会計事務所をすぐ辞める際の注意点およびトラブルを避けた退職の仕方について解説します。
会計事務所をすぐ辞める際の注意点
バックレは避ける
バックレや無断欠勤による退職は認められておりません。
その為、バックレを行うと「違法行為」となり労働者に対して損害賠償請求や懲戒解雇を与えられる危険があります。
中でも懲戒解雇になると以下の問題が起こります。
- 本来貰えるはずだった退職金の一部または全部不支給
- 転職時にマイナスな印象を与えることになる
また、懲戒解雇になると就職活動時に相手先に伝えなければ経歴詐称になるので必ず伝える必要があります。
つまり、懲戒解雇になるとその事実が必ず転職先にはバレますので就職活動においてご自身の印象が悪くなり不利益しかありません。
その為、辞める際はリスクが大きいバックレではなく、法に則って確実に・安全に辞めましょう。
引き継ぎをする
会社と決めた退職日までの中で有給消化などの期間を調整し、退職日までに間に合うよう引き継ぎを行います。もし間に合わない場合は後任の方にために引き継ぎ資料(引き継ぎマニュアル)を用意しておきましょう。
なお、引き継ぎ資料は自分だけしかわからない言葉でまとめることなく、誰が見ても理解できる言葉でまとめてください。
【補足】引き継ぎは義務ではないし、拒否もできる
引き継ぎは法律で定められた規則や義務ではなく、お世話になった会社に対する気持ちとして行う業務です。
よって、引き継ぎを拒否することもできますし引き継ぎをしないことで罰則が発生することもありません。
円満退社や一般的なマナーとしては引き継ぎは行った方が良いですが、事情があってどうしても対応が難しい時は引き継ぎ未対応でも退職は成立します。
退職時の引き継ぎについて詳しくは以下の記事もご参考になさってください。
退職理由は一身上の都合で良い
原則として法的には退職理由を用意する必要はありません。そのため、言わなくとも退職はできますし、言う場合は必ずしも本音で退職理由を伝える必要もありません。極論ですが退職理由が嘘であっても問題はありません。
どうしても退職理由を伝える必要がある場合は「一身上の都合」でも構いません。
退職時に会社から必要な書類を受け取る
- 雇用保険被保険者証
- 年金手帳
- 源泉徴収票
- 離職票
- 扶養控除等(異動)申告書
- 健康保険被扶養者(異動)届
- 給与振込先届
- 健康診断書
など、退職時に必要な書類を会社から郵送してもらうように伝えましょう。
退職後の失業手当の申請、次の会社に入社する際の手続きなどで必要になります。
基本的には退職後にご自宅に郵送されてきますが、しばらく待っても届かない場合は会社に確認の連絡を入れてください。
備品は返却する
スマホ、PC、制服、社章など会社から借りているものは必ず返却しましょう。
まとめて直接返却しても良いですし、それが難しければまとめたものを郵送で会社に送っても問題ありません。
私物を回収しておく
私物が残っていると会社側が誤って破棄してしまう可能性がありますので、辞める前に私物は持ち帰っておきましょう。
どうしても残ってしまう場合は着払いの郵送で送ってもらうよう会社側に伝えてください。
会計事務所を辞めたがっている人は少なくない
ついていけないことで悩む人も
今の職場を辞職しようかどうか悩んでいます。
26歳で会計事務所勤務です。働き出して1年半くらいになります。
今年の確定申告後から体調を崩す事が増えて(今週も風邪を引いて休んでしま
った事もありました)、ミスが多くなり(自分の不注意もあるのですが、先輩から仕事を丸投げされてる事もあります。説明がすごく早く「しらん。自分で考えろ」と話を聞いてもらえず、そのくせ早く帰れるとさっさと帰ってパチンコ行くような人です。税理士になる気は無さそうです)事務所自体も上司に物事聞きづらい雰囲気があります。すごく事務所に迷惑がかかって、自分がいても仕方ないんじゃないかと思っています。
自分が悪いのも重々承知しているのですが事務所の方針についていけない所もあります。(残業手当なし、所長が事務所出るまで帰れない、3年間は営業無しで事務所業務のみ等)
今の職場を辞職しようかどうか悩んでいます。26歳で会計事務所勤務です。働き… – Yahoo!知恵袋
今月から会計事務所に勤めていますが仕事についていけず困っています。日商簿記2級は持っており、経理事務経験は1年で会計事務所に勤めるのは今回が初めてです。
今月から会計事務所に勤めていますが仕事についていけず困っています… – Yahoo!知恵袋
試算表作成の基本的な流れとその他必要な知識、おすすめの本があれば教えてください。
人が辞めていくことで更に忙しくなり辞めたくなる人も
会計事務所に勤務している24歳です。
会計事務所に勤務している24歳です。 – 会計事務所に入社して9ヶ月目ですが… – Yahoo!知恵袋
会計事務所に入社して9ヶ月目ですが、人がどんどん辞めていくことが原因で人手不足もあり、法人決算も3件持っています。これからどんどん増えていくと言われました。また、休日出勤は当たり前・残業も21時や22時、月末は0時を超える時もあります。それなのに残業代はなし。毎日毎日疲労感だけが溜まっていきます。ですが、他の先輩方は、「休日出勤してやる人がえらい」「遅くまで残ってやった方が自分のためになる」など精神論みたいなことばかり言います。また、休日出勤する時は絶対にお昼ご飯は一緒にどこかで食べなきゃいけないという謎のルールもあります。小さい事務所だということもあり、仲良くやらなきゃ陰でめちゃくちゃ悪口を言われます。
こういう職場環境は案外どこにでもあるものだと自分を納得させていますが、やはり辞めたくなる気持ちもあります。私が自分に甘いだけでしょうか?
個々人によって辞めたい理由は異なりますが、主に職場の人間関係や忙しすぎる職場環境が影響して退職したくなる方が多いと言えます。
会計事務所あるあるとして
- 残業が多い
- 給料がやすい
- 社内の人間関係が難しい
- 先輩社員から仕事を教えてもらえない
などは会計事務所あるあるとして挙げられることが多い項目と言えます。
辞める理由
あるあるの影響で、退職する方も少なくありません。なお、辞める際の退職理由については
- 忙しすぎる
- 残業がひどい
- 社内の雰囲気が合わない/考え方が古臭すぎる
- 労働条件がひどい/聞いていた話と違った
- ハラスメントがひどい
- キャリアアップが見込めない
- 税理士試験の勉強時間が確保できない
などが挙げられることが多いです。
このように、社内環境に不満を持って退職してしまう人は少なくありません。
【大事】労働環境は退職に影響する
厚生労働省「令和3年雇用動向調査結果の概要」の「転職入職者が前職を辞めた理由」によると、前職を辞めた理由として「職場の人間関係が好ましくなかった」「仕事の内容に興味を持てなかった」「労働時間・休日等の労働条件が悪かった」という理由が一定の割合を示しています。
人間関係や労働環境がハードだと辞めたくなるのは自然なこと、ということです。
職場環境や人間関係が影響して気持ちが持たなくなりそうなときは以下の記事もご参考になさってください。
会計事務所を退職する手順
【基本】就業規則に従って退職手続きを行う
就業規則を元に退職の申し出をしてください。
辞める2ヶ月前に伝える、3ヶ月前に伝える、など会社特有の就業規則があるかと思いますので、原則は就業規則に従って退職手続きを進めましょう。なお、退職時は「退職願」ではなく『退職届』を会社側に渡してください。
退職願と退職届の違い
退職願は辞表の意思表明をあらわすもので、雇用者側の受理・承諾を求めます。雇用者との合意が必要となるのでこれを雇用者に受理・承諾してもらわなければ退職の効果は生じません。
退職届は労働契約の一方的な解約の意思、辞職の意思表示を表すもので、出してしまうと取り下げはできません。退職届の場合、雇用者に伝えたら雇用者の受理・承諾がなくとも、2週間の経過により、退職の効果が生じます。
退職願はそれ自身に法的な効力が生じないので退職願いが受理されないこと自体には違法性がありません。よって、退職を成立させたいときは「退職届」を会社側に提出してください。退職届であれば退職の意思を示したことになるので退職が成立します。
正社員の場合は2週間で辞めることも可能
第六百二十七条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
民法第627条
正社員は期間の定めが無い雇用形態となり、法的には民法第627条が原則となります。その為、民法第627条より退職の意思(=退職届の提出)を示せば2週間で退職することも可能です。
就業規則で「辞める3ヶ月前に~、」などと記載があっても法律が優先されますので退職の意思を伝えれば必ず2週間で退職が成立します。
- どうしても今の職場に居続けるのが難しい
- すぐにでも辞めたい
というご状況であれば法に則って「退職届を提出する」という具体的な退職の意思を示して2週間で辞めてしまいましょう。
退職届を受け取ってもらえない場合
事情があり退職届を直接渡すことが出来ない、もしくは相談したのに受け取ってもらえない場合は配達記録付き内容証明郵便で退職届を郵送してください。
会社側に退職届が届けられたことが証明できるため退職の意思を伝えた証拠になります。
また他にも
- 退職の旨を記載したメールを送る
- 録音しながら口頭で伝える
等の手段を用いて退職の意思(解約の申入れ)を伝えるのも有効です。
口頭で伝えることもできますが、中には「言った・言わない」とうやむやにされる可能性もあるため、退職届をはじめとして何かしらの証拠を残して伝えた方が確実です。
なお、会社側が退職拒否をしてきた場合「在職強要」となり違法行為に該当しますので会社の要請を受諾する必要はありません。詳しくは以下の記事もご参考になさってください。
派遣・契約社員の場合
派遣や契約社員などは基本的に有期雇用契約(期間が定められた雇用形態)になりますが、有期雇用契約は契約期間外での退職は原則認められません。
その為、契約更新前に契約を更新しない旨を伝えて契約満了を持って退職となります。
勤務期間が1年以上経過している場合は別
第百三十七条 期間の定めのある労働契約(一定の事業の完了に必要な期間を定めるものを除き、その期間が一年を超えるものに限る。)を締結した労働者(第十四条第一項各号に規定する労働者を除く。)は、労働基準法の一部を改正する法律(平成十五年法律第百四号)附則第三条に規定する措置が講じられるまでの間、民法第六百二十八条の規定にかかわらず、当該労働契約の期間の初日から一年を経過した日以後においては、その使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができる。
労働基準法137条
例外的に派遣会社と有期雇用派遣として契約をしている状況であっても、労働基準法137条より勤務期間が1年以上経過している場合に限り労働者側の希望するタイミングでいつでも退職ができるため即時解約(即日退職)が成立します。
つまり、1年を経過していれば「派遣を今日で辞めます」と伝えても法律上は成立します。
ただし、あくまでもこの規定は契約期間が1年を越える場合を想定したものであり、3ヶ月、半年という1年未満の契約を繰り返して累計1年という場合は適用外である点にご注意ください。
簡単に辞めさせてくれない場合
退職届が受理されないことは違法
(強制労働の禁止)
労働基準法 第5条
第五条 使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によつて、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。
労働基準法第5条より使用者(会社側)は労働者の意思に反した労働を強制してはいけないと定められています。
そのため、退職届を渡したにも拘わらず受け取らない、辞めさせることはできないと言われることは労働者の意思に反した不当な拘束に該当するため違法行為となります。よって、労働基準法第5条違反に該当するので会社の要請に従う必要はありません。
辞めさせてくれない強制労働問題について詳しくは以下の記事もご参考になさってください。
違法性を指摘して辞める
会社が違法な対応をしている場合、違法性を指摘して会社から即離れてしまいましょう。
労働条件に相違がある場合
(労働条件の明示)
労働基準法第15条
第十五条 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。
② 前項の規定によつて明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。
③ 前項の場合、就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から十四日以内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければならない。
労働基準法第15条より、労働条件の相違は即時に契約解除(即日退職)が認められています。
入社時に会社からもらった労働条件通知書と異なる労働条件・仕事内容であればその旨を会社に伝えて即日退職してしまいましょう。
労働条件の相違と退職について詳しくは以下の記事もご参考になさってください。
ハラスメント被害を受けている場合
第五条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
労働契約法 | e-Gov法令検索
ハラスメントは労働者の心と体の安全に影響がある行為であり、ハラスメントが起こる職場ということは労働契約法5条で定められた使用者である会社側が労働者の生命、身体などの安全を確保しつつ労働することができる環境を用意できていない職場、となります。つまり、労働契約法5条に反している状況(違法な状況)ということです。
加えて、ハラスメントはハラスメント防止法(正式名称:改正労働施策総合推進法)違反にも該当します。
いずれの場合でも法律に反した状況であることに違いは無いので、会社側には「身の安全が保障されないため」と伝えてご自身の退職処理を進めましょう。
ハラスメント被害による退職について詳しくは以下の記事もご参考になさってください。
どうしてもの際は退職代行に相談する
- 退職を自分で切り出すのは難しい
- 退職相談をしたのに辞めさせてくれない
- でも、どうしても辞めたい
という方であれば労働組合が運営する退職代行サービスに相談して辞めてしまいましょう。
確実に退職が成立します。
退職代行はお手持ちのスマホから電話やLINE(メールでも可)か相談が可能。希望があれば相談したその日から代行業者が動き出してくれます。
代行業者が動き出した瞬間からあなたは職場に行くことも連絡する必要も無くなるので、早ければ相談した即日から会社に行かなくても良い状態になれます。
具体的には、
- 確実に退職が成立する
- 法律に則って退職処理するので法的なトラブルがない
- 自分で対応する必要が無いので退職にまつわるストレスが無い
等があり、希望者には有給消化や未払いの交渉もしてくれますので退職代行費を支払う以上の利用メリットがあります。
そのため、あなたが
- 退職を自分で切り出すのは難しい
- 退職相談をしたのに辞めさせてくれない
- でも、どうしても辞めたい
という状況であれば労働組合が運営する退職代行サービスに相談して辞めてしまいましょう。
まとめ
実際の会計事務所での勤務は心身共にハードになることも珍しくありません。その為、仕事に合う合わないは確実に存在します。
無理に辞める必要はありませんが、「どうしても耐えられない」という時は我慢せずに部署の移動や退職・転職も視野に入れ、ご自身にとって活動しやすいキャリアを検討していきましょう。