転職して1年半で転職しても問題無い理由、および転職に対してより注意した方が良い視点・考え方について解説します。
転職して1年半で転職しても問題は無い
退職と就業は労働者の権利
第六百二十七条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
民法第627条
民法第627条により退職の自由は労働者の権利として定められています。
日本国憲法(昭和21年憲法)第22条第1項においては、「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択 の自由を有する。」 と規定されており、これは、職業選択の自由を保障しているものである。
日本国憲法第22条第1項|厚生労働省
第二十二条 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
日本国憲法第22条第1項 | e-Gov法令検索
加えて、職業選択の自由も法で定められています。
以上のことから勤務期間を問わず退職と就業は労働者の権利として法で定められています。
合わない環境に時間を費やす方がもったいない
「石の上にも3年」などと言われてきましたが必ずしも3年が何かを保障してくれるわけではありません。
長年勤めたからと言って有利なわけでも無い
重要なのはその職場でどんなスキルを得たのか?どんな実力が付いたのか?です。仮に長く勤めたとしても力が付いていなければ社外に出た時に評価してもらえません。
言い換えると社外に出た時に客観的に重宝される実力がついていれば勤続年数は大きな問題にはなりません。
早く動いた方が転職に有利なことも
転職には「年齢制限」があるので、制限に近い方からすると時間を費やすことで制限に引っかかり応募要件から外れてしまうこともあります。その為、早く動いた方が転職に有利になることもあります。
実際に1年半で退職した方の声
26歳女です。転職して1年半経過しました。
今後どのように対応すべきか、アドバイスをいただけますと幸いです。【状況】
26歳女です。転職して1年半経過しました。 – 今後どのように対応すべきか… – Yahoo!知恵袋
仕事に慣れず、ストレスから毎日動悸がしており、最近は職場で涙が出そうになります。
(テレワークの日は眠れますが、週に1回
出社した日の夜は動悸で眠れなくなることがあります。)
1年半で転職2回目という方も
転職先が合わないことで1年で辞める方もいる
年数だけでは計れない
1年前後で辞めて良かったかどうか?は個々人によって判断が異なります。つまり、勤続年数を基準にしただけでは辞めて良かった・続ければ良かったの判断はしようがない、ということです。
環境と得たものによる
就業先でハラスメントや人間関係トラブルで勤務しにくい場合は在籍し続けるよりも退職・転職をした方が好ましいです。また、「合わない環境に時間を費やす方がもったいない」でもお伝えしたように『その職場でどんなスキルを得たのか?どんな実力が付いたのか?』は就業期間以上に大事なことと言えます。
勤続年数で計るよりも、得たものや満足感などを自分軸で判断した方が良いでしょう。
辞める方々の退職理由として
厚生労働省「令和3年雇用動向調査結果の概要」の「転職入職者が前職を辞めた理由」によると、前職を辞めた理由として
- 職場の人間関係が好ましくなかった
- 仕事の内容に興味を持てなかった
- 能力・個性・資格を活かせなかった
- 会社の将来が不安だった
という理由が一定の割合を示しており、人間関係や仕事内容に満足できずに退職してしまう方が一定数いることがわかっています。
他にも求人情報サイトを運営するビズヒッツが、仕事から逃げたくなったことがある男女500人を対象に実施した「仕事から逃げたくなる瞬間に関する意識調査」の結果もあります。
以上のことから「業務に対する不満」や「職場の人間関係に対する不満」が退職理由に大きく影響していることがわかります。
その為、今の職場で同じような悩みを抱えているなら転職を検討しても決して不自然なことではありません。
転職する際の注意点
可能な限り在職中に転職活動を
退職後に転職活動をすると、スムーズに決まらなかった時に「金銭的な不安」「転職先が決まらない無職状態への不安」が同時に襲ってくるので、かなり苦しい状況になります。
そのため、可能な限り在職中に転職活動をし、キャリアを空けることなく且つ金銭的な不安に陥ることの無い活動をした方が良いです。
自己分析でほぼ決まる
自己分析を行い、分析した結果として自分にあう職場を選ばないと再度退職・転職が繰り返されてしまいます。その為、転職活動は自己分析でほぼ決まると考えても過言ではありません。
分析は独りよがりになることなく、周囲の人に「自分とはどんな人間か?」等と相談しながら自己分析を進めてみてください。
イメージだけで会社を選ばない
知名度がある、大手だから、といったイメージだけで会社を選ぶと実は自分には合わない会社である、と後になって後悔することも少なくありません。
口コミから社風も調べる
人づてに会社の内情を聞く、SNSで該当会社の社員さんをチェックする、などを行うと社風が見えてきます。後になって「職場の雰囲気が合わなかった」などとならないように、できる限り希望する会社の情報を仕入れておきましょう。
自分がやりたいことをベースに選ぶ
会社の知名度よりも「その会社で何をしたいのか?」の方が重要です。自己分析から自分のできること・好きなこと・やりたいことを割り出し、希望が実現できる職場かどうか?という判断で会社を選びましょう。
退職理由を話せるようにしておく
前職を辞めた理由を客観的に面接官に伝えることが転職活動では必要になります。
好き・嫌いという感情論に基づく不平不満ではなく、自身の希望するキャリアと前職での問題がどこにあったのか?転職することで希望は叶えられるのか?(志望理由)などを伝えられるように予めまとめておきましょう。
実績や強みをまとめておく
転職先に「この人は欲しい」と思わせることができなければ採用はされません。そのため、「合わない環境に時間を費やす方がもったいない」でもお伝えしたように、社外に出た時に評価される自身の実績・強みをまとめておきましょう。
それが転職先に対するご自身のアピールポイントになります。
退職前の注意点
異動という選択肢も検討する
部署異動ができる規模の会社であれば退職の前に異動という選択肢もあります。
異動することで希望の職種に移れるのであれば異動も視野に入れてみましょう。
ですが、異動制度が無い、異動しても希望の職種が無い、という職場環境であれば異動ではなく転職を選択した方が良いです。
バックレは避ける
バックレや無断欠勤による退職は認められていません。そのため、バックレや無断欠勤による退職を行うと「違法行為」となり労働者に対して損害賠償請求や懲戒解雇を与えられる危険があります。
中でも懲戒解雇になると以下の問題が起こります。
- 本来貰えるはずだった退職金の一部または全部不支給
- 転職時にマイナスな印象を与えることになる
また、懲戒解雇になると転職活動時に相手先に伝えなければ経歴詐称になるので必ず伝える必要があります。つまり、懲戒解雇になるとその事実が必ず転職先にはバレますので転職活動においてご自身の印象が悪くなり不利益しかありません。
バックレや無断欠勤は退職時にはリスクしかありませんので、辞めるなら法に則って確実に・安全に辞めましょう。
転職先は周囲に言わない
次の転職先は言わない方が良いです。
なぜなら次の職場の具体的な会社名を伝えると、余計な詮索をされるので万が一にも「転職先に迷惑がかかる」「自分にとって不利益な行為をされる」などのリスクがあります。
仮に質問されたとしても「○○に力を入れている会社なんです」などと事業内容を取り上げて抽象的に答えるに留めておきましょう。
退職理由に会社への不平不満は避ける
辞める際に会社への不平・不満を挙げると心証が悪くなるので避けた方が良いです。心証を損ね、万が一にも感情的なやりとりになってしまうと円満退社が出来なくなるか、退職交渉自体が進まなくなる可能性もあります。
また、「不満を解消するから会社に残って欲しい」と引き留める口実を相手に与えてしまい、結果として辞めにくくなることもあります。
そのため、退職理由では会社への不平不満は避けて伝えましょう。
有給を消化して辞める
第三十九条 使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。
労働基準法第三十九条|e-Gov法令検索
有給は労働者の権利として認められており会社はその権利を拒否することはできません。また、有給の権利が残っていても退職すれば権利は消滅してしまいます。よって、有給が残っている場合は必ず退職前に有給を消化してしまいましょう。
退職時に有給が使えないトラブルへの対処法について詳しくは以下の記事もご参考になさってください。
引き継ぎを行う
会社と決めた退職日までの中で有給消化などの期間を調整し、退職日までに間に合うよう引き継ぎを行います。もし間に合わない場合は後任の方にために引き継ぎ資料(引き継ぎマニュアル)を用意しておきましょう。
なお、引き継ぎ資料には以下を記載してください。
- 業務の社内での位置付け
- 業務の流れ(フローチャートなど)
- 業務に関わる社内外の関係者
- 過去に起こったトラブルやその対処法のノウハウ
- 顧客情報など必要なデータ
見ていただくとわかるように、業務や作業の繋がり・業務・作業に関わる関係者をそれぞれ明確化しておく資料になります。また、引き継ぎ資料は自分だけしかわからない言葉でまとめることなく、誰が見ても理解できる言葉でまとめてください。
原則は就業規則を元に辞める
辞める2ヶ月前に伝える、3ヶ月前に伝える、など会社特有の規定があるかと思いますので、原則は就業規則に従って退職手続きを進めましょう。
なお、退職時は「退職願」ではなく『退職届』を会社側に渡してください。
退職願と退職届の違い
退職願は辞表の意思表明をあらわすもので、雇用者側の受理・承諾を求めます。雇用者との合意が必要となるのでこれを雇用者に受理・承諾してもらわなければ退職の効果は生じません。
退職届は労働契約の一方的な解約の意思、辞職の意思表示を表すもので、出してしまうと取り下げはできません。退職届の場合、雇用者に伝えたら雇用者の受理・承諾がなくとも、2週間の経過により、退職の効果が生じます。
退職願はそれ自身に法的な効力が生じないので退職願いが受理されないこと自体には違法性がありません。よって、退職を成立させたいときは「退職届」を会社側に提出してください。退職届であれば退職の意思を示したことになるので退職が成立します。
辞めさせてくれない時は退職代行に相談
- 退職を自分で切り出すのは難しい
- 退職相談をしたのに辞めさせてくれない
- でも、どうしても辞めたい
という方であれば労働組合が運営する退職代行サービスに相談して辞めてしまいましょう。
確実に退職が成立します。
退職代行はお手持ちのスマホから電話やLINE(メールでも可)か相談が可能。希望があれば相談したその日から代行業者が動き出してくれます。
代行業者が動き出した瞬間からあなたは職場に行くことも連絡する必要も無くなるので、早ければ相談した即日から会社に行かなくても良い状態になれます。
具体的には、
- 確実に退職が成立する
- 法律に則って退職処理するので法的なトラブルがない
- 自分で対応する必要が無いので退職にまつわるストレスが無い
等があり、希望者には有給消化や未払いの交渉もしてくれますので退職代行費を支払う以上の利用メリットがあります。
そのため、あなたが
- 退職を自分で切り出すのは難しい
- 退職相談をしたのに辞めさせてくれない
- でも、どうしても辞めたい
という状況であれば労働組合が運営する退職代行サービスに相談して辞めてしまいましょう。
退職の書類を確認する
- 雇用保険被保険者証
- 年金手帳
- 源泉徴収票
- 離職票
- 扶養控除等(異動)申告書
- 健康保険被扶養者(異動)届
- 給与振込先届
- 健康診断書
など、退職時に必要な書類を会社から郵送してもらうよう会社側に伝えましょう。退職後の失業手当の申請、次の会社に入社する際の手続きなどで必要になります。
退職者に対しては退職後に会社側から書類を送ってもらうのが一般的なので過度に心配する必要はありませんが、退職代行利用時に代行業者に対して「辞めた後に必要書類を送るように伝えておいてください。」などと合わせて伝達しておくと確実です。
転職エージェントに登録する
退職後にスムーズに転職が成立するよう在籍中から転職活動を行いましょう。
そのためにも事前に転職エージェントへ登録をして勤務しながらの転職活動をサポートしてもらいましょう。
新入社員の方が転職するなら「第二新卒(新卒入社で2~3年)」として見られるため、第二新卒に特化したキャリアスタートに登録しておくとご自身に合った転職先を探しやすいです。
【第二新卒に強い転職エージェント】
キャリアの再考をするならキャリアコーチングに相談する
- 自分だけのキャリア形成を再検討したい
- もっと自分にあった会社や働き方を再検討したい
- 転職以外の選択肢もあるのではないか?
など、より幅広い視点で今後のご自身のキャリアを検討したい場合はキャリアコーチングに相談してみるのがおすすめ。
キャリアコーチングは就職支援ではなくあなただけのキャリア形成をするにはどうすればいいか?をサポートしてくれる支援サービス。学校や親では教えてくれない、転職・就職だけでは無い別の選択肢(独立・フリーランスなど)も含めたあなた自身にとって最適なキャリア構築の仕方を一緒になって考えてくれます。
変化が急激な時代です。
価値観や働き方などが多用に広がる中で、
- 本当に自分がやりたいこと
- 本当に自分にあったキャリア形成
をいま一度再検討する事は非常に理にかなっています。
- 次は自分にあった会社にしたい
- 会社勤めだと「違う」気がする
- 今の内に自分だけのキャリアを再検討したい
という方はキャリアコーチングに相談してご自身の今後のキャリア形成に活かしてください。
まとめ
在籍期間がまったく重要ではないとは言いませんが、仮に短いとしてもそれを覆せるだけの理由があれば問題はありません。
嫌な場所・自分にとって合わない場所で苦しみながら人生の時間を費やす方が問題ですので、どうしてもの際は転職して1年半で再度転職を行うことも選択肢として用意しておきましょう。