「契約が残っているけどすぐにでも契約社員を辞めたい」という事情が出てきた方向けにすぐに辞めたい時の対応手順と退職時の注意点を解説します。
契約社員をすぐ辞めたい時のベストタイミング
契約社員がすぐに辞めたいと思った場合、問題無く辞められるタイミングは契約満了時になります。契約の満了が近くなると更新の有無を確認する面談が用意されるので、その際に退職希望を伝えましょう。
なお、退職の申し出を受けられる期間が過ぎてから更新の面談があったり、そもそも更新の面談が無い(相手が忘れている)場合もあるので、ご自身でも事前に契約更新時期と退職の申し出を伝えられる時期を事前に確認しておくと良いでしょう。
契約社員をスムーズに辞めたい時は少し早めに伝える
原則として契約更新前のタイミングで退職を伝えればルール上は問題ありませんが、会社側の立場を考えるとあなたが辞めた後の引き継ぎや人員補充を考えた時に少しでも余裕を持っておきたいもの。
そのため、退職の申し出は契約書で定められた退職を伝える時期よりも少し早めに伝えあげましょう。
なお、事情があって契約期間の途中で辞めることもあるかと思いますが、その際は「出来る限り繁忙期を避ける」「退職者が少ない時期を見て退職の相談する」ことを心がけてください。
契約期間を満たさずに辞める場合
【体験談例1】契約社員を1ヶ月で辞めることを希望する場合
私は24歳の独身女です。5年間正社員で働いていた会社を辞め、以前より興味があった事務職に転職し、時給制契約社員として働いて1か月になるのですがこの会社を今すぐ辞めたいと考えています。
理由は多々あります。
契約社員を1か月で辞めようと思っています。 -閲覧ありがとうございま- 転職 | 教えて!goo
・面接で説明された条件との違い。
・希望勤務地では無く通勤に自家用車で1時間半掛かるのに交通費が安い。・サービス残業がある。・直属の上司が何かといちゃもんをつけてくる。などです。
一番びっくりしたのは、契約書を書かされたのが入社して2週間後、名札を貰ったのは1週間後という遅さです。(私がまだですか?と催促してようやく。それまで以前働いていた男性の名前が書いてある名札を付けさせられていました。)
【体験談例2】入社して三日や一週間で辞めたいという場合
契約社員で入ってまだ3日なんですが、辞めたいです。
こんにちは!契約社員で入ってまだ3日なんですが、辞めたいです… – Yahoo!知恵袋
理由は第一希望の事務仕事が決まったからです。
希望の事務仕事の結果がなかなか出なく諦めており、早く稼がないとと思
い、他の契約社員を受けたら即日決まったので焦ってオッケーしてしまいました。
契約社員の試用期間中で一週間が経ちました。退職したいです。
契約社員の試用期間中で一週間が経ちました。退職したいです。 – 理由は他の企… – Yahoo!知恵袋
理由は他の企業で正社員として採用してもらえることになり、今すぐにでも退職して新しいところで働きたいと考えています。
契約社員として時給がかなり低いので、将来のことも考えて、正社員としてしっかり稼いで行きたいと思っています。
このように、勤務し始めてからすぐに「辞めたい」と思ったときは考え方と退職条件の理解が必要になります。
原則として契約社員は即日で辞めることは難しい
有期雇用契約を締結している場合、原則として期間外での即日退職は認められていません。唯一認められた即日退職条件は労働基準法第137条より、雇用契約を結んで雇用初日から1年以上の勤務実績がある場合に限ります。
第百三十七条 期間の定めのある労働契約(一定の事業の完了に必要な期間を定めるものを除き、その期間が一年を超えるものに限る。)を締結した労働者(第十四条第一項各号に規定する労働者を除く。)は、労働基準法の一部を改正する法律(平成十五年法律第百四号)附則第三条に規定する措置が講じられるまでの間、民法第六百二十八条の規定にかかわらず、当該労働契約の期間の初日から一年を経過した日以後においては、その使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができる。
労働基準法137条
そのため、あなたが今から一ヶ月以内に急に辞めたくなった場合でも勤務実績が1年以上であれば成立はします。
一方、勤務実績が1年未満の方が例外的に即日退職できる条件は以下となります。
2.民法第628条による双方の合意
(やむを得ない事由による雇用の解除)
民法第628条
第六百二十八条 当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。
働く期間の定めがある有期雇用契約であっても、民法628条より「やむを得ない事由」がある場合は例外的に即日の雇用解除が可能になります。
例えばやむを得ない事由とは以下が該当します。
【やむを得ない事由の例】
- 契約外の仕事をさせられる
- 使用者が労働者の生命・身体に危険を及ぼす労働を命じた
- 派遣先の上司からパワハラやモラハラを受けている
- 賃金不払いなどの重要な債務不履行が発生した
- 労働者自身が負傷・疾病・心身の障害などにより就業不能に陥った
- 親や家族の介護が必要になった
- 家族の転勤などにより急な引っ越しが決まった
- 業務内容が法令に違反している
- 両親や子供の病気、または介護など
など。
やむを得ない事由が勤務先に認められることで、本人と会社が双方の合意に至れば即日退職が成立します。
3.労働条件の相違
(労働条件の明示)
労働基準法第15条
第十五条 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。
② 前項の規定によつて明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。
③ 前項の場合、就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から十四日以内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければならない。
労働基準法第十五条より、労働条件の相違は即時に契約解除(即日退職)が認められています。
事前に入社時に会社から用意された雇用契約書の内容と実際の労働条件・仕事内容が異なるあれば即日退職が成立します。
労働条件の相違と退職について詳しくは以下の記事もご参考になさってください。
4.ハラスメント
第五条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
労働契約法 | e-Gov法令検索
ハラスメントは労働者の心と体の安全に影響がある行為であり、労働契約法5条で定められた使用者である会社側が労働者の生命、身体などの安全を確保しつつ労働することができる環境を用意できていないことに該当します。よって、違法行為となります。
加えて、ハラスメントはハラスメント防止法(正式名称:改正労働施策総合推進法)違反にも該当します。
いずれの場合でも法律に反した状況であることに違いは無いので、会社側には「身の安全が保障されないため」と伝えて退職処理を進めましょう。
ハラスメント被害による退職について詳しくは以下の記事もご参考になさってください。
5.どうしてもの場合は退職代行に相談する
- 契約期間途中だから退職を自分で切り出すのは気が引ける
- でもすぐにでも辞めたい
という方であれば労働組合が運営する退職代行サービスに相談して辞めてしまいましょう。
確実に退職が成立します。
退職代行はお手持ちのスマホから電話やLINE(メールでも可)か相談が可能。希望があれば相談したその日から代行業者が動き出してくれます。
代行業者が動き出した瞬間からあなたは職場に行くことも連絡する必要も無くなるので、早ければ相談した即日から会社に行かなくても良い状態になれます。
具体的には、
- 確実に退職が成立する
- 法律に則って退職処理するので法的なトラブルがない
- 自分で対応する必要が無いので退職にまつわるストレスが無い
などがあり、上記で解説した即日退職の条件を元にあなたに代わって代行業者が伝え、退職処理を進めてくれるのでどうしても自分で対処できない状況にいる方であれば退職代行費を支払ってでも利用するメリットがあります。
そのため、もしあなたが
- 自分から退職を切り出すのが難しい
- でも、すぐにでも辞めたい!
という方であれば労働組合が運営する退職代行サービスに相談して辞めてしまいましょう。
退職時の注意点
【注意】バックレや無断欠勤による即日退職は違法なので控える
一部の条件を除き原則として即日退職は認められていませんので、職場に行くのが嫌だからとバックレや無断欠勤による即日退職を行うと「違法行為」となり労働者であるあなたに対して損害賠償請求や懲戒処分が与えられる危険があります。
バックレは退職行為に対するリターンとリスクを加味した際にリスクが大きすぎて帳尻が合わない行為と言えますので、法に基づかない即日退職行為だけは控えた方が良いです。
辞めるなら法に則って確実に・安全に辞めましょう。
補足
なお、退職代行を利用した場合は代行業者があなたに代わって「退職まで当事者は欠勤いたします。」といった内容を伝えるため無断欠勤には該当しませんので心配する必要はありません。
損害賠償請求は原則、気にする必要は無い
(賠償予定の禁止)
労働基準法第16条
第十六条 使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。
原則として損害賠償ありきの労働契約を結ぶことは法律で禁止されています。そのため、退職したことに対して損害賠償を義務付けることは出来ません。
損害賠償は第三者が見ても辞めることで会社に多大な悪影響を残したときに検討されます。
例えば退職時に多くの同僚を一緒に引き抜いて辞めた、退職時に会社のインサイダー情報を公開した、などが該当しますが、ただ退職するだけであれば会社に多大な悪影響を残したとは認められにくいので原則として退職時の損害賠償は気にする必要はありません。
引き継ぎは義務ではない
引き継ぎは法律で定められた規則や義務ではなく、お世話になった会社に対する気持ちとして行う業務です。
よって、引き継ぎを拒否することもできますし引き継ぎをしないことで罰則が発生することもありません。
備品を返却する
スマホ、PC、制服など会社から借りている備品はかならず返却してください。返却しないとあとでアレコレ言われる可能性があるので綺麗に辞めにくくなります。
直接渡しにいくか、それが難しい時は備品をまとめて会社に郵送すれば問題ありません。
私物を回収しておく
私物が残っていると残っていると会社側が誤って破棄してしまう可能性がありますので、辞める前に会社に残した私物は持ち帰った方が好ましいです。
どうしても残ってしまった場合は後日連絡して郵送してもらうか、退職代行を利用している場合は退職代行業者を通じて会社側に私物の郵送(着払いの方が良いでしょう)を勤務先に伝えてください。
私物の扱いに対して大事なことは
- どの様な私物があるのか?
- 会社に処分してもらっても良いものは何か?
- 自分に返却して欲しいものは何か?
を具体的に区分けすることです。区分けした内容をご自身で会社に伝える、もしくは代行業者に伝えて代行業者経由で会社へ伝えてもらいましょう。
自分だけの文具、マグカップ、社内で使うブランケットやカーディガン類、スリッパ、リップクリームなど小物類、この辺りは会社で利用される私物で多いものといえます。
まとめ
契約があるからすぐに辞めたいと思っても実際は難しいのでは?と考えてしまいますが、実際にはすぐに辞めることが出来る条件はいくつか用意されています。
どうしても今の勤務先に我慢できない場合はお伝えしてきた条件と照らし合わせながら退職処理を進めていきましょう。
その際、どうしてもご自身での対応が難しい場合は労働組合が運営する退職代行サービスに相談して退職の手続きをしてもらいましょう。