派遣を1年でやめることに問題が無い理由と退職時の注意点について解説します。
派遣を1年で辞めるのは問題ない
派遣の契約期間を守っていれば良い
派遣の契約は一般的に3ヶ月や半年であることが多いので、契約更新のタイミングで更新しなければ結果として1年未満で辞めてしまうことになります。
ですが、契約は全うしていますので何も問題はありません。
1年で辞めるなら長期の部類
むしろ1年近く勤務しているなら一般的には「長期」の部類に入ります。
そのため、1年で辞めることになっても周囲から何か言われるような期間ではありませんし、契約を全うしているなら法やモラルの観点からしても問題はありません。
【体験例】1年で派遣を辞める人は少なくない
派遣を1年で辞めたのに花束をくださいました。
今日が最終出社日で、夕刻に別室に呼ばれ、正社員の方たちがお菓子をくださり、花束まで。
派遣を1年で辞めたのに花束をくださいました。今日が最終出社日で… – Yahoo!知恵袋
1年って、「ようやく使い物になってきたのに」と思うタイミングでしょうし、きっと気まずくひっそり辞めるんだろうな…と思って最終日を過ごしていたので、本当に驚きました。
派遣で1年勤務した会社を辞めました。
派遣で1年勤務した会社を辞めました。派遣会社より離職票が送られてきて区分内… – Yahoo!知恵袋
派遣会社より離職票が送られてきて区分内容は『本人が希望したが紹介できる仕事が無かった』と記入してあります。
派遣はその立ち位置として考えると、
- スポットで力を貸して欲しい
- 一時的に欠員が出たから助けて欲しい
といった狙いで依頼されることが多いため、1年で辞めるとしても役割は十分に果たせていると言えます。そのため、後ろめたさを感じる必要はありません。
派遣を辞める際の注意点
派遣勤務期間の大小に拘わらずですが、派遣契約を終結させて退職する時の辞め方にだけは注意しましょう。
契約更新のタイミングで辞める
派遣社員はそのほとんどが有期雇用派遣(期間の定めがある契約内容、登録型派遣とも呼ばれる)として契約しています。
原則として契約満了を持って退職が認められます。そのため、契約期間の途中で辞めることは原則として認められていません。
退職を決めているのであれば次の契約更新の話が出てきた段階で「次は契約更新しません」と伝え、契約更新のタイミングできれいに退職しましょう。
可能な限り早めに伝えておく
既に退職が決まっている時は早い段階で派遣担当に相談しておきましょう。
解約後、現場に混乱が起きないよう次のスタッフを配置する必要があり、その段取りにも一定の時間と工数がかかるので出来る限り早く伝えてもらった方が派遣元や派遣先としては助かるためです。
派遣元や派遣先に少しでも迷惑をかけないよう、ご自身の退職時期が決まり次第、早めに相談しておきましょう。
バックレはしない
派遣の契約途中で絶対に避けたいのがバックレです。仮に辞めることに気まずさを感じていたとしてもバックレだけは避けてください。
一部の条件を除き原則として即日退職は認められていません。そのため、バックレによる退職は違法行為となり、労働者に対して損害賠償請求や懲戒解雇を与えられる危険があります。
辞めるならまずは派遣元に相談し、法に則って辞めましょう。
円満退社
派遣に限らずですが、職場を辞める際は基本的には円満退社となるように対応するのがマナーです。
バックレはしない・引継ぎを行う・原則として契約期間を全うする・可能な限り周囲へ挨拶を行う、などごく当たり前のことではありますが、辞める際になるべく周囲に迷惑がかからないよう円満退社を心がけてください。
派遣元に相談する
あなたの雇用主は派遣先ではなく派遣元となるので退職の相談はまずは派遣元となります。
誤って派遣先に先に伝えてしまうとトラブルになる可能性があるので、必ず派遣元から先に伝えてください。
引き継ぎをする
退職日までに間に合うよう引き継ぎを行います。もし間に合わない場合は後任の方にために引き継ぎ資料(引き継ぎマニュアル)を用意しておきましょう。
なお、引き継ぎ資料には以下を記載してください。
- 業務の社内での位置付け
- 業務の流れ(フローチャートなど)
- 業務に関わる社内外の関係者
- 過去に起こったトラブルやその対処法のノウハウ
- 顧客情報など必要なデータ
見ていただくとわかるように、業務や作業の繋がり・業務・作業に関わる関係者をそれぞれ明確化しておく資料になります。また、引き継ぎ資料は自分だけしかわからない言葉でまとめることなく、誰が見ても理解できる言葉でまとめてください。
損害賠償請求は気にする必要は無い
(賠償予定の禁止)
労働基準法第16条
第十六条 使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。
原則として損害賠償ありきの労働契約を結ぶことは法律で禁止されています。
契約期間を守って退社すれば何も問題はありませんが、「早期に辞めると問題があるのでは?」などと心配な場合は退職することに対して損害賠償を義務付けることは出来ませんのでご安心ください。
加えて、仮に責任がかかるとするなら派遣社員ではなく派遣社員を出向させた「派遣元」に責任がかかります。そのため、派遣社員自身が賠償責任を負う必要は原則としてはありません。
私物の回収
派遣先に私物を残している場合、誤って処分されてトラブルになる可能性があります。そのため、退職日までに私物を持ち帰っておきましょう。
なお、どうしても私物を回収する時間がない場合は、退職後に着払いで送ってもらうように伝えてください。
場合によっては派遣先に私物を置き忘れた場合は後日派遣会社の営業担当が回収し、後日派遣社員宅に郵送してくれることもありますが確実ではありません。そのため、派遣元に事情を伝えたのち派遣社員が回収してくれるのか?自分で着払い相談した方が良いのか?を調整してください。
備品の返却
派遣先の会社で備品(社員証、スマホ、PC、制服など)を受け取っている場合、派遣先もしくは派遣会社に備品を返却しましょう。
どうしても辞めさせてもらえない時の対処法
派遣元に連絡し、双方合意の上で辞める
原則として派遣は派遣期間を全うすることで退職が成立しますが、事情があって派遣契約途中に辞めたくなった場合、契約があるので簡単には辞めさせてもらえません。
この場合、まずは派遣会社へ電話をして事情を伝えてください。メールでも構いませんが電話の方がスピーディーな対応になります。
やむを得ない事由を伝える
(やむを得ない事由による雇用の解除)
民法第六百二十八条
第六百二十八条 当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。
働く期間の定めがある有期雇用派遣であっても、民法628条より「やむを得ない事由」がある場合は雇用解除が可能になります。
やむを得ない事由とは例えば以下が該当します。
【やむを得ない事由の例】
- 契約外の仕事をさせられる
- 使用者が労働者の生命・身体に危険を及ぼす労働を命じた
- 派遣先の上司からパワハラやモラハラを受けている
- 賃金不払いなどの重要な債務不履行が発生した
- 労働者自身が負傷・疾病・心身の障害などにより就業不能に陥った
- 親や家族の介護が必要になった
- 家族の転勤などにより急な引っ越しが決まった
- 業務内容が法令に違反している
- 両親や子供の病気、または介護など
など
派遣社員に正社員の退職届のような形式的な退職書類は存在しないので、辞めたいときは電話で「1週間という短期間になり申し訳ないのですが派遣を辞めたいです。理由は○○○○です」と事情を伝えてください。派遣元に事情が理解されたら合意退職が成立します。
勤務期間が1年以上経過している場合
第百三十七条 期間の定めのある労働契約(一定の事業の完了に必要な期間を定めるものを除き、その期間が一年を超えるものに限る。)を締結した労働者(第十四条第一項各号に規定する労働者を除く。)は、労働基準法の一部を改正する法律(平成十五年法律第百四号)附則第三条に規定する措置が講じられるまでの間、民法第六百二十八条の規定にかかわらず、当該労働契約の期間の初日から一年を経過した日以後においては、その使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができる。
労働基準法137条
派遣会社と有期雇用派遣として契約をしている状況であっても、労働基準法137条より勤務期間が1年以上経過している場合に限り労働者側の希望するタイミングでいつでも退職ができるため即時解約(即日退職)が成立します。つまり、1年を経過していれば「派遣を今日で辞めます」と契約途中で中途解除を申し出ても法律上は成立します。
1年で辞める方は1年未満の方と1年を超えている方に分かれますが、既に勤務が1年を超えている場合は派遣スタッフ側の希望したタイミングで退職が成立しますので、相談しても良い返事がもらえない時は労働基準法137条を理由に退職処理を進めてください。
違法行為に該当する場合
勤務先に違法性がある場合は早期の退職が成立します。
労働条件に相違がある場合
(労働条件の明示)
労働基準法第15条
第十五条 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。
② 前項の規定によつて明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。
③ 前項の場合、就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から十四日以内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければならない。
労働基準法第十五条より、労働条件の相違は即時に契約解除(即日退職)が認められています。
入社時に会社から受け取った雇用契約書と実際の現場での労働条件・仕事内容が異なる場合は即日退職が可能ですので派遣契約の中途解除が成立します。
労働条件の相違と退職について詳しくは以下の記事もご参考になさってください。
ハラスメント
第五条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
労働契約法 | e-Gov法令検索
ハラスメントは労働者の心と体の安全に影響がある行為であり、労働契約法5条に基づき使用者である会社側が労働者の生命、身体などの安全を確保しつつ労働することができる環境を用意できていない、となります。
加えて、ハラスメントはハラスメント防止法(正式名称:改正労働施策総合推進法)違反にも該当します。
いずれの場合でも法律に反した状況であることに違いは無いので、会社側には「身の安全が保障されないため」と伝えてご自身の退職処理を進めましょう。
ハラスメント被害による退職について詳しくは以下の記事もご参考になさってください。
どうしても際は退職代行に相談する
- 退職を自分で切り出すのは難しい
- 相談しても辞めさせてもらえない
- でも、どうしても辞めたい
という状況であれば労働組合が運営する退職代行サービスに相談して辞めてしまいましょう。
確実に退職が成立します。
退職代行はお手持ちのスマホから電話やLINE(メールでも可)か相談が可能。希望があれば相談したその日から代行業者が動き出してくれます。
代行業者が動き出した瞬間からあなたは職場に行くことも連絡する必要も無くなるので、早ければ相談した即日から会社に行かなくても良い状態になれます。
具体的には、
- 確実に退職が成立する
- 法律に則って退職処理するので法的なトラブルがない
- 自分で対応する必要が無いので退職にまつわるストレスが無い
等があります。
そのため、あなたが
- 自分から退職を切り出すのが難しい
- 相談しても辞めさせてもらえない
- でも、どうしても辞めたい
という状況であれば労働組合が運営する退職代行サービスに相談して辞めてしまいましょう。
まとめ
人によっては1年は長い・短い、と判断が異なるかもしれませんがあくまで価値観の話です。
就業期間に限らず、原則として契約期間を守り派遣就労しているのであれば何も問題はありませんので、継続しないなら契約更新時期が近付いてきた際に継続しないこと派遣元に伝えて綺麗に退職を進めましょう。
1年どころかもっと短期間で辞める人も多いので過度に心配する必要はありません。詳しくは以下の記事もご参考になさってください。