会社を辞める際、優れなくスムーズに辞めるために確実に退職できる理由を考えることも少なくありませんが、実は確実に退職できる理由というものは存在しません。(他の理由と比べて止めやすい退職理由で良ければありますが確実なものは存在しません、ということです。)
そこで本記事では、退職理由の用意以上に大切な確実に退職を実現するための諸条件について解説していきます。
確実に退職できる理由は存在しない
残念ながら確実に退職できる理由は存在しません。
一般的には、親の介護、寿退社、実家を継ぐ、などが確実に退職できる理由の例として挙がることが多いですが、実のところそれらの理由では確実に退職できる条件を満たしていません。
引き止められない退職理由にはならない
例えば親の介護の場合、介護をしながら空き時間でリモートワークという言い訳が会社側からすると通せます。
寿退社の場合、結婚後にも活躍してくれということもできますし、実家を継ぐというのは一見すると理由のように見えますが実質的には転職することと変わりはありません。会社側の目線で考えるならば他の会社に行くことが今の会社を辞めることの納得できる理由にはなりません。
よって、一般的によく言われるこうした理由は確実な理由にはなり得ないのです。
これらの理由は正しく言うならば、確実に退職できるわけにはならないが、相手の心情に訴えて比較的辞めやすい理由として挙げられる退職理由の例、となります。
出来る限り会社側も納得して止めやすくなる退職理由を用意したい時は、以下の記事もご参考になさってください。
関連記事:退職理由で最強なおすすめの内容はドクターストップか法的な訴求
そもそも退職理由の用意は法的な義務ではない
民法第627条に基づき退職は定義されますが、止める際は解約の意思を伝えれば退職が成立することが定められています。
第六百二十七条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
民法第627条
そのため退職理由は必要ではなく、あえて伝えるとしても「一身上の理由」だけでも法的には問題なく成立するのです。
すぐに退職できる理由として重宝されるだけ
親の介護、寿退社、実家を継ぐ、などの理由は確実なものではありませんが「だったら仕方がないよね」と相手に思ってもらうための理由でしかありません。すぐに退職しやすい理由として挙げられることが多い、というだけです。
【参考】家庭の事情など例文
他にも、以下の理由や伝え方はよく使われる内容と言えます。
会社側も納得したいだけ
相手側としても自分の会社の社員が辞めるということに何かしらの納得感を保ちたいがために、心情的に納得感を得やすい理由として親の介護、寿退社、実家を継ぐが挙げられている、というだけです。
そのため、以上を踏まえると確実に退職を成立させたいのであれば、退職理由を用意するのではなく、確実に退職できる法的な条件を元に退職を伝えるのが最適と言えます。
確実に退職できる条件
【前提】強制労働は禁止されています
(強制労働の禁止) 第五条 使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によつて、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。
労働基準法 第5条
退職を申し出たのにもかかわらず「辞めさせることはできない」と言われた際は脅し文句になりパワハラに該当します。
また、労働基準法第5条より使用者(会社側)は労働者の意思に反した労働を強制してはいけないと定められています。そのため、退職届を渡したにも拘わらず受け取らない、辞めさせることはできないと言われることは労働者の意思に反した不当な拘束に該当するため違法行為となります。
よって、労働基準法第5条違反に該当するので会社の要請に従う必要はなく、労働者が会社を辞められないということもありえません。
こうした前提条件をあらかじめ頭に用意しておくだけでも心理的な負担は軽くなりますのでぜひ覚えておいてください。
ドクターストップ
(やむを得ない事由による雇用の解除) 第六百二十八条 当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。
民法第628条
民法第628条より、やむを得ない事由が発生した場合は会社と労働者、双方の合意に基づき即日退職が成立します。
なお、やむを得ない事由としては怪我・病気、家族の介護、出産などによりどうしても勤務が出来ない場合が該当します。
例えばドクターストップがかかり診断書も用意され勤務の継続が難しいと診断された場合、医師の診断結果がやむを得ない事情に該当するため退職をすることができます。(なお、ドクターストップには、怪我や病気だけでなく精神的な問題(うつや適応障害など)も該当します。)
労働条件の相違
(労働条件の明示) 第十五条 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。 ② 前項の規定によつて明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。 ③ 前項の場合、就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から十四日以内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければならない。
労働基準法第15条
労働基準法第十五条より、労働条件の相違は即時に契約解除(即日退職)が認められています。
入社時に会社から受け取った雇用契約書と実際の現場での労働条件・仕事内容が異なる場合、その旨を会社に伝えて労働環境や業務内容を是正してもらいましょう。そして、聞き入れてもらえない場合は即日退職してしまいましょう。
ハラスメント
ハラスメントの被害を受けた場合、労働契約法5条、パワハラ防止対策義務化、それぞれに反した行為となるため違法行為となります。よって、退職を進めてください。
第五条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
労働契約法 | e-Gov法令検索
ハラスメントは労働者の心と体の安全に影響がある行為であり、ハラスメントが起こる職場ということは労働契約法5条で定められた使用者である会社側が労働者の生命、身体などの安全を確保しつつ労働することができる環境を用意できていない職場、となります。つまり、労働契約法5条に反している状況(違法な状況)ということです。
加えて、ハラスメントはハラスメント防止法(正式名称:改正労働施策総合推進法)違反にも該当します。
いずれの場合でも法律に反した状況であることに違いは無いので、会社側には「身の安全が保障されないため」と伝えてご自身の退職処理を進めましょう。
1年以上の勤務(派遣の場合)
第百三十七条 期間の定めのある労働契約(一定の事業の完了に必要な期間を定めるものを除き、その期間が一年を超えるものに限る。)を締結した労働者(第十四条第一項各号に規定する労働者を除く。)は、労働基準法の一部を改正する法律(平成十五年法律第百四号)附則第三条に規定する措置が講じられるまでの間、民法第六百二十八条の規定にかかわらず、当該労働契約の期間の初日から一年を経過した日以後においては、その使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができる。
労働基準法137条
派遣会社と有期雇用派遣として契約をしている状況であっても、労働基準法137条より勤務期間が1年以上経過している場合に限り労働者側の希望するタイミングでいつでも退職ができるため即時解約(即日退職)が成立します。つまり、1年を経過していれば「派遣を今日で辞めます」と伝えても法律上は成立します。
ただし、あくまでもこの規定は契約期間が1年を越える場合を想定したものであり、3ヶ月、半年という1年未満の契約を繰り返して累計1年という場合は適用外である点にご注意ください。
どうしても際は退職代行に相談して即日でやめる
- 退職を自分で切り出すのは難しい
- 退職相談をしたのに辞めさせてくれない
- でも、どうしても辞めたい
という方であれば労働組合が運営する退職代行サービスに相談して辞めてしまいましょう。
確実に退職が成立します。
退職代行はお手持ちのスマホから電話やLINE(メールでも可)か相談が可能。希望があれば相談したその日から代行業者が動き出してくれます。
代行業者が動き出した瞬間からあなたは職場に行くことも連絡する必要も無くなるので、早ければ相談した即日から会社に行かなくても良い状態になれます。
具体的には、
- 確実に退職が成立する
- 法律に則って退職処理するので法的なトラブルがない
- 自分で対応する必要が無いので退職にまつわるストレスが無い
等があり、希望者には有給消化や未払いの交渉、他にも退職後の会社からの電話や書類対応もサポートしてくれますので退職代行費を支払う以上の利用メリットがあります。
そのため、あなたが
- 退職を自分で切り出すのは難しい
- 退職相談をしたのに辞めさせてくれない
- でも、どうしても辞めたい
という状況であれば労働組合が運営する退職代行サービスに相談して辞めてしまいましょう。
まとめ
確実に退職できる理由を探してるぐらいですから、どうにかして今の会社を円滑に辞めたいというご状況かと思います。
こうした場合、本記事でもお伝えしたように退職理由にこだわるよりも確実に退職できる条件から退職を探っていきましょう。
そして、もし諸条件がご自身の中で整っていない場合は、相手の心情に訴えて退職しやすい理由を用意する、もしくはそれが難しければ退職代行に相談して早々に退職処理を済ませてください。
なお、精神的な理由という周囲に理解されにくい事情があって退職を伝えたい時は、以下の記事もご参考になさってください。