職を申し出る
異動が難しい場合は退職し、物理的に今の環境から身を話してください。
なお、辞め方は以下の4パターンになります。
1.社内規定に従って退職する
社内規定を元に退職の申し出をしてください。辞める2ヶ月前に伝える、3ヶ月前に伝える、など会社特有の規定があるかと思いますので、原則は社内規定に従って退職手続きを進めましょう。
なお、退職時は「退職願」ではなく『退職届』を会社側に渡してください。
退職願と退職届の違いを理解しておこう
退職願は辞表の意思表明をあらわすもので、雇用者側の受理・承諾を求めます。雇用者との合意が必要となるのでこれを雇用者に受理・承諾してもらわなければ退職の効果は生じません。
退職届は労働契約の一方的な解約の意思、辞職の意思表示を表すもので、出してしまうと取り下げはできません。退職届の場合、雇用者に伝えたら雇用者の受理・承諾がなくとも、2週間の経過により、退職の効果が生じます。
退職願はそれ自身に法的な効力が生じないので退職願いが受理されないこと自体には違法性がありません。よって、退職を成立させたいときは「退職届」を会社側に提出してください。退職届であれば退職の意思を示したことになるので退職が成立します。
2.やむを得ない事由で退職
(やむを得ない事由による雇用の解除)
民法第628条
第六百二十八条 当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。
民法第628条より、やむを得ない事由が発生した場合は会社と労働者、双方の合意に基づき即日退職が成立します。
やむを得ない事由としては怪我・病気、家族の介護、出産などによりどうしても勤務が出来ない場合が該当しますので、今の職場で勤務出来ない時はその旨を会社に相談し、双方の合意の上で退職しましょう。
【補足】引き継ぎは義務ではない
引き継ぎは法律で定められた規則や義務ではなく、お世話になった会社に対する気持ちとして行う業務です。よって、引き継ぎを拒否することもできますし引き継ぎをしないことで罰則が発生することもありません。
円満退社や一般的なマナーとしては引き継ぎは行った方が良いですが、やむを得ない事情があってどうしても対応が難しい時は引き継ぎ未対応でも退職は成立します。
退職時の引き継ぎについて詳しくは以下の記事もご参考になさってください。
3.法にしたがって退職する
- 辞めるまでの期間が長すぎる
- もっと早く辞めたい
という時は退職の法律である民法第627条に従って退職処理を進めましょう。
第六百二十七条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
民法第627条
民法第627条により退職の自由は労働者の権利として定められています。
雇用先によっては特殊な雇用契約書を結んでいる・特殊な就業規則になっている、などの可能性もありますが就業規則よりも法律が優先されますので退職の意思を伝えれば必ず2週間で退職が成立します。
- どうしても今の職場に居続けるのが難しい
- 辞めるまでの期間が長すぎる
- もっと早く辞めたい
というご状況であれば法に則って「退職届を提出する」という具体的な退職の意思を示して辞めてしまいましょう。
退職届を受け取ってもらえない場合
事情があり退職届を直接渡すことが出来ない、もしくは相談したのに受け取ってもらえない場合は配達記録付き内容証明郵便で退職届を郵送してください。
会社側に退職届が届けられたことが証明できるため退職の意思を伝えた証拠になります。
また他にも
- 退職の旨を記載したメールを送る
- 録音しながら口頭で伝える
等の手段を用いて退職の意思(解約の申入れ)を伝えるのも有効です。
口頭で伝えることもできますが、中には「言った・言わない」とうやむやにされる可能性もあるため、退職届をはじめとして何かしらの証拠を残して伝えた方が確実です。
4.どうしても際は退職代行に相談する
- 退職を自分で切り出すのは難しい
- 退職相談をしたのに辞めさせてくれない
- でも、どうしても辞めたい
という方であれば労働組合が運営する退職代行サービスに相談して辞めてしまいましょう。
確実に退職が成立します。
退職代行はお手持ちのスマホから電話やLINE(メールでも可)か相談が可能。希望があれば相談したその日から代行業者が動き出してくれます。
代行業者が動き出した瞬間からあなたは職場に行くことも連絡する必要も無くなるので、早ければ相談した即日から会社に行かなくても良い状態になれます。
具体的には、
- 確実に退職が成立する
- 法律に則って退職処理するので法的なトラブルがない
- 自分で対応する必要が無いので退職にまつわるストレスが無い
等があり、希望者には有給消化や未払いの交渉もしてくれますので退職代行費を支払う以上の利用メリットがあります。
そのため、あなたが
- 退職を自分で切り出すのは難しい
- 退職相談をしたのに辞めさせてくれない
- でも、どうしても辞めたい
という状況であれば労働組合が運営する退職代行サービスに相談して辞めてしまいましょう。
まとめ
会社に行けなくなった時にやるべきは連絡することです。当日の連絡が難しい場合は後日でも構いませんが、必ず会社側に連絡を入れてください。
連絡が無ければ心配させてしまうだけでなく、家に訪問される、無断欠勤として処分されるなどの大事になり、ご自身にとって大きな悪影響が出てしまいます。
労働者の身の安全を保障するのも会社側の勤めの一環ですので、事情を伝えれば無理を言ってくることはありません。
もしそれでもご自身にとって不都合な問題がある時は休職、異動、退職などの選択肢も含めて今後のご自身の振る舞いを検討していきましょう。