「家庭の事情」を退職理由にする際の注意点、および確実に辞めるための条件・手順について解説します。
退職理由に家庭の事情と嘘をつく際の注意点
モラルは別として嘘はバレなければ問題にはならない
前提として理解しておきたいのですが、退職理由の用意は法で規定されているわけではありません。その為、退職理由が無くても退職は出来ます。
極論ですが、そもそも退職理由を用意する必要性が無い以上、仮に嘘をついたとしても相手にバレなければ問題にはなりません。(良い・悪いという感情論を抜きにして法的な事実としてのお話です。)
「一身上の都合」で良い
どうしても理由を用意する必要があり、伝えなければならない時は「一身上の都合」と伝えれば問題はありません。
嘘をつくなら相手に信じ込ませろ
嘘を推奨するわけではありませんが、仮に嘘をつくなら相手に信じてもらえる理由を用意しましょう。
退職理由の用意は法で規定されているわけではありませんが、もしも嘘をついてしまうなら万が一にもバレてしまったときに退職することではなく、『退職に際して嘘をついたこと』に対して何かしらの難癖をつけられて退職がスムーズに進まなくなるリスクはあります。
家庭の事情を理由にしても退職を引き止められる場合
「家庭の事情で~、」だけでは会社側に『一時的に休めばいいよね?』『リモートワークで対応で切るねよ?』『シフトを減らすから対応できないか?』などという反論の機会を残すことになります。
会社側に反論されない理由を用意する
どうしても辞めたい場合、
- 家業を継ぐので~
- 親の介護で~
など、会社側からするとサポートが出来ない「どうしようもない理由」を用意した上で家庭の事情という退職理由を伝えてください。
会社側に反論されにくい最強の退職理由を用意したい時は以下の記事もご参考になさってください。
家庭の事情だからといって即日で退職できるとは限らない
家庭の事情は伝え方次第で辞めやすい退職理由にはなりますが、退職できることと即日退職することは別問題です。
原則として即日退職は認められていません。
(やむを得ない事由による雇用の解除)
民法第628条
第六百二十八条 当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。
民法第628条より「やむを得ない事由」が発生した場合、会社と労働者、双方の合意に基づいて例外的に即日退職が成立します。
【やむを得ない事由の例】
- 契約外の仕事をさせられる
- 使用者が労働者の生命・身体に危険を及ぼす労働を命じた
- 派遣先の上司からパワハラやモラハラを受けている
- 賃金不払いなどの重要な債務不履行が発生した
- 労働者自身が負傷・疾病・心身の障害などにより就業不能に陥った
- 親や家族の介護が必要になった
- 家族の転勤などにより急な引っ越しが決まった
- 業務内容が法令に違反している
- 両親や子供の病気、または介護
など
やむを得ない事由があり、且つ会社がその事情を承認してくれれば即日退職は可能ですが、そうで無ければ原則は会社の退職規定に従って退職処理を進めてください。
家庭の事情で使える例
- 親/子供の病気・介護のため
- 家業を継ぐため
- 引っ越し
- パートナーの転勤
- 寿退社
- 妊娠
家庭の事情という枠組み、且つ出来る限り会社からの引き留めや代替案が少ない理由としてはこれらの理由が挙げられます。
家庭の事情を使える際の例文
親の病気や介護で使う例文
両親が高齢となり介護が必要になりました。介護と両立して現在の仕事を続けるのは難しく、退職という形を取らせていただければと思います。
家業を継ぐ場合
家業をしている両親が高齢となり、仕事を続けるのが困難な状況になってきました。 私も将来は家業を継ぐつもりでしたので、これを機に両親を手伝いたいと考えています。
そのため、大変身勝手とは存じますが退職させていただくことを決心しました。
引っ越しの場合
パートナーの転勤に伴い、家族で引っ越しをするため現在の職場での勤務が難しくなりました。
そのため、大変身勝手とは存じますが##月をもって退職させていただくことを決心しました。
寿退社の場合
結婚に伴い今後は出産・育児に専念したいので、夫婦で話し合った結果##月いっぱいで退職させていただきたいと考えています。
なお、引っ越しの場合はご時世柄リモートワークという選択肢があるので、リモートワークに関与しない業種、もしくは寿退社の場合に近い表現で「引っ越しに伴い家庭に専念します」などと理由を加えておくことで引き留められにくくなります。
退職理由の伝え方について詳しくは以下の記事もご参考になさってください。
【体験談】家庭の事情で退職した人の事例
おはようございます😊
— 🐯かずりん🐯Bigfumi10/15🎙 (@umechandaisuki_) July 30, 2022
毎日暑いですね😫
職場では、仲良しのさっちゃんが昨日付で退職しました😭はい…泣きました🥺
家庭の事情で長野に帰るそうです😅
甲子園で一緒してくれて知ってる人もいると思いますが仲良くしてくれてありがとでした😊
さぁ今日も🐯は勝つぞー👍👍
よろしゅう(*ˊᗜˋ*)ノ
知恵袋でも体験者は少なくない
家庭の事情で仕事が続けられないと会社に申し出ました。
家庭の事情で仕事が続けられないと会社に申し出ました。 – 詳細はあま… – Yahoo!知恵袋
詳細はあまり言いたくないことなので、プライベートなことなので詳細は控えさせていただきたいと言いましたが、「家庭の事情だけでは辞められない、家庭の事情の詳細を」と言われました。どうしても言わなきゃだめなのでしょうか。
パートの退職の質問です。家庭の急な事情により、急ぎ退職したい旨と今後も出勤できない事を社員にラインで連絡しました。
パートの退職の質問です。家庭の急な事情により、急ぎ退職したい旨と今後も出… – Yahoo!知恵袋
家庭の事情なら仕方ない、手続きはあとで連絡しますとラインで返事をいただきました。
退職の旨伝えてから出勤しておらず、手続きもまだ連絡きていませんが、これって、ブッチという扱いになってしまうのでしょうか?
詳細を伝える必要は無い
中には家庭の事情の詳細を掘り下げてくる担当もいますが、「退職理由に家庭の事情と嘘をつく際の注意点」でもお伝えしたように、前提として「退職理由を伝えなければならい」といった類の法律はありません。その為、理由を伝えなくとも問題にはなりませんし、会社の要請に従う必要もありません。
何か言われたとしても
- プライベートな内容なので詳細は控えさせていただきます
- 一身上の都合です、申し訳ございません
などと伝えるだけで構いません。
仮にその結果として退職を認められないと言われたら退職届を内容証明郵便で会社に郵送し、辞める意志を明確に証拠として残した上で退職を進めれば問題はありません。
確実に辞めたいなら理由の用意よりも退職条件を整える方が重要
正社員の場合
民法第627条に沿って辞める
第六百二十七条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
民法第627条
民法第627条により退職の自由は労働者の権利として定められています。
仮に会社から引き止められたとしても会社には強制力はないので、退職が出来ないということはありません。
なお、退職時はご自身の辞める意志を会社側に伝える必要があるので「退職届」を用意して会社側に渡してください。
やむを得ない事由と診断書の用意
(やむを得ない事由による雇用の解除)
民法第628条
第六百二十八条 当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。
民法第628条により、やむを得ない事由が発生した場合は会社と労働者、双方の合意に基づき即日退職が成立します。
なお、やむを得ない事由としては怪我・病気、家族の介護、出産などによりどうしても勤務が出来ない場合が該当します。
勤務が難しいことを会社に伝え、会社側が認めてくれれば退職が成立します。
診断書で証明する
うつ病や適応障害などの精神的な問題で一見すると病気には見えない様な場合、会社側に説明して勤務が出来ないことを納得してもらうのが難しいとなれば心療内科に診てもらって診断書を用意してもらいましょう。
診断書というドクターストップの証明があると病状や勤務が難しい旨を証明できます。
労働条件の相違
(労働条件の明示)
労働基準法第15条
第十五条 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。
② 前項の規定によつて明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。
③ 前項の場合、就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から十四日以内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければならない。
労働基準法第十五条より、労働条件の相違は即時に契約解除(即日退職)が認められています。
入社時に会社から受け取った雇用契約書と実際の現場での労働条件・仕事内容が異なる場合、その旨を会社に伝えて労働環境や業務内容を是正してもらいましょう。そして、聞き入れてもらえない場合は即日退職してしまいましょう。
労働条件の相違と退職について詳しくは以下の記事もご参考になさってください。
ハラスメント
第五条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
労働契約法 | e-Gov法令検索
ハラスメントは労働者の心と体の安全に影響がある行為であり、ハラスメントが起こる職場ということは労働契約法5条で定められた使用者である会社側が労働者の生命、身体などの安全を確保しつつ労働することができる環境を用意できていない職場、となります。つまり、労働契約法5条に反している状況(違法な状況)ということです。
加えて、ハラスメントはハラスメント防止法(正式名称:改正労働施策総合推進法)違反にも該当します。
いずれの場合でも法律に反した状況であることに違いは無いので、会社側には「身の安全が保障されないため」と伝えてご自身の退職処理を進めましょう。
派遣・契約社員の場合
更新をしない
契約期間終了と共に契約を更新しなければ確実に退職が成立します。
労働基準法137条
第百三十七条 期間の定めのある労働契約(一定の事業の完了に必要な期間を定めるものを除き、その期間が一年を超えるものに限る。)を締結した労働者(第十四条第一項各号に規定する労働者を除く。)は、労働基準法の一部を改正する法律(平成十五年法律第百四号)附則第三条に規定する措置が講じられるまでの間、民法第六百二十八条の規定にかかわらず、当該労働契約の期間の初日から一年を経過した日以後においては、その使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができる。
労働基準法137条
派遣や契約社員は会社と有期雇用契約をしているので、原則として契約期間内は辞めることが出来ません。
ですが、労働基準法137条より勤務期間が1年以上経過している場合に限り労働者側の希望するタイミングでいつでも退職ができるため即時解約(即日退職)が成立します。つまり、1年を経過していれば理由を問わずに「今日で辞めます」と伝えても法律上は成立します。
パート・バイトの場合
パートやバイトの場合は契約内容によります。具体的には契約内容に労働契約が期間の定めがあるか無いか?によります。
期間の定めが無い場合は正社員の辞め方を、期間の定めがある場合は派遣・契約社員の辞め方となりますので、労働条件通知書の内容を踏まえて判断しましょう。
雇用形態の関係が無くできる手段
第三十九条 使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。
労働基準法第三十九条|e-Gov法令検索
有給は労働者の権利として認められており会社はその権利を拒否することはできません。
また、有給は正社員だけの権利ではなく正社員、派遣、パート問わず条件を満たせば有給という権利が皆一様に発生しますので雇用契約内容に関わらず有給の条件を満たしていれば誰でも有給を申請・消化することが可能です。
民法第627条で退職までに最短でも2週間が必要とされていますが、その期間は必ず勤務していなくてはいけないとは決められていません。
よって、退職の意思を伝えてからその後の2週間は有給で過ごして退職することで実質的な即日退職と同じ状況を作ることが出来ますし会社もその要請を拒否することが出来ません。また、有給が2週間以上残っている場合はそれだけ早くに実質的な退職状況を作り出すことが出来ます。
時季変更権は退職者には無効
有給に対して会社側にも「時季変更権(会社が労働者の有給取得日の時期をずらせる権利)」がありますが、時季変更権は退職予定日を超えた行使はできません。
つまり、有給消化後に退職してしまうということは、他の時季に有給休暇を与えることができないということになるため、時季変更権を行使することができず有給申請者の請求が通ります。
要するに、有給消化と同時に退職予定の方には会社からの時季変更権が成立しないということです。
よって、有給を利用すれば自分が辞めたいというタイミングで意図的に辞めることができます。
確実に退職する方法
1.法に則って辞める
「正社員の場合」でもお伝えしたように民法第627条により退職の自由は労働者の権利として定められています。また、その権利を会社は拒否することが出来ません。
そのため、「退職届」会社側に渡して退職を伝えれば2週間後に退職が成立します。
退職届を受け取ってもらえない場合
事情があり退職届を直接渡すことが出来ない、もしくは相談したのに受け取ってもらえない場合は配達記録付き内容証明郵便で退職届を郵送してください。
会社側に退職届が届けられたことが証明できるため退職の意思を伝えた証拠になります。
また他にも
- 退職の旨を記載したメールを送る
- 録音しながら口頭で伝える
等の手段を用いて退職の意思(解約の申入れ)を伝えるのも有効です。
口頭で伝えることもできますが、中には「言った・言わない」とうやむやにされる可能性もあるため、退職届をはじめとして何かしらの証拠を残して伝えた方が確実です。
2.どうしてもの際は退職代行に相談する
- 退職を自分で切り出すのは難しい
- 相談したのに辞めさせてくれない
- でも、どうしても辞めたい
という方であれば労働組合が運営する退職代行サービスに相談して辞めてしまいましょう。
確実に退職が成立します。
退職代行はお手持ちのスマホから電話やLINE(メールでも可)か相談が可能。希望があれば相談したその日から代行業者が動き出してくれます。
代行業者が動き出した瞬間からあなたは職場に行くことも連絡する必要も無くなるので、早ければ相談した即日から会社に行かなくても良い状態になれます。
具体的には、
- 確実に退職が成立する
- 法律に則って退職処理するので法的なトラブルがない
- 自分で対応する必要が無いので退職にまつわるストレスが無い
等があり、希望者には有給消化や未払いの交渉もしてくれますので退職代行費を支払う以上の利用メリットがあります。
そのため、あなたが
- 退職を自分で切り出すのは難しい
- 退職相談をしたのに辞めさせてくれない
- でも、どうしても辞めたい
という状況であれば労働組合が運営する退職代行サービスに相談して辞めてしまいましょう。
まとめ
本当のことであっても嘘であっても家庭の事情は伝え方次第で会社側に反論の余地を残してしまう可能性があります。
その為、会社側ではサポートが難しい・代替案の提示が難しい、そんな理由を用意しつつ家庭の事情として伝えてくださいね。