パワハラを相談するメール例文、および相談先へ伝える際の注意点や解決法について解説します。
我慢して抱え込まないこと
パワハラを受けている際、第一に考えて欲しいことが我慢して抱え込まないこと。抱え込みそうになるぐらいならご自身の身の安全を守るためにも遠慮なく職場を離れ休職や退職を申請しましょう。
第五条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
労働契約法 | e-Gov法令検索
ハラスメントは労働者の心と体の安全に影響がある行為に該当します。そのため、ハラスメントがある職場は労働契約法5条にある使用者である会社側が労働者の生命、身体などの安全を確保しつつ労働することができる環境を用意できていない、となります。つまり、ハラスメントがある職場はそれだけで違法行為に該当します。
加えて、ハラスメント自体もハラスメント防止法(正式名称:改正労働施策総合推進法)違反にも該当します。
いずれの場合でも法律に反した状況であることに違いありません。我慢して抱え込むのではなく、会社側に「身の安全が保障されないため」と伝えてすぐに職場を離れてください。また、どうしても職場環境が変わらないとお考えであれば同時に退職処理も進めましょう。
ハラスメント被害による退職について詳しくは以下の記事もご参考になさってください。
精神疾患を抱えるリスク
ハラスメントを受けている環境に我慢して悩みを抱え込み過ぎるとうつ病や適応障害などの精神疾患にかかるリスクもあります。
周囲に相談できるならすぐに相談、難しいならまずはご自身の身の安全を確保するためにも休職や有給による休みの確保、どうしてもの場合は退職も視野に入れてください。
厚生労働省のあかるい職場応援団によると精神障害の労災補償の支援決定件数も年々増加していることがわかっており、精神的なトラブルに苦しんでいる人は少なくないことが分かっています。
ハラスメント被害は増加傾向【厚生労働省のデータ】
厚生労働省のあかるい職場応援団によるとパワハラに対する相談件数は年々増加しています。
ハラスメントという違法行為に対しては泣き寝入りする必要は無いので我慢し続けることだけは避け、必要に応じて休職や退職などご自身に身の安全を守る逃げ道も用意しておきましょう。
パワハラ相談メールの例文
以下の例文では自分の上司が問題の加害者である場合で記載していますが、相手が上司であれ同僚であれ基本的には内容は同じです。
【件名】
上司からのパワハラに関するご相談
【本文】
○○部長
お疲れ様です。
○○課の(自分の苗字)です。
○○課長との関係性で悩んでおり、ご相談したいことがあります。
以前より○○課長から過度な暴言を受けており悩んでいます。
こちらに手落ちがあるわけでもないのに
日ごろから執拗に罵られている状況で、
場合によっては仕事の範疇を超え
私という個人に対する誹謗・中傷をしてくることもあります。
また、こちら側に仕事上の手落ちがあった際には
助言して欲しいと伝えても「何も言うことは無い」など
理不尽な対応をとられてしまいます。
こちらから歩み寄ろうにも相手にされず、
こちらに落ち度がない場合では一方的に罵られ
最近では精神的に参ってしまっており
夜も眠れず、出社するのも怖くなっております。
直接お会いしてご相談させていただきたいのですが
お時間いただくことは可能でしょうか。
何卒宜しくお願い致します。
パワハラを受けている場合、「具体的に現在受けている問題・事実」「自分の心身に影響が出ている場合はその事実」を挙げながら現在の状況を伝えます。
主観的で感情論を元に伝えてしまうと相手に理解されにくくなります。そのため、相談時は客観的な事実を元に伝えましょう。また、メールでは状況を伝えるだけとし、詳細は直接会って相談する方が良いでしょう。
他のハラスメントの例文の場合
セクハラの場合
【件名】
上司からのセクハラに関するご相談
【本文】
○○部長
お疲れ様です。
○○課の(自分の苗字)です。
○○課長との関係性で悩んでおり、ご相談したいことがあります。
以前より○○課長からセクハラを受けており悩んでいます。
具体的には■年■月からはじまり現在に至るまで継続的にセクハラを受けている状況です。
普段の会話でも性的な発言をされることが多く
また、時には必要以上にボディタッチをされることもあり
職場に行くこと自体に強いストレスを感じるようになっています。
直接お会いしてご相談させていただきたいのですが
お時間いただくことは可能でしょうか。
何卒宜しくお願い致します。
セクハラもパワハラと同様に客観的な事実を伝えてください。なお、セクハラはパワハラよりも性的な被害になりやすいので具体的にメール文面に記載すること自体にストレスを感じることもあるかと思います。
そのため、どうしても具体的な記述をしたく無い場合は詳細は省いてください。大事なことはいま現在ご自身が被害に遭って苦しんでいる状況を理解してもらうことにあります。
いじめの場合
いじめは上司が相手の場合、状況的にはパワハラと近しいため、以下の例文は同僚からいじめ被害を受けている体での文章例となります。
【件名】
いじめに関するご相談
【本文】
○○課長
お疲れ様です。
○○課の(自分の苗字)です。
現在、○○課の1名からいじめを受けており
ご相談させていただきたくご連絡させていただきました。
具体的には■年■月からはじまり
現在に至るまで継続的にいじめを受けている状況です。
話しかけても無視される
自分にだけ仕事の情報を共有してくれない
周囲の目が届かないところで暴言を吐かれる
など、日に日にいじめの内容もエスカレートしており
一向に収まる気配がない状況にあります。
会社から離れ、家にいる時も
職場でのいじめが頭から離れず
ストレスも限界にきております。
直接お会いしてご相談させていただきたいのですが
お時間いただくことは可能でしょうか。
何卒宜しくお願い致します
いじめもパワハラと同様に客観的な被害の事実を相手に伝えます。また、具体的に誰から被害を受けているのか?も併せて記述してください。
大事なことはいま現在ご自身が被害に遭って苦しんでいる事実を理解してもらうことにあります。そのため主観的・感情的にならず客観的な事実を相手に伝えましょう。
メールを送る際の注意点やデメリット
相談相手に注意
相談メールを送る相手はハラスメントの加害者に対して影響力のある立場の人である必要があります。
加害者と親密な間柄の人物であれば相談は避ける
直属の上司から被害を受けているならさらに上の上司や人事に相談する
など、ハラスメントをしてくる相手に対して影響力がある人物や部署へ相談メールを送りましょう。
客観性を元に記述する
相談メールを送る際は客観的に記述してください。
ハラスメントを受けている場合、感情的になってしまいやすいですが、相談時に感情論を載せてしまうと正確な事実が伝わらず相談先にも正確に理解してもらえなくなります。
そのため、感情をベースにした伝え方や憶測はなどは無しに事実や根拠を元に客観的な視点で現状の被害状況をまとめて相談してください。
メールの件名に注意
メールを送っても開封されない、もしくは開封されたとしても後回しにされてしまう、ということがあります。
そのため、メールの件名・書き方に一工夫しましょう。
- 相談したい旨
- どういう状況か?(ハラスメント被害を受けている?)が分かる
という内容を踏まえてメールの件名に用意すると内容がわかりやすく相手の目にも止まりやすくなります。
早期に返事が欲しい時は期日も記載する
シビアな状況ですぐにでも相談したい、対処したい、という場合、メール内容に「●月●日までにご返信いただければ幸いです。」などと返信期日も記載しておきましょう。
やりとりがふえると内容がわからなくなる
メールでのやりとりが増えると、その間に内容がぼやけて来ることがあります。そのため、メールは初動のみとし、その後は直接会って詳細を相談する方が好ましいです。
メール以外で送る方法
メールでの注意点やデメリットを懸念して、メール以外の伝達手段を検討される場合は「直接会って伝える」「電話」「ビデオ電話」「社内チャット」等で伝えることも可能です。
直接会って伝える場合
直接伝えた方が真剣みが伝わりやすい一方、内容の重さによっては急に相談しても対処が出来ず、落ち着いた状況で再度の相談となってしまうこともあります。
また、相談相手との親密度によってもすぐに相談できる、相談日程の調整に時間がかかる、などあります。
普段から一定の関係性を保っている相手であれば良いですが、そうで無い相手であればあらかじめ相談メールを送ってから相談の場を設けた方が良いでしょう。
電話で伝える場合
電話は相手の都合がわからないので、相手の都合が悪い時に電話すると、忙しい中で集中して対応してもらえない、あとで折り返すと言われて折り返しが無い、等になるリスクもあります。加えて、パワハラの証拠がある場合は相手に証拠を見せることもできません。
その為、どうしてもという緊急時や資料などは無く口頭だけで詳細を伝えられる時の手段とお考えください。
なお、電話先の相手が磯貝氏場合は次回直接会う日程だけ取り付けて、後日改めて対面して伝えてください。
ビデオ電話で伝える場合
ZOOMやSkypeなどビデオ電話で相談できれば証拠を見せることもできるし、こちらの真剣な具合も伝えやすくなります。
ただし、ビデオ電話は通常の電話と比べても場を用意するハードルが高いので、いつビデオ電話をするか?のスケジュール決めを事前にメールなどで調整してから活用してください。
社内チャットを利用する場合
社内チャットは気軽にアプローチできる反面、チャット送信先に誤作動があると万が一のトラブルになり兼ねません。
そのため、チャットは重い相談をするよりも「相談があるので時間を作って欲しい」と直接話す時間を作ってもらうために活用すると良いでしょう。
どうしても職場で耐えられなくなった場合
社外の相談先を活用する
社内で相談するのが難しい方は外部機関を頼ってみましょう。問題解決に向けて第三者機関がパワハラに対する相談を受け付けてくれます。
ハラスメントを指摘して退職
「我慢して抱え込まない」でもお伝えしたようにハラスメントは労働契約法第5条、およびハラスメント防止法の観点から違法行為に該当します。
そのため、「身の安全を確保できないため」と会社側に伝えて以後の出勤を中止し、ご自身の退職処理を進めてください。
会社が動かない場合は法に則って辞める
労働基準法第5条やハラスメント防止法を伝えても会社側が動かない場合は、民法第627条で定められた労働者の退職の自由を利用して退職しましょう。
第六百二十七条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
民法第627条
仮に会社から引き止められたとしても会社には強制力はないので従う必要はありません。
なお、民法第627条より退職時は解約の申入れが必要になります。
口頭で伝えることもできますが、中には「言った・言わない」とうやむやにされる可能性もあるため、証拠として残した方が確実。そのため、退職届という形にして退職する旨を会社側に伝えましょう。
退職届を受け取ってもらえない場合
- 辞めると伝えても認めてくれない
- 退職届を受け取ってもらえない
という場合があれば
- 退職届を内容証明郵便で会社に送る
- メールで退職を伝えて履歴を保存しておく
などで伝えてください。証拠が残った上で退職の意思を伝えたことが証明出来ます。
どうしてもの場合は退職代行に相談する
- 自分から申請する自信がない
- 退職を自分で切り出すのは難しい
- 有給なんて有って無いような環境だから諦めている
という方であれば労働組合が運営する退職代行サービスに相談して辞めてしまいましょう。
確実に退職が成立します。
退職代行はお手持ちのスマホから電話やLINE(メールでも可)か相談が可能。希望があれば相談したその日から代行業者が動き出してくれます。
代行業者が動き出した瞬間からあなたは職場に行くことも連絡する必要も無くなるので、早ければ相談した即日から会社に行かなくても良い状態になれます。
具体的には、
- 確実に退職が成立する
- 法律に則って退職処理するので法的なトラブルがない
- 自分で対応する必要が無いので退職にまつわるストレスが無い
等があり、有給消化や未払いの交渉もしてくれますので退職代行費を支払う以上の利用メリットがあります。
そのため、あなたが
- 自分から退職を切り出すのが難しい
- でも、どうしても辞めたい
という状況であれば労働組合が運営する退職代行サービスに相談して辞めてしまいましょう。
まとめ
パワハラは違法行為ですので、我慢して泣き寝入りする必要はありません。
ご自身の被害状況を相談相手に伝えて問題解決を図っていきましょう。
もしそれでも対処が難しい場合は退職により職場環境を変え、ご自身の身の安全を守ることを第一にしてください。