正社員を2日で辞める際の条件および2日で退職する際の注意点を解説しています。
正社員を2日で辞めることが可能な条件
【前提】原則難しいが例外条件がある
2日ということはまだ試用期間に該当するかと思われます。ですが、試用期間であっても退職の条件は通常の労働者(社員)と同じになります。
この場合、社員の退職条件は原則として社内規定に従って退職する(辞める2ヶ月前に申告する、など)、もしくは民法第627条より2週間前に辞める旨を伝える、のいずれかが退職成立条件としての基本原則となります。
その為、それよりも早い2日で辞める際は以下の条件に該当している必要があります。
1.双方の合意による退職は可能
(やむを得ない事由による雇用の解除)
民法第628条
第六百二十八条 当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。
民法第628条より、やむを得ない事由が発生した場合は会社と労働者、双方の合意に基づき即日退職が成立します。
なお、やむを得ない事由としては怪我・病気、家族の介護、出産などによりどうしても勤務が出来ない場合が該当します。
2.労働条件の相違なら即日退職
(労働条件の明示)
労働基準法第15条
第十五条 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。
② 前項の規定によつて明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。
③ 前項の場合、就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から十四日以内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければならない。
労働基準法第十五条より、労働条件の相違は即時に契約解除(即日退職)が認められています。
その為、入社時に会社から受け取った雇用契約書と実際の現場での労働条件・仕事内容が異なる場合は即日退職してしまいましょう。
労働条件の相違について詳しくは以下の記事もご参考になさってください。
3.ハラスメントの被害を受けている場合
第五条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
労働契約法 | e-Gov法令検索
ハラスメントは労働者の心と体の安全に影響がある行為であり、労働契約法5条に基づき使用者である会社側が労働者の生命、身体などの安全を確保しつつ労働することができる環境を用意できていない、となります。
加えて、ハラスメントはハラスメント防止法(正式名称:改正労働施策総合推進法)違反にも該当します。
いずれの場合でも法律に反した状況であることに違いは無いので、会社側には「身の安全が保障されないため」と伝えてご自身の退職処理を進めましょう。
ハラスメント被害による退職について詳しくは以下の記事もご参考になさってください。
【補足】早期退職は会社側にもメリットがある
嫌々ながら合わない環境で我慢してもらうと職場環境にも影響するので、割り切って数日で辞めてもらった方が良いと考える職場もあります。
また、2日という短期間であれば保険の手続きをまだ行っていない可能性もあり、中途半端に続けられるよりも手続き上の面倒が少ないこともあります。
長引かせる方が後に困ることになる
入社すぐの退職はモラル面から「会社に認めてもらえないのでは」などと心配になるものですが、必ずしもそうではありません。会社によります。
むしろ、中途半端に続ければ続けるほどに辞めにくくなりますので「どうしても違う」と思ったのなら早々に辞めてしまった方が良いでしょう。
辞めた方が良い会社かどうか?の見極めについては以下の記事もご参考になさってください。
2日で辞めたいと思う人は少なくない
入社して2日目ですが既に辞めたいです。新卒です。同期が誰もいなく頼れる人や相談できる人が身近にいないです。私に教えてくれると言う方は私に対して挨拶をしても声が小さく、冷た い態度を取られていてとても憂鬱
Yahoo!知恵袋
です。もう仕事に行きたくないです。その他に教えてくれている方達はとても熱心に教えてくれていて辞めるのは申し訳ないとは思いますが、お昼など全て1人で、何しても新人だからなのかジロジロ見られ不快な思いをしています。親に言うと、え?2年くらいは働きなさいよと言われますが、正直このまま続くと思えません。既に辞めたい気持ちでいっぱいです。
入社2日目で辞めたいという事を上司に伝えました。
Yahoo!知恵袋
その上司はとても優しくお話を聞いて下さりましたができれば続けて欲しいと言われて終わりました。
しかし家に帰ったあと別の上司から電話があり 話を聞いてたら 嫌だからやーめたで辞めるの?や、将来の事もあると思うからもっと前向きに考えてみてよと言われました。
自分の事情を話したにも関わらず 嫌だからやーめた で辞めるの?と煽られた事があまりにもショックでした。
確かに嫌だから辞める事に変わりはないけどどストレートに言って来たのに前向きに考えてみてよなど言われたら尚更辞めたくなってしまって……
転職2日で辞めると決断する人も
転職、入社2日目にして、もう辞める決意を固めました。月収は25万円ですけど、仮に一週間で退社するりとしたら、給与はどのくらいもらえるのでしょうか?源泉徴収票は発行されるのでしょうか?
Yahoo!知恵袋
【大事】労働環境は退職に影響する
厚生労働省「令和3年雇用動向調査結果の概要」の「転職入職者が前職を辞めた理由」によると、前職を辞めた理由として「職場の人間関係が好ましくなかった」「仕事の内容に興味を持てなかった」「労働時間・休日等の労働条件が悪かった」という理由が一定の割合を示しています。
人間関係や労働環境が合わなければ強いストレスがかかるので、その影響で辞めたくなるのは自然なこと、ということです。
職場環境や人間関係が影響して気持ちが持たなくなりそうなときは以下の記事もご参考になさってください。
自分の身の安全を第一に考えた方が良い
辞めたい理由は個々によって異なりますが、いまの職場に居続けるのが難しいという状態にも拘わらず我慢して働き続けることだけは避けてください。
辞めたいのに辞められない状況は強いストレスがかかり、状況が続くとうつ病や適応障害など精神疾患にかかるリスクがあります。
会社は責任をとってくれない
うつや適応障害などの精神疾患にかかると仕事だけではなくその後のご自身の人生やプライベートに影響します。
病気の回復には時間がかかり、勤務が出来なくなるだけでなく、就職活動や社会復帰にも影響します。ですが、ご自身のプライベートを会社が守ってくれることはありません。
そのため、うつや適応障害になる可能性があるなら我慢していまの職場に留まることなく、退職を最優先に動いてください。社会的なダメージを負うリスクを背負ってまで今の会社で我慢する必要はありません。
一番大事なことはご自身の身の安全です。
うつになる前に退職したことが良い理由について詳しくは以下の記事もご参考になさってください。
入社して2日で辞める際の注意点
入社2日目の退職理由は一身上の都合で良い
原則として退職理由を用意する必要は法律では定められていません。そのため、退職理由を言わなくとも退職はできますし、言う場合は必ずしも本音で退職理由を伝える必要もありません。極論ですが退職理由が嘘であっても問題はありません。
ですが、一般的には退職理由を求められますので、どうしても退職理由を伝える必要がある場合は「一身上の都合」と伝えて辞めていただいて問題はありません。
退職届は提出する
第六百二十七条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
民法第627条
民法第627条より退職時は解約の申入れが必要になります。
口頭で伝えることもできますが、中には「言った・言わない」とうやむやにされる可能性もあるため、証拠として残した方が確実。そのため、退職届という形にして退職する旨を会社側に伝えましょう。
- 辞めると伝えても認めてくれない
- 退職届を受け取ってもらえない
という場合であれば
- 退職届を内容証明郵便で会社に送る
- メールで退職を伝えて履歴を保存しておく
- 録音しながら電話で伝える
などで伝えてください。
退職の意思を形に残しておけば証拠になるので、仮に会社からごねられたとしても証拠を元に法的に退職を通すことが出来ます。
入社2日目の退職を電話で伝えることも可能
一般マナーとしては直接退職を伝えるのが好ましいですが、直接伝える義務が法律で存在するわけでは無いので電話で退職を伝えたとしても問題はありません。
事情があって伝えることができない場合は電話での退職も選択肢に用意しておきましょう。
電話で退職を伝える際の注意点について詳しくは以下の記事もご参考になさってください。
バックレは避けた方が良い
バックレによる退職は認められていません。そのため、バックレによる即日退職を行うと「違法行為」となり労働者に対して損害賠償請求や懲戒解雇を与えられる危険があります。
中でも懲戒解雇になると転職活動時に相手先に伝えなければ経歴詐称になるので必ず伝える必要があります。つまり、懲戒解雇になるとその事実が必ず転職先にはバレますので転職活動においてご自身の印象が悪くなり不利益しかありません。
他にも嫌がらせや呼び戻しなどの可能性もあり、バックレは退職行為に対するリターンとリスクを加味した際にリスクが大きすぎて帳尻が合わない行為と言えます。そのため、法に基づかない即日退職行為だけは控えた方が良いです。辞めるなら法に則って確実に・安全に辞めましょう。
転職時は履歴書に経歴を残す・隠さない
原則として短期の退社であっても履歴書に経歴は残してください。
現在の職場で雇用保険の手続きがされている場合は短期であっても履歴書に経歴を残す必要があります。一方、現在の職場でまだ雇用保険の手続きがされていない場合は履歴書に経歴を書かなくともなんとかならなくもありません。
隠してもあとでほぼバレます
非常に抽象的な言い回しになりましたが、雇用保険の手続きがされていないとはいえ1日分であっても給与が支払われると勤務したことになります。そのため、今年中に再就職した場合、その会社の源泉徴収票が必要となります。
源泉徴収票という履歴が残る以上、履歴書に経歴を書かないと転職先で指摘されますので、その際に「正社員雇用ではなくバイトです」などとごまかして伝えることが出来ればなんとかならなくはありません。(あくまでバレにくい、というだけであり確実にバレないとは断言できません。)
ですが、いずれの場合にせよ絶対にバレないとは断言できない以上、あとで万が一のバレるリスクを負うよりもあらかじめ正直に伝えた方が良いでしょう。
給与を受け取る権利がある
労働基準法 第二十四条
第二十四条 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。
労働基準法第24条より賃金は全額支払わなければならないことが定められています。
そのため、給与は勤務日数分受け取ることができます。仮に「すぐに辞めた人に賃金は払えない」と言われたとしても従う必要はありません。
万が一支払われないことがあれば泣き寝入りすることなく会社に申請しておきましょう。
損害賠償請求は原則、気にする必要は無い
(賠償予定の禁止)
労働基準法第16条
第十六条 使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。
原則として損害賠償ありきの労働契約を結ぶことは法律で禁止されています。そのため、早期に退職したことに対して損害賠償を義務付けることは出来ません。
損害賠償は第三者が見ても辞めることで会社に多大な悪影響を残したときに検討されます。例えば退職時に多くの同僚を一緒に引き抜いて辞めた、退職時に会社のインサイダー情報を公開した、などが該当しますが、ただ退職するだけであれば会社に多大な悪影響を残したとは認められにくいので原則として退職時の損害賠償は気にする必要はありません。
備品を返却する
スマホ、PC、制服など会社から借りている備品はかならず返却してください。返却しないとあとでアレコレ言われる可能性があるので綺麗に辞めにくくなります。
直接渡しにいくか、それが難しい時は備品をまとめて会社に郵送すれば問題ありません。
私物を回収する
私物が残っていると会社側が誤って破棄してしまう可能性がありますので、辞める前に私物は持ち帰っておきましょう。
どうしても残ってしまう場合は着払いの郵送で送ってもらうよう会社側に伝えてください。
退職後の書類を確認する
- 雇用保険被保険者証
- 年金手帳
- 源泉徴収票
- 離職票
- 扶養控除等(異動)申告書
- 健康保険被扶養者(異動)届
- 給与振込先届
- 健康診断書
など。
退職者に対しては退職後に会社側から書類を送ってもらうのが一般的なので過度に心配する必要はありませんが、念のため退職時に必要な書類を会社から郵送してもらうよう会社側に伝えましょう。
退職後の失業手当の申請、次の会社に入社する際の手続きなどで必要になります。
どうしても辞めさせてくれない時の対策
【前提】強制労働は違法
(強制労働の禁止)
労働基準法 第5条
第五条 使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によつて、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。
労働基準法第5条より、使用者(会社側)は労働者の意思に反した労働を強制してはいけないと定められています。
そのため、うつ病や体調不良で勤務が難しいことを伝えた上で退職を伝えたにもかかわらず会社側が認めない場合は労働基準法第5条違反に該当するので無効。会社側の要請に従う必要はありません。
会社からの引き留めが酷い場合、強制労働に該当すします。最悪の場合は訴えることも可能ですので、引き止めがひどい時の辞め方について詳しくは以下の記事もご参考になさってください。
1.労働基準監督署に相談する
法に則って退職を申し出ても辞めさせてくれない場合、労働基準監督署に相談という手段もあります。
相談内容をもとに労働基準法違反と認められた場合、会社へ指導や是正勧告をしてもらうことが出来ます。
ただし、労働基準監督署はその立場からあくまで指導や是正勧告となり、個人のトラブル解決をかならず保証してくれるわけではありませんし、相談するにも用意する資料が多岐に渡ります。
そのため、
- 指導を受けたが一向に是正されない(退職が出来ない)
- 労働基準監督署に用意する資料を集めるのが大変
という方は以下の方法を検討してください。
2.どうしても辞められない時は退職代行に相談する
- 退職を自分から切りだせない
- 相談しても辞めさせてくれない
- でも、どうしても辞めたい
という状況であれば労働組合が運営する退職代行サービスを利用して辞めてしまいましょう。
確実に退職が成立します。
退職代行はお手持ちのスマホからLINEで申込み相談が可能。また、希望すれば即日から代行業者が動き出してくれます。
代行業者が動き出した瞬間からあなたは職場に行くことも連絡する必要も無くなるので、早ければ相談した即日から会社に行かなくても良い状態になれます。
具体的には、
- 確実に退職が成立する
- 法律に則って退職処理するのでトラブルがない
- 自分で対応する必要が無いので退職にまつわるストレスが無い
等があり、希望者には有給消化や未払いの交渉もしてくれますので退職代行費を支払う以上の利用メリットがあります。
そのため、もしあなたが
- どうしても辞めたいけど自分で辞めるのが難しい
- 相談しても辞めさせてくれない
- トラブル無くすぐにでも辞めたい
という状況であれば労働組合が運営する退職代行サービスに相談して辞めてしまいましょう。
まとめ
正社員を2日で退職することは気まずさが生まれるのが自然なこと。
ですが、本当に「合わない」と思ったら我慢して居続けても会社とご自身、双方にとってメリットは無く、お互いが不幸せになるだけです。
社風や人間関係などの相性はどうしても避けられません。
どうしてもの際は我慢することなく会社側に正直に伝えていただき、ご自身のキャリアを再考していきましょう。