「適応障害なので退職を伝える際は電話で伝えたい」
「できることなら会話せず退職を伝えたい」
など、適応障害やうつ病など精神的な問題がある際の退職の伝え方、および伝える際の注意点について解説します。
適応障害で退職する際の伝え方と注意点
伝える際の例文として
○○部長
お疲れ様です、(自分の名前)です。
始業前の突然のご連絡で申し訳ございません。
この度、適応障害により勤務の継続が難しいとドクターストップがかかり、退職を決意したのでご連絡させていただきました。
突然の申し出になり誠に申し訳ございませんが、何卒ご理解いただけますと幸いです。
こうした文章を直接会って、もしくは電話かメールで伝えてください。
適応障害で心が苦しい時に長々と退職の意思を伝えるのはご自身の心への負担が大き過ぎます。とはいえ「辞めます」だけでは相手も驚いてしまうだけです。
そのため、余計なことを言うのは避けてシンプルに必要最低限のことだけ伝えてください。
適応障害での退職の伝え方は一身上の都合でも良い
原則として法的には退職理由を用意する必要はありませんので、言わなくとも退職はできま。また、極論ですが退職理由が嘘であっても問題はありません。
適応障害や精神的な問題がある際は相手が理解してくれない可能性があるので下手に誤解を招く伝え方をするよりも「一身上の都合」とだけ伝えた方がスムーズに辞めやすいです。そのため、退職理由の説明が難しいと思ったら一身上の都合と伝えてしまいましょう。
適応障害なら退職は電話で問題無い
直接会っての伝達が難しい時は電話を介しての退職連絡でも問題はありません。
一般的なマナーとしては直接会って伝える方が好ましいと思われやすいですが、適応障害にかかっている状況であれば直接会うこと自体が心に負担を強いることになります。そのため、マナーよりもご自身の身の安全を第一に行動すべきです。
退職の伝え方に法的な規定はない
退職を伝える際の伝達方法には法的な規定がありません。そのため、電話やメール、もしくはLineでの伝達でも成立します。
以上のことから、直接会って伝えるのが難しい時は電話で伝えても問題はありません。
証拠だけは残しておいた方が良い
ただし、退職を伝えたことは証拠として残しておく方が好ましいです。
退職の意思を伝えた証拠が無ければ後日「言った・言わない」問題が起こり退職が成立しにくくなります。そのため、どんな伝達手段であっても退職の意思を伝えた証拠だけは残しておきましょう。
【証拠の例】
- 電話 ⇒ 通話を録音しておく
- メール ⇒ 配信履歴を保存
- 退職届 ⇒ 退職届を内容証明郵便で郵送
退職届の場合、普通郵便でも届けることができますが、確実に証拠を残す場合は内容証明郵便で送って配送履歴が残すのが確実です。
適応障害での退職届の書き方
退職届
私儀
この度一身上の都合により○○年○○月○○日退職いたします。
○○年○○月○○日
○○部○○課
(自分の氏名)
株式会社○○
代表取締役 ○○殿
基本的には退職届には一身上の都合と書けば問題ありません。
精神的な問題で辞める際の伝え方や退職届のテンプレートについてより詳しくは以下の記事もご参考になさってください。
メールという伝え方でも問題は無い
電話と同様にメールで退職を伝えても法的には問題ありません。
むしろメールの配信履歴が証拠として残るのでより確実な伝達手段となります。
適応障害で退職を相手に言えない時の選択肢になる
直接会うことも電話で話すことも難しいほど追い込まれている状況であればメールは選択肢になります。
適応障害の原因が職場や退職を伝える相手(上司など)にある場合は話をすることも難しいですから終始メールでやりとりして退職を伝えましょう。
ご自身の身の安全を第一に行動する
適応障害の解決方法は原因となっているものをご自身の身の周りから取り除くことにあります。
適応障害の原因が仕事(会社)にある場合、直接職場に行って退職を伝えることは原因となる仕事に向き合うことになるため心の負担が大き過ぎます。
心の負担を抱え過ぎないためにも、直接会社に行くことなく電話やメールで退職を伝えるのは適応障害で退職を伝える際の適切な選択肢と言えますので、退職時はご自身の身の安全を第一に伝達手段を検討してください。
【補足】どうしても退職を言えない時は退職代行に相談する
- 自分で退職の電話を切り出すのは難しい
- でも、どうしても辞めたい
という方であれば労働組合が運営する退職代行サービスに相談して辞めてしまいましょう。
確実に退職が成立します。
退職代行はお手持ちのスマホから電話やLINE(メールでも可)か相談が可能。希望があれば相談したその日から代行業者が動き出してくれます。
代行業者が動き出した瞬間からあなたは職場に行くことも連絡する必要も無くなるので、早ければ相談した即日から会社に行かなくても良い状態になれます。
具体的には、
- 確実に退職が成立する
- 法律に則って退職処理するので法的なトラブルがない
- 自分で対応する必要が無いので退職にまつわるストレスが無い
等があり、希望者には有給消化や未払いの交渉もしてくれます。
そのため、あなたが
- 自分で退職の電話を切り出すのは難しい
- でも、どうしても辞めたい
という状況であれば労働組合が運営する退職代行サービスに相談して辞めてしまいましょう。
適応障害なら即日退職も成立する
適応障害の場合、条件によっては即日での退職も可能になります。
やむを得ない理由に該当(民法第628条)
第六百二十七条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
民法第627条
退職は本来であれば就業規則に則って○○ヶ月前に退職を申し出る、もしくは民法第627条に基づき最短でも2週間前に退職を申し出る必要があるので、電話やメールで急に「辞めます」と伝えただけで退職できるものではありません。
ですが、適応障害の場合はやむを得ない理由に該当するので例外的に民法第628条による退職が成立します。
(やむを得ない事由による雇用の解除)
民法第628条
第六百二十八条 当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。
民法第628条よりやむを得ない事由が発生した場合、使用者(会社)と労働者(会社員)、双方の合意に基づき即日退職が成立します。
やむを得ない事由としては怪我・病気、家族の介護、出産などによりどうしても勤務が出来ない場合が該当しますが、適応障害により勤務の継続が難しい場合はやむを得ない事由に該当します。
そのため、適応障害という事情を伝えて会社が理解をしてくれれば電話やメールで退職を伝えても例外的に退職の成立条件が満たされることになります。
診断書があれば退職の必要性を証明しやすい
精神的な問題は相手に理解されにくいことが多いですが、そんな時は心療内科で診断書を用意してもらうことでドクターストップを証明できるので、会社側に適応障害によって勤務が難しく辞めざるを得ない旨を理解してもらいやすくなります。
電話やメールで伝える際にも「診断書を発行してもらいました。ドクターストップで会社での勤務が難しい旨を診断されたので辞めさせてください。」と事情を伝えましょう。
【補足】ハラスメント被害の場合
ハラスメント被害によって適応障害にな場合、職場に行くと症状が再発するだけです。
その為、この場合は必ず電話、もしくはメールなど非対面での伝達をしていただきご自身の身の安全を第一に考えてください。
第五条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
労働契約法 | e-Gov法令検索
ハラスメントは労働者の心と体の安全に影響がある行為であり、労働契約法5条に基づき使用者である会社側が労働者の生命、身体などの安全を確保しつつ労働することができる環境を用意できていない、となります。
加えて、ハラスメントはハラスメント防止法(正式名称:改正労働施策総合推進法)違反にも該当します。
いずれの場合でも法律に反した状況であることに違いはありません。
ハラスメントを相談して早々に会社側が認めてくれるなら問題ありませんが、どうしても会社が納得してくれない時は会社側に「身の安全が保障されないため」と伝えて退職処理を進めましょう。
精神的な問題で即日退職をしたい時は以下の記事もご参考になさってください。
関連記事:うつ病で即日退職する手順と辞めさせてもらえない時の対処法
適応障害で辞める際の注意点
バックレは避ける
いくら嫌な職場であったとしてもバックレや無断欠勤による退職は認められていません。
バックレによる退職を行うと「違法行為」となり労働者に対して損害賠償請求や懲戒解雇を与えられる危険があります。中でも懲戒解雇になると以下の問題が起こります。
- 本来貰えるはずだった退職金の一部または全部不支給
- 転職時にマイナスな印象を与えることになる
また、懲戒解雇になると転職活動時に相手先に伝えなければ経歴詐称になるので必ず伝える必要があります。つまり、懲戒解雇になるとその事実が必ず転職先にはバレますので今後の転職活動においてご自身の印象が悪くなり不利益しかありません。
適応障害になるほどのストレスを感じる職場であればバックレをしたくなるのも理解はできます。
ですが、バックレによってご自身に不利益が生じるのは好ましくはありませんので、辞める際はバックレることなく法に則って確実・安全に辞めましょう。
適応障害なら退職の挨拶は控えた方が良い
適応障害は不安感や抑うつ気分、出勤拒否、対人トラブルなどに繋がる症状です。そのため、挨拶という対人対応する行為に対しては心理的な負担が大き過ぎることがあります。
よって、適応障害であるなら無理に退職の挨拶を行う必要はありません。
どうしても挨拶したい場合、退職後でも構いませんのでご自身の気持ちが落ち着いてから連絡しましょう。
退職後に傷病手当を申請する場合
適応障害で退職した後しばらくの期間を働かず療養の期間に充てる場合、傷病手当を申請して給付を受け取ることができます。
ただし、申請の際には医師の証明が必要なので通院して働けない状態であることを証明する必要があります。
失業手当と併用はできない
また、傷病手当は失業手当と同時に受給することができません。
なぜなら傷病手当は働けない状態の証明が必要であり、一方の失業手当は働けることが前提として支給される制度のため、双方の制度は利用条件が真逆なためです。
そのため、退職後は傷病手当金の支給を受けながら療養し、体調が回復して仕事に復帰できる状態になったときに失業手当を受給するといった段取りで受給をしましょう。
まとめ
適応障害になると退職の伝達をするのも人一倍のハードルがあるもの。
そのため、直接会って伝えることに固執することなく、電話や退職代行などご自身の心理的な負担が少ない方法で退職を伝えてください。
いまは焦るタイミングではありません。次の動き出しは心の回復が落ち着いてからで問題はありませんので、まずは退職してご自身の心の回復に努めてくださいね。